能ある鬼は角を隠す

那月

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逃した魚は大きいし美味い

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 敦彦は、右京と左京と同じ。敦彦に変身していた華南が言ったように「鬼神になることはできない」、三童子の跡取り。


 敦彦の父親、恒彦もまた三童子の1人だ。ゆえに才のない敦彦はともかく、文武共に非常に秀でた右京と左京が鬼神襲名の試験に名乗り出ることはできない。


 明日決まる、新しい鬼神に従順に従うことが彼らの宿命なのだ。嫌と言うことは、できない。


「和紗の努力は認めるさ。そんなに、両手を血豆だらけでボロボロにするほど一生懸命なんだし?やぁー、ますます惚れちゃうねぇ。あれ……左京?」


 三童子である母親の重圧と、敦彦の言葉に押し黙った右京。口を開くとフッと力を抜いて両手をヒラヒラ。


 年頃の女の子のものとは思えないほどに、マメができては剥けてマメができては剥けるを繰り返した手の平。恒彦の剣術指導で足や腕、体中にできた痣や傷。


 その努力を、認めざるを得ない。女好きの右京が本気で和紗に惚れているのかはともかく、いつものように軽い言葉を重ねてくるはずの左京が黙ったままだ。


 顔を向ければ、左京はまだ黙ったまま険しい顔。足元の地面を見つめ何か考え込んでいるようだが、右京の視線に気づき顔を上げればニコッと笑顔。


「誰でもいいよ。鬼の頂点に君臨する和紗、想像したら格好いいけど。まぁそんなことより。すっかり話がそれちゃったけどぉ、この大きな魚を一緒に食おうと思って持ってきたんだよねぇ」


 能天気なのか何なのか。左京の言葉に「この子はもう……」と額に手を当てる華南。笑う右京。


 もうすっかり、完全に放置していた大きな魚を引っ張り出して左京は敦彦に目を向けた。敦彦が握る釣り竿を見て、首をかしげる。


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