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地獄巡り御一行様
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しおりを挟む酒呑童子は「おー怖い怖い」って悪戯っぽく笑いながら、茨木童子を連れて離れていったわ。
どうしよう、すっごくドキドキする。今の今まで本当に長い間頑張ってきたあたしへのご褒美、期待しちゃってもいいの?緊張して声が出ない。体が動かない。あ、物理的にも動かない。
晴明様もあたしを抱きしめたまま全く動かないし、しばらくそのままで沈黙が続く。
真っ白な世界だから時間の感覚もないんだけど、だいたい5分くらい経った頃かしら?晴明様が深呼吸をした。
「好きだ。なんて、伝えるのが怖かったんだよ。ナツメが私を好きになるずっと前から惹かれていた。お前は式神だから意識しないようにしていたのに、お前ときたらあっさり私を好きだと言ってのける」
「せ、晴明、様……?」
「震えたよ。無意識に私の想いがお前に伝わって芽生えた心にまで影響してしまったんじゃないかと、怖くなって遠ざけた。けれどマクベスが来て、お前達のやり取りを見て大人げなく嫉妬してしまった私がいる」
ゆったりと語り始めた晴明様の心臓は、滑らかな口調とは正反対にバクバクバクバク高鳴って今にも飛び出してきちゃいそう。
いつも毒を混ぜて話をする晴明様らしくない。とても真剣で、真面目で、素直に想いを打ち明ける。長年封じてきたあたしへの本当の想い。
「お前達を永久の鬼追いにした時も、そばに居たくて私の魂の欠片を呪と共に埋め込んだ。いつかはこのくだらない想いも冷めるだろうと、そう信じていた。けれど逆効果だったようだ」
あたしとマクベスはどんな姿に転生しようと、常にそばにいた。鬼と戦いながらも仲良く、暮らしていた。
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