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光
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しおりを挟む千川原が、青ざめた。悲鳴も、苦痛に呻く声も聞こえないから。それどころかシオンは、顔色一つ変えることなく千川原を見つめていた。
「それで終わりかよ?」
「なっ!?な、なんで……!どうして平気なんだ!?やせ我慢じゃない、本当に何も感じないのか!?わからない。意味がわからない。この…………バケモノッ!!」
その表情は、哀れみ。シオンは千川原を、悲しそうに見つめていたんだ。
その表情が、動じない態度が、千川原を追い詰める。バッ!とシオンにつかまれている右腕を振り払い、メスの刃はシオンの首へ。
さすがにこれは避けた。上半身を反らし避けたが、シオンの綺麗な顔に赤い線が走った。
頬に赤い線を描いたメスはすかさず、握っている手首をシオンに強く叩かれて飛び出し。真下に落ちると同時にシオンの足が壁へと蹴り飛ばす。
俺が知っているシオンじゃない。逞しいとか、そういうんじゃなく。全てが有り得なさ過ぎて、恐怖さえ感じる。
背中からは絶え間なく血が流れて足元に血だまりができているほど。飛んでくるメスを握って止めた右手だってポタポタ血が滴り落ちているし、腕は硫酸がかかって溶け目を背けたくなるほど酷い。
なのに、平然としている。千川原でなくても、これはシオンを「バケモノ」と言いたくなる。
俺と離れている間に何かあったのか?いやだが、あの香さんでさえ腰を抜かしそうな状況。なぁシオン、一体どうしちまったんだよ?
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