ユキ・シオン

那月

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ユキとシオン

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「未来を失ったって、クビと免許のはく奪と追放のことか?それなら別に問題ないから気にすることはないよ。それよりも俺は、シオンに知ってほしいことがあるんだ」


 先生が1歩下がって目を閉じる。静かに息を吸い、吐く。すると空気がざわめきだした。


 ここは窓もドアも閉めてある密室なのに、どこからか微弱な風が吹いてきて俺の白い髪を弄ぶ。先生のボサボサの、オレンジがかった茶色の髪が、さらにボサボサに。


 先生が身にまとう空気が流れを成す。やがて先生がゆっくりと目を開いた。金色の、瞳孔が縦に細長い綺麗な瞳。


 顔の横にあったはずの耳は頭の上に、後ろからは獣の尻尾がユラユラゆらめいている。


「俺も、擬人化種なんだよ。君もそうなんでしょ、店長さん?難しいけど、俺が何の擬人化種かわかるかなぁ?」


「そんな、先生も擬人化種!?信じらんねぇ。この街に多すぎるだろ。ライオン?けど、尻尾はトラ柄……」


「ライガー……でも、そんなまさか!普通のライガーだってほとんど生まれてこないのに、擬人化種のライガーがいるだなんて」


「母親は普通の野生のトラ、父親は擬人化種のライオン。姉はライオンの擬人化種。父が人間の女性と結婚していたんだけど、離婚してしまって。猫科一家、だね」


 猫科一家に1人、純粋な人間が混じってるぜ。先生と先生のお姉さんとは父親が同じってことか。


 先生の父親、今は妻を愛しすぎてサバンナで野生に帰ってしまっているんだとか。擬人化種は最終的に人間の世界で生きるか、動物の世界で生きるかを選択する。


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