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優しくない優しさ
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しおりを挟むいや、助けてやらねぇし。お優しい俺でも、これは無理。よし、帰ろう。俺は悠一の手を握った。
途端に、絶望を顔に張り付けたドクトル。悪いな。俺達にはさ、もうすぐ決着がつくってわかってるから。気付いてねぇだろ?
駿君、だんだん本気で怒ってきてる。牙を剥きだして、尻尾の毛が逆立ってんだぜ?
「ドクトルさんは疲れてる!休む!レッツゴー!バイバイ、ちらららはらさんっ……と、シオンさんと髭のオジサンっ」
あぁほら、完全にキレた駿君がドクトルを抱き上げて走って行っちまった。超速い。さすが、元事故マニア。俊足のウィペット犬。
でもまさか、力づくで奪うなんて。しかも、お姫様抱っこ。髭面変態オヤジが、子供にお姫様抱っこで拉致られるなんて。
突き飛ばされたソランさんが床に倒れている。すごい力だった。駿君は17歳でも体が大きいし、それに……何というか、駄々っ子って感じじゃなかった。
あれは、本気でドクトルのそばにいたいっていうか。嫉妬というか、アレだな。
「いってててて……ほんっとあの子、しつけがなってないんだよなぁ。はぁ。せっかくちゃんと休ませようと思ったのに、失敗した」
今度は、ソランさんと目が合った。頭を押さえながら立ち上がったソランさんは汚れた白衣をはたき、苦笑。
「ここ、病院なのにな。騒がしくてすみません。轟木君のことは何かあればすぐ連絡するし、伝えたいことがあれば伝えるから」
「いや、うん、ありがとうございます。ソランさん、今『失敗した』って……?」
そうだよな、ここが病院だって完全に忘れちまってた。駿君にはいつも驚かされるけど、今回は特別というか。ソランさんが「あー」と、2人が去っていた方に2色の目を向けた。
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