ユキ・シオン

苦くて儚い

１４P

「――ねぇ。あの先生を手懐けるネタ、持ってなかったのかい？」


「ねぇよ。あの先生、いっつも無表情だしテンションも低いからロボットみたいだよな。けど、洞察力は、さすが先生」


　結局俺達はあとでちゃんと先生のところに行って、叱られました。


「君達、仲がいいの？悪いの？生徒同士のことに介入するつもりはないが、不真面目な生徒に僕の講義を受ける資格はない。次、不真面目な言動が見られれば君達の席は僕が指定するよ。以上」


　最初から最後まで無表情。しかも、トーンも一定で淡々としていた。それが逆に怖くて「「はい、すみませんでした」」と素直に頭を下げた俺達。


　このあとから昼休みまではそれぞれ別の講義だから、保健室で待ち合わせ。それぞれの教室まで同じ廊下を歩きながら、直也は前髪をクルクル。


「直也、新しい彼女を作れよ。俺をからかう余裕もないくらい好きになる彼女。あ、男でもいいのか？」


「…………それ、本気で言ってる？」


「割と本気だぜ？だってそうだろ。悠一の魅了の力は薬で何とかするにしろ、俺へのからかいは無意識みたいなものなんだろ？ずっと続いていたらさ、さすがに悠一も俺も黙っていられねぇぜ」


「へぇ。さっきのが、ただのからかいだって本気で思ったんだ？」


「え、違うのか？とにかくさ。このままじゃ直也も報われない恋で辛いだろうし、新しい出会いを探してみれば？今の出会い系アプリって、結構セキュリティもしっかりしてていいみたいだぜ。俺も、紹介できそうな人を……あれ、直也？」