ユキ・シオン

初めまして、人間です

３P

　直也は頭を押さえながら適当に謝って。笑也は、頭を押さえながら残念そうに。


　同じポーズ、目が合って、同じように眉間に力が入って。まるで鏡を見ているみたいで、つい、笑っちまった。そしたらまた同じように２人に睨まれて。


　名前もそうだけどさ、何となく似てるよな、この２人。それなりに上手く暮らしていけると思う。まぁ、ずっといるってわけじゃないけどさ。


　ちょっと、安心した。直也が笑也を、笑也が直也を「やっぱり無理」とか、もしくは２人共が言うんじゃないかって思ってたし。


「今日からシェアハウス開始として。家の中はあとで案内します。で、俺の仕事の話はもう聞いてますよね？明日の夜、俺の担当編集者が来ます。適当に、親戚とでも文無しのホームレスとでも名乗っておけばいいので」


「君、もしかして僕に喧嘩売ってる？」


「そう思うような心当たりがあるんですね」


　笑也ってさ、こんな風に誰かで遊ぶことなんてしないと思ってた。というかそんなの、見たことがなかった。明日来るっていう担当さん、月野木さん相手なら親しみを込めてありそうだけどさ。


　いたって真面目な顔で、堂々と直也で遊んでるなんて。こんなことをするのって、どっちかというと直也の方だろ？だから直也、イラだってるし。


　悠一が言ったように、初対面だから直也がどんな人なのかを探るためにおちょくるって。俺や悠一には――まぁ、出会った時がシリアスシーンだったけどさ――なかったよな。


　同じ人間だから？でも年上だぜ？これでも、犯罪に手を染めて刑務所に１年入っていた人だぜ？あ、もしかして、名前が似てるから？


　あれ、それに何だろう？このやり取り、どっかで見たことがあるような。