能ある鬼は角を隠す

那月

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ツノナシ

3P

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「あっ、異端児っ!そこをどけぇっ!」


「恒彦様、指名手配中のツノナシが出ました!」


 右京、勢いついでにと敦彦に殴りがかりながら突撃。が、恐怖のあまり「ひぃっ!」と両手で頭を抱えしゃがんだため、敦彦の頭上で空振り。


 左京、ザザザーッ!と恒彦の目の前で急停止。早口に事情を伝え、助力を乞う。


 自分の両親と子供を殺し、妻をさらって逃亡中の元鬼。欲望に溺れ人間化してしまった鬼を、角を失うことから“ツノナシ”と呼んでいる。


「それは確かなのか、左京君?」


「はい、この目で見ました。ついさっきまで向こうで戦っていたのですが、逃げられてしまって。ツノナシの男のそばに、さらわれていた妻が……その……」


 見事に空ぶって反射的に銃を向けてくる右京に、いつものように驚いてサッと恒彦の後ろに隠れる敦彦。


 真剣な話をしているのに。「やめなさい」と呆れながら溜め息をこぼし、恒彦が敦彦をかばうと右京はバツが悪そうに右京の隣へ。


 左京が言葉を濁しうつむいてしまった。顔色が悪い。一体、何があった?


「男のツノナシと、その妻の女の体がつながっているんです。一体化というか、男と女が抱き合うような感じで、胴体の部分がくっついていて。しかも女の方も人間化しています」


「前を向いた男の頭、後ろを向いた女の頭。4本の腕、4本の足。巨体化しているのに動きも早くて、手間取っています」


「……なかなかに想像しがたいが、とにかく行こう」


 目を伏せ深呼吸をした恒彦は、右京と左京について走る。敦彦も、走った。「ついてきなさい」とも「帰っていなさい」とも言われていない。


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