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主人マクベス
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しおりを挟むマクベスは従順だものね。不満も一切なく晴明様から与えられる仕事を全てこなしていたわ。この時からすでに立派な犬、忠犬。
それまであたしが担っていた仕事だったから、あたしは晴明様の身の回りのお世話に専念するようになっていたわね。
あまりの忠犬っぷりに気をよくした晴明様が調子に乗ってあれもこれも仕事を言い渡す。しかもだんだん危険度が増していくものだからある日、彼は倒れた。
その時よ。彼の体からドス黒い負のオーラみたいなものが目に見えてにじみ出てきたのは。
慌てた晴明様は懐から小さなきんちゃく袋を取り出し、マクベスの手に握り込ませた。晴明様の“鎮め”の力が凝縮された特別な石が入っているから、だから大丈夫だと強く声をかけ続ける。
あたしは腰が抜けちゃって、怖くて何もできなかった。声をかけることもできなくて、ただ苦しむマクベスと彼の手を握って声をかけ続ける晴明様を見ていることしかできなかった。
マクベスの体からにじみ出る黒が襲い掛かってきて、あたしから体温と力を奪った。正体不明の圧倒的な力と恐怖に、死すら感じたのよ。
緊急で張った晴明様の結界のおかげで黒は部屋の外に出ることはなく、でもマクベスがせき込むごとに濃い黒が吐き出されて。部屋の中が黒すぎて、まるで闇の中。
あの晴明様が慌てて、必死になって声をかけ続ける姿を見たら。晴明様でさえ、黒に襲われて顔をゆがめていた。黒も、マクベスも、一体何なの?
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