能ある鬼は角を隠す

那月

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魚は釣れても角は釣れない

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「駿河敦彦は鬼だ。たとえ我ら以外の全ての者達がお前を人間だと言っても、お前が某の息子であり正真正銘の鬼であると某が胸を張って叫んでやる」


「私だって、あつ君と小さい頃からずっと一緒だったんだから。人間なんかじゃないって言いふらしてあげるわっ」


 言いふらすって、ちょっと言い方がおかしな気がするが。和紗の思いは十分、敦彦に伝わった。


 父親に優しくナデナデされ、氷が解けるように敦彦の顔がほころぶ。いい感じだったのに、何かと活発的な和紗にバシンッ!と背中を叩かれ呻きながらつんのめる敦彦。


 ポスンッと、恒彦の腕に抱き留められた。恒彦はそのまま敦彦を包み込むように抱きしめる。


 もう小さな子供ではない、けれど恒彦にとって敦彦は子供に変わりない。すっかり冷えてしまった息子の体を抱きしめて「敦彦、お前は1人じゃない」と呟く。


 震えた。


 敦彦の体が。寒いのもあるが、父親からの温かい言葉に心が震えた。「父上」と縋るような声が、震えた。


「素晴らしいとは思わないか?角のない姿は生まれてほんのわずかの間しかない。ゆえに、鬼なのに大きくなっても角がないのはとても珍しい。今のうちに、角のない我が子の可愛い顔をこの目に焼き付けておかないとな?」


 震えが止まった。ピタリ、完全停止。


「…………離せ。帰る」


 こぼれる寸前だった涙が、一気に引いた。むしろカラカラに乾いた。感動を返してくれと言わんばかりに恒彦の胸を押し、離れる敦彦。


 小さく「来てくれてありがとう。心配かけてごめん」と呟き、家がある方へと歩き出す。


 隣で控えめに笑う恒彦に苦笑いを浮かべていた和紗。走り、敦彦の隣に並ぶとふと声をかけた。


「で、竿はどうしたのよ?」


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