ユキ・シオン

那月

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 男のこめかみを汗が伝い落ちる。が、男は冷静だ。冷たく燃える目だけを千川原に向け、脅しを気にすることなく身を引き足を振り上げようとする。


「笑也っ!!今すぐやめて戻ってこい。いうことを聞かねぇと………………あんたにもらったこの本、捨てて燃やしてやるからな」


「それは嫌だっ!絶対だめっ!!」


 男、ピタッと止まって叫ぶとダッシュ。起き上がって掲げた本をシオンの手から奪い取り、大切そうに自分のカバンに押し込んだ。


 俺、全然ついて行けないんだけど。血相を変えてやってきた男と千川原の方を向くシオンの、背中が見えた。


 俺が今まで見たことがないシオンの服。じゃなくて、その背中が真っ赤に染まっている。縦に大きく斬りつけられ傷口がパックリ。


 ドクンッ!一瞬で、血液が沸騰した。「シオンっ!」バッ!と抱きしめ、どうしようどうしようと焦りと恐怖が俺の心を締め付ける。


 やっぱり千川原はシオンを殺そうとしたのか。俺の恋人であるシオンが邪魔だから、排除して自分だけを見てもらおうと。


「ねぼすけの悠一、起きるのが遅ぇよ。背中、そんなに酷いか?けど今は気にすんな。俺、痛みを感じてねぇから大丈夫。それよか、すっげぇ力が湧いてくる」


 嘘だろ?こんなにザックリ斬られて、こんなにも大量に血が流れているのに痛くないなんて。


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