能ある鬼は角を隠す

那月

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逃した魚は大きいし美味い

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 明日の試験の9割9分9厘が男性、しかも自分より年上の大人達が相手。普通に考えれば文武共に和紗では力不足。それでも、絶対に負けないと意気込むのは。


 和紗には2つの思いがある。1つは、角が生えてこないことに自暴自棄になってしまっている敦彦に見せつけるため。


 諦めない、誇りを持つ、自分を信じ抜く。この3つを武器に、ほぼ不可能なことに立ち向かう姿を見せつけることで、敦彦にも強くなって欲しい。


 そしてもう1つの思いは。明日の試験が、現在不在となっている“鬼神”を新たに襲名するにふさわしい者を選別するためのものだから。


 鬼達をまとめる3人の鬼、“三童子”を束ねる鬼達の頂点、それが“鬼神”である。和紗は“鬼神”の座、名前を守るために“鬼神”の血を引く自分がならないといけない。そう思っている。


「…………もしも。万が一、私以外の誰かが鬼神を襲名してしまったら」


 ただし、和紗は気は強くても所詮は18歳の女鬼。不安に思わないことはない。


「その人が鬼神にふさわしくないって思ったら私、何をするかわからない。もしかしたら私、新しい鬼神のことを――あ、ううん。何でもない」


「大丈夫、その時は止めるよ。力づくで、父上や僕が。でもさ、きっとその心配は杞憂になる。だって和紗は強い。僕と父上がついているから、和紗は全力で挑めばいいんだ」


「そこでお父様も出してくるんじゃあ、女の子にモテないわね。クスクスッ。ありがとう」


 わずかに殺気をまとっていた和紗の、肩の力がフッと抜けて笑う。つられて敦彦も笑い、蹴られた腹が傷んで押さえながらも笑っていると突然男の笑い声がした。


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