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白からの黒からの赤
4P
しおりを挟む抱きしめようと持ち上げられた両腕は、けれどちょっと上げ下げしてから俺に触れることなく下ろされた。我慢、したんだな。俺が弱ってるから。抱きしめ潰してしまいそうだからって。
俺のこととなると抑えが効かなくなるダメなオッサンのくせに。よく頑張ったなって、俺から手を伸ばして抱きしめてやる。
けど、悠一が「ぐっ」と呻いた。悠一の温かい手は俺の背中を軽く2、3回撫でるだけ。すぐに俺の肩を押して、離れちまった。
「体から薬が抜けきるにはあと少し時間がかかりそうだが、俺はもう元気だ。お前、あれからそんなに時間が経ってないと思ってるだろ?」
まただ。俺の肩をつかんだまま見つめる悠一は、不安そう。黄色い瞳の中にいる俺の姿が、黒髪に金の目で褐色の肌のままだから。
それだけじゃない。悠一は言った。俺はあれから「1週間、眠りっぱなしだったんだ」と。
自覚はない。だって、体の不調はだるいだけだし。腕も足もちゃんと動く。眠っている俺の手足を、悠一が毎日マッサージしてくれていたからだって。
それがなかったら俺の体は、筋肉がカチコチに固まって目を覚ました時に上手く動かせなくなっていたって。
「先に言うが、千川原は香さんの監視下に置かれるようになった。香さんに24時間365日、どこで何をしているのかを感知される。少しでも不穏な動きを見せれば、首輪から麻酔を打ち意識を奪う」
今、ソランさんはこの街のどこかにある特殊な独房で監禁中。明日には釈放され、元の仕事に戻る。
あんなことがあっても、ソランさんは大事な研究員であり被験者。ドクトルの補佐を他の人にやってもらうことはできないらしく、香さんが渋々決断したんだそうだ。
すっかり大人しくなった、けれど希望を失い生きる人形と化したソランさん。彼の首には今、香さんが作ったのだという特殊な首輪が嵌まっている。
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