ユキ・シオン

那月

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 ――キッチンでグズグズ泣いていたシオンに声をかけたら。思わず吹き出して大爆笑してしまった。


 直也の言った通り、傷ついて泣いているんだと心配したんだが。「んえ?」と振り向いたシオンの目は真っ赤で泣いていた。だが、それよりも。鼻にティッシュを2つ突っ込んでいて。


 玉ねぎを切っていて、いつもよりもかなり染みるからって。大好きな可愛い顔が台無しというか、インパクトがすごすぎてな。


 崩れ落ちて腹を抱えて泣くほど笑っていたら「もーっもーっ!」と、背中を何度も蹴られた。


 お前は牛の擬人化種なんかじゃないだろう?ヒィヒィ言いながら目元を拭い立ち上がった俺に、切った玉ねぎを投げてきたシオン。


「こら、食べ物を粗末にするんじゃない。うわっ!これは確かに、目にくるな」


「驚きの超刺激だぜ。ったく…………で、直也は?」


「晩飯は食わないとさ。俺達からの施しを一切受けないつもりらしい。我慢大会の始まりだな」


「負けないし。信じてるし。意地張ってても、匂いにつられて出てくるって。あ、悠一、洗濯物やっといてよ。また適当にたたんだらやり直しさせるからな」


 俺の恋人は日に日に料理スキルがアップしている。本当は俺だけ食べたい、独り占めしたいんだが。シオンは友達づくりのための餌付けが大好きだ。


 新しく見つけた友達に、ほぼ毎回会うたびに手料理を手土産にするなんて。俺の気にもなってほしい。しかも今回は、直也が家族に加わった。あぁ、嘆き。


 洗濯物、たたむのは苦手なんだよなぁ。俺は何でも力任せにするし、ライガーだからその力も並外れているんだし。たたみ方がきたないならまだしも、たまに破いてしまう。



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