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黒の王
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しおりを挟む黒の王が、香さんが、悠一が、笑也が、緋桜さんが俺に目を向ける。えっ?ここに来て俺?
もしかしてさ。もしかしなくてもだけどさ。黒の王が俺の中から出られなくなってんのって…………俺のせいだったりする?
黒の王が俺の体に宿った理由は、俺の運命である悠一に出会うためで間違いないとして。その後もそのままなのは、俺が時間をかけて少しずつ、黒の王の力を吸収しているから。
まるで食べたものが胃や腸で消化、栄養として吸収されるみたいに。って、黒の王は俺の栄養源かよ。
でも言われてみればそんな気もする。ってことはさ。黒の王の力を全部吸収し尽くしたら、黒の王は消滅するんじゃねぇのか?都合よくいけば、あるべき場所に戻れる。
ただ、俺が黒の王の力を全部吸収しちまったら。ただのイエネコの俺に、あの強大な力は制御できねぇ。
悠一が魅了の力をコントロールできなかったみたいに、俺も力が漏れ出て誰かを傷つけちまうかも。そんな力、俺はいらねぇよ。
たぶん時を止めている笑也以外、俺とおんなじことを考えてる。で、すかさず仕事の出来る通訳さんが笑也に説明。
「役目を終えた花は養分を根に取られて枯れる、か。やれ、貧相な根じゃの。このままでは養分の摂り過ぎで根が壊れてしまう。養分だけを取り出せればよいのじゃが。どうしたものか……」
花に例えて考え込む香さんは、どうやらドクトルに電話をかけたらしい。医者として、何かいい案はないか聞いている。
1000年の時を生きた香さんでもわからないなんて。俺、どうなるんだ?もしも何もできずに黒の王の力を全部吸収しちまったら、今度は俺が他の人を傷つけないように檻に入れられる?
そうなったら俺、悠一のそばにいられねぇ。そんなの嫌だ。でも、どうすれば!?急に不安に、怖くなって震えていると、声が聞こえた。
「俺じゃだめか?」
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