ユキ・シオン

那月

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夜、甘えたい

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 これはヤバい。そしてタイミングよく、香さんからの着信。さっさと病院に行くかドクトルを呼べだと。


 擬人化種が熱を出すと、人間よりも危険なんだ。まず、薬が人間のものほど進化していない。千川原が頑張って次々と作ってくれてはいるが、どうしてもそれらの薬が合わないやつだっている。


 薬が効かなければ、あとは本人の免疫力と体力にかけるしかない。だがインフルエンザ級の熱が出ると、一気に死に至ることもある。


「ドクトル、シオンが高熱を出した。連れていけないこともないが、本人は起き上がることもできない」


『何度?熱以外は?咳はある?発赤とか湿疹とかは?』


 ドクトルに電話をかけると、珍しくすぐにつながった。いつもなら開口一番にふざけるドクトルが、きわめて真面目に容態を聞く。これはたぶん、察知した香さんが俺の前にドクトルに電話をして釘を刺したな。


 聞かれたことに答えると、メモをしているらしい。カリカリと音が聞こえて『ソラン、今から言う薬を用意して!』と檄を飛ばす声が聞こえた。


 熱があるせいか、いつもの甘い匂いがかなり濃く増していてヤバいと伝えてみたら。本当は言うべきか悩んだけどな。なんて言ったって変態ドクトルだから?


 意外にも「あぁ、それはツガイにしかわからないから問題ないない」と、あっさり。拍子抜けだな。


『今から行く。窓、開けててね』


 その声を最後に通話が終了。あ、来てくれるのか?よかった。窓をってことは、オオコウモリの姿で来るのか、それは早いな。


 左手に痛みが走った。通話中、シオンがずっと握っていた右手。振り向くと、シオンが苦しそうに両手で握り締めている。あぁ、ドクトルに瞬間移動の能力があれば。


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