ユキ・シオン

那月

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白からの黒からの赤

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 俺もアホだ。悠一のネタバレを聞いて、どんな内容なんだろうってすっげー気になったんだ。読みたくて読みたくてウズウズする。
 

 だから、腹いせに悠一に背を向けるように本を手に横を向く。最初のページをめくって、カラーの肌色率の高い絵に鼻血が出そう。

 
 あぁこの絵、笑也の家で見た。紫のUSBメモリに入ってた画像に、こんなのが何枚もあったのを思い出した。やば。俺弱ってんのに、体が熱くなってきた。

 
「悪かった。もうネタバレしないから、俺も隣で読んでいいか?2巻だが」

 
「俺を怒らせようと、わざと言ってんだろ?ふざけんなよ。もっと他に言うことがあんだろ?心を失ってても寂しかったって、俺に会いたかったって。やっとゆっくり、2人っきりになれたのに。そんなの……」
 

「……シオン。俺は――」

 
 バッカみたい。声のトーンを落として優しい声で俺の名を呼ぶ。耳に、耳の奥にすんなり入って心地いい声。苦しくて、頬に触れてきた手を振り払った。

 
「俺はずっと寂しかった。会いたくて、声を聞きたくて、触れてほしくて。眠るたびに悠一の夢を見た。でも、夢の中の悠一は遠くにいるんだ。走っても、全然近くに行けなくて。最後に悠一は俺に背を向けて消えるんだ。夢だってわかってても、現実でも悠一が消えちまうんじゃねぇかって、怖かった」


 あぁだめだ、声が震える。我慢しようとしても目が熱くなって、ギュッと目を閉じれば熱い滴がこぼれ落ちる。


「会って、話を聞いて。ソランさんの悠一への想いは本物だって実感した。やり方は間違っていたけどさ、それくらい本気で好きなんだっていうのが痛いくらい伝わってきた。でも、悠一は渡さねぇ。猫屋敷悠一は俺のだって、必死になってた。あのまま悠一が戻ってこなかったら俺、ソランさんを殺してたかもしれない。…………だからなのかもな。俺の体がこんな風になっちまったのは」
 

 祈るように握り締めた自分の手は褐色。自分のものじゃないみてぇに、違和感が抜群。震えて歯が鳴るのを抑えようと噛みしめた唇に、鉄の味がにじむ。


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