能ある鬼は角を隠す

那月

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逃した魚は大きいし美味い

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「僕の釣り竿です。昨日釣りをしていて無くしてしまって、戻ってきてよかった。届けてくれてありがとうございます」


「ならこの魚、お前の獲物だったのか。川下でその竿を見つけたんだけどなぁ、この丸々太った魚がついていたんだよぉ。俺達だけで食うにはデカすぎると思ってさぁ」


「じゃあ私が捌いてあげる。お刺身と焼きとぉ、残りは煮物にして今日の晩御飯ね」


「「さすがおふくろ。お願いしまっす!」」


 昨日敦彦が闇を吐きまくっていた河原で、釣れていた魚もろともドンブラコドンブラコしてしまった釣り竿は。川下で水切り対決をしていた右京と左京に拾われた。


 それにしても、川魚と思えないくらいに大きな。全体的に丸々と太った魚に、華南がよだれを拭う。


「こんなに大きいんだもの、和紗ちゃんも手伝って。さぁ、男どもは手を洗って座って待ってなさい。恒彦さんも、勝手場を借りるけどいいわね?」


 女性ながらに逞しい華南はヒョイと大きな魚を持ち上げ、敦彦達の家へと向かう。


 遠くから見守っていた、気配を消していた恒彦の存在に最初から気付いていた華南は声をかけ和紗を連れて家の中に入る。


 そこでようやく敦彦達は恒彦に気付いて一斉にバッ!と顔を向け驚く。右京と左京は自分達の所業を全て見られていたのかと、バツが悪そうに早足に逃げた。


 残された敦彦は恒彦と目が合うと、一礼して家の中へ。もしかしたら敦彦は、気付いていたのかもしれない。


 そう思えるほど、敦彦は窮地に立たされていても落ち着いていた。敦彦は角のことでよく気を病むし気が弱いうえに、剣術もいまいち。


 三童子の跡取り、恒彦の血を引いているのならばそれほど弱々しくはないはずなのだが。たまに、それがわざと弱く振る舞っているように見える恒彦。頭を振って、家の中へと続いた。



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