ユキ・シオン

那月

文字の大きさ
492 / 756
白からの黒からの赤

4P

しおりを挟む

 抱きしめようと持ち上げられた両腕は、けれどちょっと上げ下げしてから俺に触れることなく下ろされた。我慢、したんだな。俺が弱ってるから。抱きしめ潰してしまいそうだからって。
 

 俺のこととなると抑えが効かなくなるダメなオッサンのくせに。よく頑張ったなって、俺から手を伸ばして抱きしめてやる。

 
 けど、悠一が「ぐっ」と呻いた。悠一の温かい手は俺の背中を軽く2、3回撫でるだけ。すぐに俺の肩を押して、離れちまった。

 
「体から薬が抜けきるにはあと少し時間がかかりそうだが、俺はもう元気だ。お前、あれからそんなに時間が経ってないと思ってるだろ?」

 
 まただ。俺の肩をつかんだまま見つめる悠一は、不安そう。黄色い瞳の中にいる俺の姿が、黒髪に金の目で褐色の肌のままだから。

 
 それだけじゃない。悠一は言った。俺はあれから「1週間、眠りっぱなしだったんだ」と。

 
 自覚はない。だって、体の不調はだるいだけだし。腕も足もちゃんと動く。眠っている俺の手足を、悠一が毎日マッサージしてくれていたからだって。

 
 それがなかったら俺の体は、筋肉がカチコチに固まって目を覚ました時に上手く動かせなくなっていたって。

 
「先に言うが、千川原は香さんの監視下に置かれるようになった。香さんに24時間365日、どこで何をしているのかを感知される。少しでも不穏な動きを見せれば、首輪から麻酔を打ち意識を奪う」

 
 今、ソランさんはこの街のどこかにある特殊な独房で監禁中。明日には釈放され、元の仕事に戻る。


 あんなことがあっても、ソランさんは大事な研究員であり被験者。ドクトルの補佐を他の人にやってもらうことはできないらしく、香さんが渋々決断したんだそうだ。
 

 すっかり大人しくなった、けれど希望を失い生きる人形と化したソランさん。彼の首には今、香さんが作ったのだという特殊な首輪が嵌まっている。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

野球部のマネージャーの僕

守 秀斗
BL
僕は高校の野球部のマネージャーをしている。そして、お目当ては島谷先輩。でも、告白しようか迷っていたところ、ある日、他の部員の石川先輩に押し倒されてしまったんだけど……。

処理中です...