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待ち望んでいた
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しおりを挟む「もー、いきなり頭を叩くなんてぇ…………酷いですね。最初は子供にしようと思ったんですが、1人で入るとなると犯罪の匂いがプンプンしてしまいますので、やむなくです」
「だからって女ってなぁ。それはそれで別の噂が立つだろう。シオン、突然のことに驚いただろうけどこの姿が本物だ」
頭を押さえながらゆっくり顔を上げる彼女の姿がかすんでいき、じんわりと別の姿に変わる。声も、女の声から男の声に変わった。
思わず1歩下がって、目を擦ると目の前には俺と同じくらいの身長のスーツの男。黒縁眼鏡をかけた、腕に黒いコートをかけた男。
「驚かせてすみません。立場上、プライベートで外出する時はいつも別人に変化しているんです」
「ふぇ、へ、変化?なら人間じゃねぇってこと、ですか?俺のこの姿を見ても普通だし。俺達みたいに擬人化種……?」
男がニコッと微笑んだ。温厚で優しそうな人だな。けど明るい緑色の目はすぐに俺の後ろ、テーブルへと向けられた。
「招いてもらった私から申し出るのもなんですが。自己紹介は食べながらでもいいですか?恥ずかしながら朝から何も食べていなくて……おぉ、あれはっ!!」
「今回は何かと世話になったし、カオルさんの大好物をたっくさんご用意させていただきました」
「さすがはネコヤン君。や、それもこのかぐわしい香りは稲森のいなり寿司ではないか!はぁぁ、ふむ、まことに良き友を持ったものだ」
早かった。テーブルに用意されている3つの大きな茶色の山が全部いなり寿司だとわかると、その瞬間彼の姿はテーブルの前。
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