ユキ・シオン

ユキ・シオン

４P

「――お待たせ。遅くなってごめん、やっと悠一を連れてこられたな」


　車を走らせて、街のはずれにやってきた。ばっちゃんが眠る、墓地。お墓を作った時と、笑也と初めて出会って拾われた時に来たから、３回目。


　でも悠一はこれが初めて。お墓を作った時はちょうど、大事な会議があるとかでどうしても抜けられなかったんだよな。で、そのままズルズル。


　来る途中で切り花と線香を買ってきた。雑巾は家から持ってきて、バケツと水は手洗い場で借りてきて。まずは、墓石を綺麗に洗って周りの雑草も抜く。


「ん？高台寺……？あぁそうか、確か隣が笑也のおじいさんのお墓だって言っていたな」


「そうなんだよ。何かの擬人化種らしい、笑也がゆいいつ外に出る数少ない用事の１つなんだ。つっても年に１回、命日だけらしいけどな」


　腕まくりをして雑巾で墓石を磨いていた悠一が、お隣さんの墓石に気がついた。笑也が来るのは年に１回だけだし、他に誰も来ないのかはっきり言って汚い。


　友達だし、助けてもらった恩もある。ばっちゃんの方は悠一に任せて、俺は笑也のおじいさんのお墓にお邪魔して掃除に取り掛かった。


　何の擬人化種だったんだろうな？「いつも笑也にお世話になってます」と、ご挨拶してみた。返事があるわけでもないのに。返事があったら怖いわ。


　見た目の割に、汚れは表面だけ。年に１回だからこそ笑也は、時間をかけて毎回キッチリ掃除をしているんだな。笑也がどれだけおじいさんを大切に思っているのかがよくわかる。


　あっという間に終わって、ばっちゃんの方に戻るとちょうど悠一も終わってドヤってた。


　でもまだまだ詰めが甘い。俺は墓石に顔を近づけて、指をさした。