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黒いライオン
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しおりを挟む「あぁ、シオン君ならそう言うと思った。我は、我の役目を終えた。思い残すこともない。心が晴れ渡っている、君達のおかげだ」
「今、良い顔してるよ。最初に見た時は猫科らしく背中が曲がっていて、暗くジメジメして怖い感じもしていたのにさ。スッキリ爽やかーって感じだな」
「我が爽やか、か。ならば、これを見ても同じことが言えるか?」
バサッ!真っ黒な上着をひるがえすと、黒の王の全身が隠れる。まるで手品。次に見えたのは、真っ黒なライオンだった。
顔の周りを覆うたてがみも体も爪も尻尾も、艶のある漆黒。引き立てられる金色の瞳は光り輝いていて、口を開けば真っ白な牙が見える。
そして何より、体が大きい。ライガーの悠一に匹敵するほどの大きな体からは、神々しさすらも感じる。頂点に立つ者の威厳の塊みたいなのを感じる。
そしてハッキリ思う。全身漆黒なんて、爽やか……じゃあ、ねぇな。
けれど、ちょっと引き気味の俺と悠一とでは感じ方が違ったみたいだな。ご先祖様の本来の姿を目の当たりにして、同じ色の目が釘付け。
「格好いい。もう力は残ってないはずなのに、痺れるほどの圧倒的な力を感じる。それに、全てを包み込むような包容力、優しさも……あっ」
悠一が、黒いライオンに魅了されている。って表現するのが1番正しい。
起き上がって、俺のナカから出て行くと黒の王に手を伸ばす。ちょっと、ジェラシー。なんて言ってられない。
瞬きもしないで見つめながら伸ばされた悠一の手は、しかし黒の王に触れることなくスッとすり抜けてしまった。実体はない、魂だけの存在。
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