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苦くて儚い
9P
しおりを挟むなら、あとは笑也先生のご都合をお伺いしねぇとな。締め切りに追われてなかったらいいんだが。
「変わっちゃったね。シオン君ってさ、あんまり人を寄せ付けないくせに体で弄ぶっていうか。裏があって僕と同じ感じがしたのに。自信に満ち溢れているっていうか、何だかキラキラして見えるんだよね」
集中力が切れたのか、机に頬杖をついてノートにペンを走らせていた直也がそんなことを言った。
そのまま、俺に顔を向けてジッと見つめる。1年前と今、一体何が俺を変えたんだろう?と、マジに考えている直也にドキッとした。
語り尽くせねぇくらい、色んなことがあったんだよ。全部、聞きたいか?帰ったらいくらでも話してやるから。
「え、何?僕、おかしなことを言ったつもりはないんだけど。ねぇ、なんで笑っているの?」
こうやって不意に見せる直也の真面目さが、嬉しい。嬉しくて笑ってしまう。肩を震わせるだけで我慢しようと思っていたんだけどさ、笑い声が出て。
「そこの君。今の説明のどこに笑える要素があったのか、10文字以内で答えてみなさい」
こめかみに青筋を立てた先生に見つかった。一斉に集まる、たくさんの視線。
シンと静まり返る中、俺は考えた。カタブツで気難しいことで有名な先生だし、嘘を言えば減点をくらってしまう。
俺は立ち上がり、落ち着いて息を吸い込むと答えの10文字を紡いだ。
「“先生は実はオタ腐女だ”……ですかね。オタクだって大事な文化、笑ってしまってすみませんでした」
より一層静かになったというか音がなくなった。嘘なんかじゃないぜ?前に悠一と出かけた時、コミケ会場に立ち寄ったんだけどさ。
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