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優しくない優しさ
8P
しおりを挟む俺が、直也のことをわかっていない?ズキンッ。胸の奥が痛んだ。
直也にとって俺は唯一の親友だから。だからわかってあげないと、わかっている、つもりだったんだな。言われたら、悔しいけど納得した。
悠一さ、気付いていながらどうして言ってくれなかったんだ?力が抜けて背もたれに背中を預けた俺がそう聞くと「シオンが自分で気づかないと意味がないと思ったんだ」だって。
でも結局、俺は駿君に教えてもらった。俺だけじゃ、本当の直也の気持ちに気付いてあげられない。
「あのっ……あ、えと、その。大丈夫、です。喧嘩したなら、仲直りができますから。ごめんなさいしたら、必ずできます。だから、大丈夫です」
ちょっと放心状態で床の傷を見つめていたら。駿君が、また俺の頭を撫でてくれた。両手で、ワシャワシャ。俺の頭、ヤバいことになってねぇか?
それにしても。駿君は子供っぽいのに、たまにすごいことを言う。
そうだよな。喧嘩には仲直りがつきものだもんな。謝りたい。いやでも、まだ俺は直也の本当の気持ちがわかっていない。
大学での会話で、何が直也を傷つけしまったのか?それがわからないで謝るのは、意味がない。
「今、直也に会わねぇ方がいいんだな。薬のせいで具合が悪くなってんなら、悠一は近づいちゃなんねぇし。つーか、ドクトルはまだなのかよ?」
「あ、来たっ!」
俺が言い終わるか終わらないかのうちに、駿君が背中をピンッ!と伸ばして奥の階段に視線を向ける。ものすっごく嬉しそうだけどさ、興奮のあまり耳と尻尾が。
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