ユキ・シオン

那月

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ユキとシオン

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 俺は慌てて、先生は非常に名残惜しそうに離れると「「すみません」」と同時に謝る。


 それが何だかおかしくて、つい笑っちまった。つられて先生も「プッ、クックックッ」と笑い、怒れるジャガーに角がプラス。


 けどすぐに、店長もつられて「もー、やめてよねぇー」って笑う。角が生えたジャガーが霧散。


 それから先生は耳と尻尾を消して、裏から店を出た。去り際に店長に深々と頭を下げたら「次の勤務で今日の分も稼いでもらうからいいわよ」と、ニッコリ。


 が、頑張ります。頑張るからさぁ、栄養ドリンク奢ってください!この前のねぎらい、結局全部だめになったんだったんだからな。


 なんて言ったら殺されるか。むしろ「いつもユキちゃんのピンチを救ってあげてる店長様にねぎらいの品はないのかしら?」って言われそうだな。


 それにしても。白猫と、ジャガーと、ライガーか。すげぇな。絶滅危惧種よりも少ないはずの擬人化種がこんなにも集まってさ。


 こういうのを幸せって言うのか。先生が俺を見つけ出してくれた。手を握って、隣を歩いてくれる。


 先生は徒歩、俺は自転車を片手で押しながら。でも右腕のケガが痛くてすぐに立ち止まると先生も俺の右腕に目を向ける。


「それ、直也にやられたの?」


「そんな感じ。俺、あいつを殺すつもりで包丁を持って行って。あいつの中にある優しさを知ってるからさ。これ以上あいつが傷つけるのも傷つくのも終わるようにしたかった。でも、できなかった。それどころか俺が擬人化種だってバレて――」


 先生が自転車を押してくれる。俺みたいに器用じゃねぇから両手でハンドルを握るしかできなくて、温もりを失った俺の左手は寂しそうにブラブラ。



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