ユキ・シオン

那月

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優しくない優しさ

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「大丈夫、大丈夫、です。ドクトルさんに教えてもらった、おまじない」


 悠一は、驚いて目を見開いていた。俺の前にいた、頭を撫でていたのは駿君で。目が合うと微笑む。優しい、大人びた微笑みに思わずキュン……ってなりかけた。


 きっと駿君は、辛そうにしている人や苦しんでいる人を放っておけない。すぐに手を伸ばし寄り添う。優しさだけではできない仕事だけどさ、医者、向いてると思うぜ。


「ありがと。俺と直也は同い年で、同じ大学なんだよ。俺の最初の友達、大切な親友。わけあって直也は――」


「シオン。あんまり、むやみやたらに話していいような内容じゃない」


「ボク、耳を塞いでおく?でも、不安と悲しみ、ボクでよければお話を聞いて助けたい。ここで会ったのも、偶然……じゃなくて。あれ、何だっけ?えぇと……あ、そうそう。必然、だから」


 駿君の頭を撫で返してあげて。気付いたらポロッと話しかけていた。悠一が俺の肩を叩いて首を横に振るし、駿君は慌てて両耳を手で塞ぐ。


 けどさ、なんか駿君の言葉には力がある気がしねぇ?「ここで会ったのも必然」とか、確かにって思えるし。


 俺は、俺という患者に一生懸命向き合おうとしている駿君という医者見習いに話を聞いてほしいって思うんだ。


 だから悠一と目を合わせて、深くうなずく。さすが俺の悠一。それでわかってくれて、俺はそのまま続きの話をした。


 直也が刑務所に入った関係の話はナシ。大学で何があったのか、どんな会話をしていたのかとか。駿君はジッと俺を見つめて、真剣に聞いてくれた。


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