ユキ・シオン

那月

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ハッピーバースデー

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「シオン。頼む、欲しいものを言ってくれないか?トイレで散々考え込んだけど、何も思いつかなかった」


 そう言って起こされた、第一声がこれかよ。俺よりも早く起きて、トイレにこもっていたらしい悠一がベッドに飛び込んできてさ、まだ寝ている俺に泣きついてきたんだ。


 ちゃんとトイレから出る時に手ぇ洗ったか?汚ぇ手で触るんじゃねぇぞ。


 何も思いつかなかったって。何か、たとえば酒とかは思いついただろうが。20歳の誕生日なんだし?


 昨日、ドクトルがいる研究所で検診を受けた時にポロッと誕生日だって言ってみたけどさ。俺はそんなに気にしてなかったな。


 もちろん、悠一が誕生日なら俺は慌てふためいて何かプレゼントを探しに街を爆走していただろうが。


 腕時計とかネクタイとか、悠一に似合う格好いい大人のプレゼント。悠一がもらって嬉しいもんなんて、そういえば知らねぇなぁ。…………俺?


「あぁ?今日、休みにしてくれたんだろ?じゃあもうちょっと、昼くらいまで一緒に寝る。それでいい」


 ベッドの中で後ろから抱き着いて、俺の背中におでこをグリグリ押し付けてくる悠一が、ウザい。嘘。可愛い。超可愛い。ニヤニヤが我慢できなくて撫でまわしたくなる。笑えるな。


 プレゼントに、猫だからってマタタビなんか用意したらブン殴ってやろうと思ってた。逆に悠一に使ってやるさ。そうなったら襲われるのは覚悟の上だぜ?


 今何時だよ?8時?なんだ、昼までまだまだあるじゃねぇか。と、寝返りを打って悠一の方を向く。


 悠一の胸に頬を当て、抱きついて目を閉じる。ビクッ!と体を震わせたようだが、こんなんでいちいち息を飲むのがまた可愛い。


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