ユキ・シオン

那月

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ずっと見ていた

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 俺は意識がなかったから、ここがどこに繋がっているのかを知らない。街から遠く離れた廃墟か何かかと思ったのにまさかの研究所か。
 

 しかも、トイレの個室?体がそこそこ大きな俺にとってはかなり窮屈だった通路を抜けて、肩が引っかかったのでシオンと人間の男に引っ張ってもらって。

 
 トイレの個室に4人は狭いなと、外に出た時だった。

 
「シオンッ!!?」
 

 それはもはや悲鳴。突然、シオンがゴポッ!と大量の血を吐いた。激しく咳き込んで、そのたびに真っ赤な血が口から飛び出す。
 

 褐色の肌はさらに濃い色に深みが増して、自分の体を抱きしめるシオンはガタガタと震える。しかし、異変はそれだけではない。
 

「はぁっ、はぁっ、ゴホッゴホッゴホッゴホッ!う、ぷ……っ、はぁっ……苦しい、体が、焼ける。熱いっ……はっ、はぁっ、何だよ、これ……悠一…………たすけ、て……っ」

 
 口元を赤く染め、金色の光を宿す目にいっぱいの涙を溜めたシオン。とても苦しそうに荒い呼吸を繰り返しながら、助けを求め俺に手を伸ばす。

 
 その指先、爪の先がほんの少し俺に触れた瞬間。俺は、背後の壁に背中を打ちつけた。すぐ近くにいた人間の男を巻き込んで、同時にうめき声を上げる。

 
 一体何が起こった?触れた瞬間、弾かれるみたいに俺の体が吹っ飛んだ。なぜ?俺も、シオン本人にもわからない。

 
 しかも直後にバンッ!とドアが開いて、ドクトルが俺と目を回している人間の男を個室の外へと引っ張った。

 
「動くな。悪いけど子猫ちゃん、今のお前さんは尋常じゃないくらいにおかしい。ただのイエネコにはないはずの圧倒的な力が、見えるくらいにお前さんの体から漏れ出ているんだよ、たぶん。辛いだろうけど、お狐様が来るまで大人しくしてて――」


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