ユキ・シオン

那月

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ユキ・シオン

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 今日は特別な日だ。


「うーん……このあたりの茂みの奥で暮らしていたんだと思うんだけどさ、1年前とはいえ子猫の姿だったからなぁ。昔とは見え方が違うし」


「さすがにもう、家族はこのあたりにはいないか。母親と、兄弟がいたんだったか?」


「そう。双子の弟が2匹。あいつらは擬人化してねぇと思うけど、今頃、どこで何してんだろうなぁ。猫年齢なら、もう子供とかいたりして」


「かもしれないな。ならシオンは叔父さんってことだ?ハハハッ」


 叔父さんっ!?生まれて間もない子猫達に群がられる場面が見えて、ホンワカするのに。そいつらが突然擬人化して「おじしゃん」って、俺を呼んで。震えた。


 俺と悠一が来ているのは、白猫として俺が生まれ育った巣があったとされる場所付近。


 大きな自然公園みたいな森の中のどこかだったが、もう覚えてねぇな。ハトやカラスはいるのに、野良猫は1匹もいない。人間が餌付けして、しかも数が増えて近隣住民が困るからと見つけ次第保護されているらしい。


 保護、か。保健所で殺処分とかもたまにいるって、毎日来るという老夫婦に教えてもらった。俺の家族も、保護、されたのかな。


 ベンチに座って日光浴を続ける老夫婦に「ありがとうございました」と頭を下げ、俺達は車に戻る。


「またいつか、必ずどこかで会える。そう信じていよう。信じる力、それがシオンの最強の武器だろう?」


 車に乗ってシートベルトをつけてエンジンをかけても、アクセルを踏めないでいる俺の頭を大きな温かい手の平が撫でた。


 優しい、大好きな手の平。大好きな悠一の手の平。安心する。俺の口元は笑みを浮かべて、手の平が離れると前を向いて、アクセルを踏んだ。


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