能ある鬼は角を隠す

那月

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逃した魚は大きいし美味い

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「反撃もしてこないなんて。あつ君、弱くなったんじゃない?それでもお父様の息子なの?」


 呼吸は荒いがそんなに汗をかいていない敦彦の隣に腰を下ろす和紗。顔を反らし手拭いで額の汗を拭うが、敦彦は実は、わざと手を抜いていた。


 和紗と稽古をする時はいつもそうだ。相手が女性だからというのもある。気付かれないように手加減をして、負ける。


 理由は、もしかしたら父親である恒彦なら何となくわかっているかもしれないな。たまに、今回も実は遠くで2人の稽古を見ていた。


「いやいや、和紗が強すぎるんだって。というか和紗、さっき僕の股間を狙ったでしょ?信じられないな」


「あら、男を倒すには的確な攻撃でしょ?まぁでも、明日の試験ではこんなことする余裕なんてないでしょうけど。絶対に勝ち上がるわ」


 さすがにオトコを守った敦彦は、明日のことに闘志を燃やす和紗を見つめる。決意、信念、それから強い使命感を感じるまっすぐな瞳。


 彼女にとって明日は大事な日。彼女の今後を左右するほどに重要な試験がある。


「やる気満々なのはいいけどさ。腕っぷしだけが強くても意味がない。最初の、賢さの試験を通らないと」


「フフン、わかってるわよ。鬼神は文武両道でなくてはならない。たくさんの書物を読んで模擬筆記試験も何度もやった。満点よ。成績1番で通ってやるわ」


「……すごいな。僕、応援してるから。信じてるから。和紗なら絶対に、賢さの試験を通って武の試験を勝ち抜くって」


 母親の腹の中にいた時からそばにいた。ずっと近くにいた幼なじみだから。敦彦は、和紗が誰よりも努力を積み重ねて明日の試験に挑もうとしているのを知っている。


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