【BL】蒼海の墓標

秋藤てふてふ

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蒼海の墓標

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 ここは巨大な船の中。
 地球温暖化により海面は低い陸地を飲み込んだ。その後、大量の彗星が地球に降り注ぎ、海面は更に上昇し、陸地はすっかり海の底になった。
 人類は船の中で暮らすことを余儀なくされたのである。
 船には種類がある。まだ陸地があったころ、人類の中でも上位の地位にあった人々が自分たちが生き残るために造った「城」。上位以下の人々が造った「街」。そして、そんな人々からはみ出し生きるものたちが彼らから奪い取った船は「賊」と呼ばれていた。
 かつてこの星が海と陸という区別がついていたとき、彼らは「海賊」と呼ばれていたらしい。
 僕はそんな「海賊」の船に戦利品として積み込まれた。

 賊の船長室に連れて行かれた僕は、床にひざまずかされ、船長とそして彼の直属の部下の一人と思われる男に尋問を受けていた。
「お前は、あの船のΩか?」
「……ええ、そうです」
「城でのお前の役割はなんだった?」
「Ωの役割なんて決まっているでしょう? 性欲処理と子作りですよ」
 言葉少なに吐き捨てるように言う僕の顎を褐色の太い指がつかみあげる。無理矢理口を開かされ、僕は不快に顔を歪めた。
「美しい白銀の髪、海を写したような青い瞳、それらを引き立てるような綺麗な顔立ち、確かに歯を抜いて顔の形を変えてしまうのは勿体ない。しかし、それにしては、お前の口はきれいすぎるような気がするが……」
 ああ、勘の鋭い男だ。性欲処理の役目をおわされるΩは奉仕をしやすくするために歯を抜かれることが多い。
また、歯を抜かれなくても、子作りの役目を負わされれば、子供を生むことで体の抵抗力が落ちて口の中が荒れやすくなる。
「お前が出産したのはいつだ?」
 僕が言い訳を探していると、僕の顎を掴む男をもう一人部屋にいた男がたしなめた。
「おいおい、航成、そんな怖い顔をしなくても良いじゃないか、こいつは船の奥に監禁されていたんだろう? そんなに疑うことはないじゃないか」
 僕がΩだから、大したことはできないだろうと男は言いたいのだろう。なんと人をバカにした男だ。
いや、αらしいと言えば、αらしいのか、まったく忌々しい。
でも、この男のおかげで言い訳を考えなくても良いのだと思えば、それは今は些末なことだ。
 未だに僕に疑惑の目を向ける航成という男は渋々と僕から手を離した。どうやらこの傲慢な男の方が彼よりも地位が高いようだ。船長室にいるからという単純な考え方をすれば、この男がこの船の頭なのかもしれない。
「さぁ、立てるか?」
 思考する僕の目の前によく日にやけた褐色の肌の手がさしのばされる。こんな傲慢な男の手を取るなどしたくはなかったが、今はなにもできない非力なΩを演じた方が都合が良い。僕はおとなしくその手に手を伸ばそうとした。
「あっ……」
「おい、お前!」
僕の手は男の手をはずれて宙をかいた。
バランスを崩した僕の体を男が慌てた様子で支える。ああ、こんな無様な真似なんてしたくなかったのに。苦虫を噛み潰したような気でいる僕の顔を鍛え上げられた大きな手のひらが包み込む、そしてやはりよく日に焼けた肌の顔が僕の顔をのぞき込んできて、僕は息をのんだ。
「……っ!」
 日差しを紡いだようなまがゆい白髪。燃えるような血潮をそのまま透かして見せているような紅の右目と、澄んだ蒼の左目。それらは彫りの深い顔立ちと相まって苛烈な印象を相手に与える。なのに、まったく圧を感じさせないのは、相手を心からいたわっているのが分かる柔らかな表情をしているからだ。
 しかし、そんな男の中で、僕は彼の左目から目を離すことができなかった。まるであの子を想わせるような蒼い瞳。懐かしさと切なさで全身が痺れているようだった。
「目が見えないのか?」
「……見えないというわけではありません。目が悪いんです……」
 優しくよく響く声で訊ねられて、僕はやっと自分を取り戻した。慌てて自分の顔を包んでいる男の手から逃れ、答えると、男はさらに僕を驚かせるようなことを言った。
「そうか……なら眼鏡を用意させよう」
「おい、海翔!」
「なんだよ、航成」
「お前だって分かっているだろう! 眼鏡はとても貴重なものなんぞ!? はいすぐに用意しますと言って、用意できるものではないんだ!」
 航成の言うとおり、眼鏡は貴重なものだ。それ故に眼鏡は技術者に優先的に渡される。性欲処理と子作りが役目のΩに眼鏡など必要ないと考える人間がほとんどなのだ。
「分かっているさ、だから、お前に頼んでいるんだ。今回狩った城の中にこいつに合う眼鏡があるかもしれないじゃないか」
 海翔と呼ばれる男はそう言って、航成の方へ顔を向けた。その表情は僕からは見えない。
「……分かった」
 航成はため息を吐くと、そのまま船長室を出て行った。
「……それで、貴方たちは、僕をどうするおつもりですか?」
「どうって、そうだなぁ……」
 海翔が再び僕の頬に手を添え、じっと僕の瞳を見つめてくる。
 この男がもしも僕に口づけを迫ってこようものなら、体を貪ろうとしようとするなら、この男を殺してやろうと、僕は服の中にしまい込んだ鉄針をいつでも取り出せるようにしていた。
 だが男はまた僕を怒らせるようなことを言って、僕の手を止めた。 
「そうだ。お前は、俺の花嫁になるのはどうだ?」
「はぃ?」
 なにを言っているんだこの男は、Ωとはいえ、たった今出会ったばかり男相手に花嫁になれと言うなんて……! 
 まだ情夫になれと言われた方が納得できる。まあ、そう言っていたら殺していたかもしれないが。
「さぁ、お前の名前を教えてくれ、花嫁殿」
 海翔が僕を見つめてくる。
 まあ、良い。ここから逃げ出すまでの間そういうことにしておいた方が何かとやりやすいだろう。そう考えて、適当な偽名を名乗ろうと思ったのに、あの子にそっくりな右目が僕を見つめると、僕はなにも考えらなくなった。ただ、あの子の名前を呼んでいた。
「……蒼」
「蒼か、良い名前だな、お前の瞳と同じ色だ」 
 その言葉で、何故か、僕は目の奥が熱くなった。


 海翔はその後、航成に僕を花嫁にすると言って、彼に勝手に大切なことを決めるなと怒られていた。しかし、最後にはため息を吐きながら、分かったと、僕を海翔の花嫁にすることを承知した。
「貴方は変わりものだと言われませんか?」
 海翔はやはり「賊」の頭だった。彼の花嫁となった僕は、船長室で彼と共に生活をすることになった。
 机の前の椅子に腰掛け、僕はたった今航成が出て行った扉から視線を海翔へ向ける。
 彼はベッドに腰掛けて、からからと笑って答えた。
「ははは、よく言われるよ。でも、それは、お前もだと思うぞ? 俺が今まで出会ってきたΩは皆αである俺を前にすると、顔を赤くして、とけるような表情をしてしなだれかかってきた。顔を青ざめさせて拒絶されたのは、初めてだ」
 なるほど、僕が今まで出会ってきたΩと違うことを面白がっているのか、なんとなく彼の人となりが分かったような気がした。彼は何か面白いことがあると、周りの迷惑を考えず、自分の思い通りにことをすすめようとするαらしい考えの持ち主なのだろう。
 それならば、彼が面白がるような受け答えをして、ここを逃げ出すまでの間、彼が僕に手を出さないようにするとしよう。傲慢なαを躾てやることなどお手の物だ。
「僕を他のΩと同じにしないでください。僕は、フェロモンに振り回され、子供を産むことにしか存在意義を見いだされないような存在になりたくないだけです」
 僕の言葉に海翔は目を見開いた。
 部屋の温度が下がったような、空気が張りつめたような気がする。
 しまった。答えを間違えた。僕は心の中で舌打ちをした。
 この返答は、彼が望むものではなかったのだ。
 この緊張感を海翔が作り出しているのが何よりの証拠だ。
 しかし、分からない。きっと彼は僕の言葉にもっと僕を面白がると思っていたのに、どうして、彼は、こんなに張りつめた空気を作り出しているのだろうか。
「……子供を産みたくないのか?」
「……考えるのも嫌です。誰かと子供を作るなんて……」
 子供を産むなんて、冗談じゃない! 体の奥が痙攣するような、腹の奥に氷を詰め込まれたような感覚に気持ちが悪くなり、それに耐えるように背中を丸めて両手で鼻と口元を覆った。
 自分の吐いた息を吸い込んで気持ちを静めようとしていると、大きな手のひらが僕の頭の上に優しく乗せられた。
「……そうか……」
 何故か、髪の毛越しに感じるその手の堅い感触と暖かな温度に背骨から暖かさが伝わってくるようで、みるみる僕は自分が落ち着いていくのが分かった。 
「でも、きっと、俺を好きになれば、子供を産みたくなると思うぞ」 
「やめろ! そんなことを言うな!」
 落ち着き始めていた感情が、一気に怒りで噴き上がった。
 僕は頭の上に乗せられていた手を自分の手で乱暴に振り払った。
 ああ、しまった。
 おそらく、海翔は僕が性欲処理の仕事をしているときに何かあったのだろうと考え、僕を慰めようとしたのだ。
 そんな彼の好意を僕は無下にした。きっといい気はしない筈だ。どうにかして彼の機嫌をとらなければ、と考えていると、彼は床に膝をついて、僕の顔を見上げてきた。
「?」
「……すまない。悪かった」
「どうして、謝るんですか……」
 信じられなかった。傲慢なαがΩに対して頭を下げるなんて、しかも、自分の好意を拒絶されたにも関わらず。
 「どうしてって、俺はお前を傷つけてしまったようだったから……」
「でも、僕は、貴方のものなのでしょう? だったら、僕が嫌がってもフェロモンを使って僕を従わせることだって出来るでしょう?」
「なにを言っているんだ? お前はお前のものだ。そして、俺は、お前を無理矢理従わせるような真似をしたくない」
「どうして……意味が分からない。貴方はαだ。αならΩである僕を、僕を思い通りにできるのに……どうして、そうしないのですか?」
 僕の問いに、海翔は悲しげに瞳の中の光を揺らした。それに、僕は自分の過去を見透かされたような気分になった。背中が冷たく感じる。なのに顔はとても熱い。恥ずかしいような、苛立つような複雑な感情に僕は戸惑っていた。
 海翔は、そんな僕の手をとると、自分の手のひらで包み込んだ。その行為の意味を僕は知っている。かつて愛しい存在に対して、僕もしたことがあるからだ。
「それは、俺がお前が好きで、大切にしたいと想っているからだ」
「っ!?」
 おかしい。おかしい。おかしい。どうしてこいつは、つい先刻出会ったばかりの僕を好きだなんて言えるんだ。どうして、αの癖にΩである僕に対してこんな、対等な相手を見るような視線を向けてくるんだ。
 今まで感じたことのない感情に、今まで出会ったことのないαに、行動に、僕は混乱していた。
「……大丈夫だ。お前が俺を好きになってくれるまで、俺は、お前に無理強いをしたりはしない」
 澄んだ声だった。裏表を一切感じさせない声だ。僕は未だに混乱をしたままだったが、彼の声はすんなりと頭の中に入り、そして、彼の言葉の意味を理解していた。
「……僕がαを好きになるなんて、そんなこと、一生ありえないかもしれませんよ?」
 彼に裏表のない自分の気持ちをそのまま伝える。
 すると、彼はほとんど自分を拒絶するような言葉を吐かれたのに、嬉しそうに微笑んだ。
「安心しろ、絶対に、俺はお前に好きになってもらうから」
 

 翌日、海翔は船内を案内しようと、僕を連れ出した。
 船の中では男女が同じ仕事をしていた。これに僕は驚いた。ほとんどの船では、第一の性別によって男は力仕事、女は炊事洗濯や針仕事などの作業分担することが多い。しかし、この船では女も力仕事をし、男でも針仕事をしている者がいるのだという。
「この船では第一の性別で仕事を分担していないのですね?」
「ああ、男でも体の弱いものはいるし、女でも力仕事が得意なものがいるしな、それに、何より本人が望んでその仕事につけるのが、何よりも大切だ」
「……それは、Ωもですか?」
「ああ、Ωもだ」

 人類には第二の性別が三種類存在する。
 αは第一の性に縛られず男女ともに女とΩ性の人間を妊娠させることができる。彼らは優秀で他の第二の性の人間を従わせるカリスマ性のあるものが多く、船の支配層はほとんどがαだ。
 βは第一の性別の異性同士でなければ子供を作ることができない。
 Ωはαとは逆に男女共に妊娠が可能だ。更にΩには発情期が存在する。これが始まるとΩは妊娠をすることしか考えられなくなり、男を興奮状態にするフェロモンを自分の周囲にまき散らす。このフェロモンを浴びた男はΩをはらませることしか考えられなくなる。船の働き手を奪い、更に発情期には役立たずになるΩは、他の第二の性別の人間たちから見下されることが多い。

「彼らは、どんな仕事についているのですか?」
「この船のΩは繊細な心を持っているものが多いようでな、さっき話した刺繍や、新しい歌を作ったりしているものがいるな」
「まさかそれだけが仕事ですか?」
「一応は、でも、忙しいときは他の仕事をしてもらったりもするな」
「そう、なんですか……あの、彼らが実際に仕事をしているところを見たいのですが……」
 海翔は船内で働いているΩ一人一人の元へ僕を案内してくれた。
 仕事中なので手短にだが、彼らと話をすることもできた。
 僕の知っているΩの船での役目と仕事は、子作りや性欲処理だ。彼らはだいたい船の一室に軟禁されていて、船内を歩き回ることはない。妊娠をしない限り食事は粗末なものしか与えられない。
 しかし、この船のΩたちは部屋に閉じこめられることもなく、他の人間たちと同じように生活をしていた。その証拠に彼らの肌は他の皆と同じく日に焼けていて、僕のように日に焼けていない青白い肌をしたΩはこの船には一人もいなかった。
 食事も他の人間たちと同じものを皆と同じように食堂に行って食べたり、気の合う者どうしで集まってとっているのだという。
「さて、この船の中で、お前はなにがしたい? どういうことが得意なんだ?」
 船の中を一通り案内した後、海翔は僕に問いかけてきた。
「……Ωにしたいことを選ばせるのですか?」
「Ωだけでなく、この船では、性別で仕事を決めるようなことはしないぞ。皆に自分の得意なことや、好きなことで仕事が出来るように努力をするのが、俺の信条なんでな」
「Ωが発情期になったときはどうするのです?」
「発情期のΩのために用意した部屋でしばらく過ごしてもらうことにしている。番と一緒に過ごすのも良し、本人が同意してくれるなら、食料確保に協力してもらってる」
「食料確保?」
「ああ、見に行ってみるか? 確か今日やる予定だ」
 僕は頷いた。この船で発情期のΩがどのように使われるのか見たかった。

 海翔は、それなら、漁用の小さな船に乗るというから、僕は日焼けをしないようにフード付きの上着を頭からかぶることにした。
 賊の船らしく船の下層には小型の船やボートがいつでも海へ出られるように用意されていた。
 そのうちの一艘に乗り込む、船には屈強な体つきをした男女が複数人乗り込んでいた。皆自分の身長の二倍はありそうな槍を持っている。海翔の姿を認めると、皆が笑顔を浮かべて、近寄ってきた。
「お、船長、船長も久しぶりに、狩りに参加されるんですか?」
「花嫁さんの前で良いところ見せたいってところですかぁ? 妬けちゃいますぅ」
 平均的な身長の僕よりひとまわりふたまわり大きい筋肉質な女性にからかわれ、海翔は照れたように日に焼けた頬のほんのり赤くして頭をかいた。
「いいや、まだ、こいつはこの船になれていないからな、一人でいたら不安になってしまうかもしれない。俺がそばにいてやらないとな」
「僕はそんな子供じゃありません。行ってきたいのであれば行ってきていただいて構いませんよ」
「ははは、すまない。俺がお前のそばにいたいからここにいさせてくれ」
「……」
 ひゅひゅーと口笛をたてたり、お熱いねぇ、という言葉で皆にはやしたてられ、僕は自分の顔が熱くなるのを感じた。これは、強い日差しのせいだ。断じて恥ずかしがっているわけではない。
 漁船で海に出て、本船から十分に距離が開いたことを確認すると、リーダー格と思われる男が槍を掲げて合図をした。 
「良し、ニオイを出してくれ!」
 船の後方に立つ人々が瓶の中に入った液体を海に向かって撒き始める。
「あの瓶の中の液体はなんなんですか?」
「Ωが発情期に出すフェロモンを利用して作った誘い薬だ。足下に気をつけていろよ。ああ、もう来たようだ……」
 海翔は僕の腰を掴むと自分に引き寄せる。僕が嫌がる間もなく、足下が揺れた。漁船が大きく揺れている。
「さ、誘い薬って、まさか……!?」
「そうだ。海棲生物を誘き出す薬だ」
 にこりと笑っている男の顔面を僕はおもいっきりひったたいた。
 この星が海で包まれてから、海の生物は皆広大になった環境に合わせるようにして巨大化した。陸地があったとき人間よりも大きな魚は珍しかったらしいが、今、魚は人間よりも大きく当たり前の存在だ。それらを餌にしている海棲生物は当然それよりも大きく、船ほどの大きさのあるものがほとんどだ。
「巨大イカは来ないで欲しいなぁ」
「そうか? あれはあれで燃料になるから良いんじゃなイカ?」
「ちょっとぉ、くだらないギャグ言わないでぇ」
「ダメ? 面白くなかった?」
「「全然」」
 こいつら、頭おかしいんじゃないか? 巨大な海棲生物に襲われれば、こんな小さな船はひとたまりもない。それなのに目の前の奴らはそんなことを考えもしないのか笑っている。波間を見つめていたリーダー格の男が口端を引き上げ嬉しそうに叫ぶ。
「おう! こいつは運が良い! 鮫鯨だ!」
「さ、鮫鯨!?」
 鮫鯨とは名前の通り、鯨ほどの大きさの鮫だ。肉食で海棲生物の中でも非常に凶暴なそれは、時に船を襲って人間を狩ることもあるのだ。
 僕が焦ったような声をあげるのとは反対に、海翔は嬉しそうに暢気な笑顔を浮かべた。
「おお、本当に運が良いな、鮫鯨は肉もうまいし、骨は加工できるし、捨てるところがないからな」
「アホなこと言ってる場合ですか!? に、逃げないと……!」
「逃げる? 何故だ?」
「何故って、鮫鯨ですよ? こんな船ひとたまりも……!」
 僕が喋っている途中、体が大きく後ろへ引っ張られる。船が急発進したのだ。
「ちょっと揺れますよ~」
 もう揺れてる! というか、傾いてる! なんで床が斜めになってるのに、こいつら皆平気な顔をして立っていられるんだ! どんな体幹してるんだ!
 僕は床を滑り落ちていきそうになったが、海翔が体を抱えてくれていたおかげでそうならずにすんだ。
 船が先ほど止まっていた場所に巨大な水しぶきの柱が上がる。その柱の中心に巨大な黒い影が見えた。口を閉じた瞬間、からぶりに終わったのを悟った鮫鯨は巨大な目玉をぎょろりと動かし、僕らをにらみつけたような気がした。背筋に悪寒が走り、固まった僕の顔にびしゃびしゃと冷たい水が降りかかった。  
「でっかいなぁ……船長、一番槍どうぞ!」
 現れた鮫鯨を見たリーダー格の男は、ささと海翔へ自分の槍を手渡した。海翔はそれを苦笑しながら受け取る。
「おいおい、まぁ良いか……すまない、蒼ちょっと行ってくるから、一人でがんばってくれ」
「え、あ、貴方、ま、まさか……!?」
「次、きます! 前進しますよ!」
「おう! 行け!」
 海翔は声をあげると同時に僕の目の前から姿を消した。
 船が下へ沈み込むような感覚の後に床が斜めになった瞬間、四つん這いで空を見上げるような体制になった僕の視界に、槍を持った海翔とその体を飲み込もうと大きな口を開いた鮫鯨の姿が写った。
「か、海翔!」
「せああああっ!」
 気合いの声を上げながら海翔は前進を反らせ、前進のバネを使って体を折り曲げるようにして槍を振り放った。
 放たれた槍は鮫鯨の頭に突き刺さる。その直後に槍の刺さった部分が爆発をした。
 ドウウウゥン! と音を立てて鮫鯨の頭部に赤い花火が咲いた。
 鮫鯨は体を一度大きくうねらせた後、力なくその体を海面に横たえた。
「え、え、ええええええ!?」
「うわあ、一撃か、やっぱ船長はすごいなぁ」
 鮫鯨をしとめたというのに、船員たちは特に興奮する様子もなく、暢気に関心した様子だった。
 こいつら、アレに慣れてやがる。鮫鯨を爆弾を使ったとはいえ一撃で倒すことを、すごいという言葉で片づけないで欲しい。こんなこと出来るのは化け物だ。
 まぁ、そうでもないと僕の城が沈められるなんてことありえないか。
 あのときのことを思いだし、僕は胃の奥が重くなるような痛みに顔をしかめた。 
 海翔がしとめた鮫くじらは本船に回収された後、船員総出で解体された。
 皆笑顔で、鮫鯨を誘き出す薬を作るのに協力したΩに感謝する言葉を言っているのを僕は確かに聞いた。
 この船は本当に、Ωが船の一員として、人間として受け入れられている。
 その事実に僕の胸は締め付けられるように痛んだ。
 だって、もし、僕がこの船の一員だったらなら、あの子は、僕は死なずに、幸せに暮らせていたかもしれない。そんな虚しいことを考えずにはいられなかったからだ。

 だめだ。この船には、もうこれ以上いられない。ここにいたら、僕はαを許してしまうかもしれない。そうしたら、僕はまた蒼を殺してしまうことになるのだ。

 鮫くじらづくしの夕飯をとった後、僕は海翔と共に船長室で食後のお茶を飲んでいた。
「一日見て回ったが、この船はどうだった?」
「……すごく、驚きました。Ωが閉じこめられずに船を自由に歩き回って他の人間と同じように暮らしているなんて、信じられませんでした」  
「……この船は、もともとそうだったんだ。ここは、俺が産まれ幼い頃を過ごした城だった……」
 海翔は僕を見つめながら、遠くを見るような瞳をしていた。その表情を見て、僕の胸は痛んだ。
「……賊に沈められたのですか?」
「いや、違う、城だ。同じ城に沈められた」
 海翔は言ってから大きく息を吐き出した。少ししか一緒に過ごしていないが僕には彼が怒りを必死で押し殺そうとしているのが分かった。
「他の城の人間がこの城に麻薬を流行らせたんだ。ウミヘビの毒で作った麻薬だった。上層から下層まで、大人はみんな薬にはまって、相手の城の言うままになっていった。金も人も麻薬ほしさに売り払って、最後には船も明け渡した」
 その人の中には彼自身も含まれていたのだ。溺れたような苦しげな表情でまた大きく息を吐き出すと、話を続けた。
「俺は麻薬を決して許さない。麻薬を作り出し、売り払うものは俺がこの手で止める。罰する」

 ああ、そうか、だから、彼は、海翔は、僕の船を襲ったのか。
 僕は海翔の言葉で、自分の船が襲われた理由を理解した。
「蒼、お前は、何故他の船のΩの状態を知っている? 船の中で軟禁されていたと言うにしては、お前は他の船の事情に詳しすぎる。漁船に乗ったときもそうだ。お前は何故フード付きの上着を被ったんだ? それは、お前が太陽の下に長時間いると、日焼けをすることを知っていたからだ」
「……」
「お前の本当のあの城の役割はなんだ?」
「僕はあの城の城主ですよ。僕が城主であるということにいつ気づいたのですか?」
「ただ閉じこめられていたΩにしては外の世界を知っていると思っていた。お前が城主だと確信をしたのは、この眼鏡を航成が見つけてきたときだ」
 海翔は机の棚から眼鏡を取り出した。眼鏡の耳かけ部分のカバーを引き抜くと、先端の部分が鍵状になっている。僕の城の船のマスターキーだ。この鍵がなければ、船を操作することはできない。僕が城の城主であるなによりの証だ。
「お前が……そうだったんだな?」
 そう問いかけてくる海翔の声は震えていた。
 彼の僕が城主であることを指しているのではない。僕がΩのフェロモンを使って麻薬を作り、他の船へ売りつけていることを指しているのだ。
 Ωのフェロモンは様々な薬の材料になる。その中でも、フェロモンの成分を他の薬品と混ぜ合わせて作りだされた麻薬は原価が安く、依存性が高い。売る側にするとこれ以上ないほど魅力的な商品なのだ。
 この商品によって、僕は大金を手に入れ、そしてΩでありながら、城の城主となることができた。
「だと、したら、どうしますか? 僕を殺しますか?」
 このとき、僕は海翔になら殺されても良いかもしれないと考えていた。Ωを人間として扱ってくれるαに、この男に同じ人間として殺されれば、僕も蒼も人間として死ねるのだ。
 しかし、そんな僕の希望を海翔は叶えてはくれなかった。
「いや、お前を殺すなどありえない。お前には罰を与える。俺が、お前が最も嫌がることをする」
腕を引っ張られ、僕はベッドに放り投げられた。手に持っていたカップが床に落ちて、中に注がれていた紅茶が飛び散った。
「ま、まさか、や、やめろ!」
 身をよじってベッドの上から逃げようとする間もなく、海翔は僕の体を跨ぐようにして乗りかかってきた。ベッドに体が沈み込む、それだけで僕は身動きがとれなくなった。
 僕が嫌がることを海翔は知っている。子づくりだ。恐怖に体は冷たく感じるのに、汗が止まらない。 
「い、いやだぁ! 離せ! 離せぇええっ! ……ん、っふぅ、んん!」
 拒絶の言葉を吐く口に指が強引にねじ込まれて無理矢理開かれる。
 海翔がそれに唇を合わせてくる。舌を僕の舌に絡めてくる。
 なんだ。結局お前だって、他のαと同じなんじゃないか! 
 僕を、蒼を汚すつもりだったんだじゃないか! 
 罰だと言うなら、殴れば良いじゃないか! 
 どうしてこんなことをするんだ。僕が嫌がるから? 
 悪いことをしたから? 
 なにが悪いことなものか、弱い者が自分よりも強いものを屈服させ、従わせるには手段なんて選んでいられない。
 僕が、僕らが殴られて、力で無理矢理服従させれられるのは良くて、どうして僕が知恵を振り絞って相手を屈服させるのはいけないことなんだ!
 怒りを込めて海翔を睨みつける。今にも泣きそうな顔をしている男の顔が僕を見つめていた。蒼と同じ、青い澄んだ瞳が悲しみに光を揺らしていた。それを前にして、僕の胸に鋭い痛みが走った。瞳の奥が熱くなっていく。
「人から傷つけられることを怖れるなら、人を傷つけるような真似をするべきではなかった。何故だ、蒼、どうして、お前が、こんなことを……」
 海翔の瞳から涙がこぼれ落ちて、僕の頬を打つ。それで僕は海翔が僕のしたことを、僕に罰を与えようとしていることを本当に悲しんで、苦しんでいるのが分かった。胸が暖かくなるのと同時に胸の痛みが強くなる。僕の瞳からも涙がこぼれ落ちていった。
「だって、だってこうしないと、Ωの僕がαを屈服させることなんて出来ないじゃないか! 蒼を殺したあいつらを……復讐することなんてできないじゃないか!」
 しゃくりあげながら僕は答えた。こんなの答えになっていない。それでも言わずにいられなかった。
「……蒼はお前の名前ではないのか?」
 海翔に問い返されて、僕は自分が決して言ってはいけないことを言ったことに気づいた。
「!?……違う、違う、違う! 僕は、僕は蒼だ。僕が…!」
「話してくれ、蒼とはいったい誰なんだ? どうして、お前はこんなことをした? αになにをされた?」
 反射的に自分の言葉を否定する僕を落ち着かせるように海翔は僕の体を何かから守るように、優しく抱きしめてきた。それは、記憶の底にある母の抱擁に似ていた。海翔のにおいが、ぬくもりが、僕を蒼ではなく、本当の僕に戻していく。そうなることを何よりも怖れていたのに、僕は肩の荷を下ろすような心地になっていた。
「……話をしたら、蒼を汚さないでくれますか?」
「ああ、誓う」
 僕は海翔の胸に顔を埋めたまま、話だした。
 
 僕は自分と同じΩの母から産まれた。母は僕が産まれた船の城とは違う場所で産まれ、同じ船の人間の手で売られたらしい。
 産まれながらにΩでΩを軟禁する部屋で育ちながらも、僕が部屋の外の世界の知識だけでなく生きる知恵を身につけることができたのは、母が僕にそれを教えてくれたからだ。母は美しく聡明で、そして気高い人だった。船のαはそんな母の気高さを面白がり、母を辱め、おもちゃにした。母は僕にすべての知識を教え終わると力つきたように亡くなった。αに戯れで与えられ続けた薬に母の体は弱りはてていた。母は僕に最後まで守ってやれなくてごめんなさい、と僕に謝り、僕の行く末に幸福を与えてくださいと、神に祈りながら亡くなった。
 僕は母を殺したαたちを喜ばせ、可愛がられるように振る舞い、自分の地位を得ることにした。 産まれてからずっとαに媚びを売るΩたちの成功例と失敗例を見続けてきた僕にとってそれは簡単なことだった。
 いつかΩの部屋を出て、母を売り飛ばした船に復讐し、母を殺したαたちを殺すことが僕の生きる目標だった。そのうちαたちを手玉にとってやろうと、αたちと自分が暮らしている船の城の情報を集めていった。 そうしているうちに、性欲処理の仕事をしている僕にとうとう逃れられないときがきた。妊娠をしたのだ。産まれてきた子は、母と同じ、美しい瞳をもっていた。僕はその子に瞳の色の蒼という名前をつけた。
 蒼と共に暮らす日々は、僕から母の復讐を果たすという意志を忘れさせるほど幸福に満ちたものだった。柔らかであたたかな蒼を腕に抱くと、自然笑みがこぼれ落ちて、気持ちが穏やかになった。日々成長していく姿を見るのが楽しみで、自分に笑いかける笑顔が愛しくて仕方がなかった。この子の幸せのためならなんでも出来ると思った。
 しかし、そんな幸福な時間は一年もたたないうちに奪われてしまった。蒼がαに殺されたのだ。
 蒼は僕がαの相手をしている間、目を離している間に城主の息子に弄ばれて殺された。
 まだ第二の性が判明していない子供を殺すことは大罪だ。城主の息子も例外ではなく城を追放され、僕はΩの中でも確固たる地位を与えられた。
 蒼の命と引き替えに。  
 蒼、蒼、蒼! どうして何の罪もない蒼が殺されなければならないんだ!
 憎かった。蒼を殺したαが、蒼を守ることのできなかった僕自身が! 
 僕は僕を殺して蒼として生きること決めた。そして、αどもをΩである蒼の前にひざまづかせ、死ぬよりも酷いめにあわせてやろうと誓った。蒼をもう絶対に汚させない。死なせない!
 僕は城主を籠絡し、Ωのフェロモンで作る麻薬を作りだし、それを他の船に売りつけることによって城に利益をもたらし、城での地位を上げ、城主となった。

「……だから、僕は蒼でいなければならないんです……蒼を殺した男を見つけだして、復讐を果たすそのときまで……」
「お前の気持ちはよく分かった。話をしてくれてありがとう。そして、すまなかった。以前にお前に言ったことを謝らせてくれ、いや、違うな、お前ではなく、蒼に」
「……」
 海翔の言葉にまた涙があふれ出す。僕のやっていることはただの感傷で、ただの自己満足だと僕自身分かっている。けれどそれを否定せずに受け入れてくれる海翔の気持ちが嬉しかった。人と抱き合っていることに喜びを覚えるなんて、母と蒼以外に感じたのは初めてだった。
「お前の本当の名前を教えてくれないか?」
 海翔の言葉に、ひくりと僕の体が震える。海翔が僕の名前を呼んでくれたら、どれだけ幸せだろうか、でも、僕は、今は蒼だ。蒼として生きることを決めたのだ。それでも、たとえ名前を呼ばれなくても、海翔にだけは、僕の本当の名前を知っていて欲しい。そう迷う僕に、海翔は更に言葉を重ねてきた。
「……俺と共にある間は、蒼ではなく、お前自身でいてくれ」
 ぼくの迷いを見抜いたような、僕を誘惑する言葉に、僕は全身が痺れるような喜びを感じてしまった。
 
 その瞬間、僕は血の気のひくような恐怖を感じた。僕がもとの僕に戻るということは、また蒼を殺してしまうことになるからだ。

「あ……やめて……」
「お前が好きなんだ」
「やめて……! やめてくれ、貴方にそんなことを言われたら、僕はまた蒼を殺してしまう」
 その言葉は、僕の海翔に対する気持ちを認めるものだった。僕には、それが精一杯だった。
「……わかった」
 海翔は僕をいっそう強く抱きしめた。泣いているような、か細く、震えた声をあげて。
「お前を蒼として生きていくことを認めよう。もう、本当のお前としてとなんて言わない。お前の本当の名前を教えてくれ、俺が、お前の墓標になろう。俺はお前を永遠に抱いていく」
 それは酷く残酷で、そして、無意味なことのように思えた。海翔は僕の意志を優先させ、決して僕の名前を呼ぶことはないだろう。僕の心がいくら望んだとしても、彼は僕が本当の僕として接して、そして名前を呼んで欲しいと言葉にするまで、僕は海翔のそばにいる限り、蒼を殺して自分の名前を呼んで欲しいと望む自分の心と葛藤しなければならないのだ。
 これも蒼を死なせてしまった罰なのだろうか、
 それであれば、墓標に名前を刻むのであれば、蒼も許してくれるだろう。 
「……僕の、本当の名前は……」
 海翔の紅と蒼い瞳が僕の顔を写す、その瞳に僕の名前が刻まれていく。
 紅い瞳が義眼だと気づいたのは、そのときだった。

 次の日の夜、僕は海翔のお茶に睡眠薬を盛った。そして、迎えにきた仲間と共に海翔の船から逃げ出した。
 あの蒼海の墓標を二度と見ることのないように、と、僕は果てしなく続く水平線から覗く夜明けの光に祈っていた。


 俺が産まれ育った城で、奴隷として他の船に売られる前のことだ。
 他の船と通じた裏切り者によって船の大人は、ほとんどが麻薬に犯されていた。
 城主であった父親と母親も例外ではななかった。かつては、聡明で気高かった父と母は、ある日、一度に大量の薬を投与され、正気を奪われ、口からだらしなく涎を垂れ流し、うなり声をあげて這いずることしかできなくなった。
 そんな両親が船の舵取りをすることはできないだろうと、裏切りものたちは船の支配権を俺から奪い、船をのっとった。俺は妊娠をした叔母とともに城の端においやられて暮らしていた。
 叔母は船の中でも薬に犯されていない貴重な大人の一人だった。
 叔母の旦那さんは、俺の両親が廃人になる数日前に船の甲板に首だけの状態になったいるのを発見された。
 俺の両親と共に船に麻薬を流している裏切り者を探しだそうとしていたので、奴らに見せしめとして殺されたのだろう。 
 俺が航成たち他の子供たちと共に奴隷として売られることが決まった日、叔母は膨らんだ自分の腹がつぶれてしまうのではないかと心配するほど俺を抱きしめ、そして、なにもできなくてごめんなさいと、泣いて謝っていた。
 叔母のせいではない。と、俺は叔母を慰めた。いつか、航成たちと共に、この城に、この船に戻り、奴らに復讐し、船を取り戻し、叔母とお腹の中にいる子を助け出すと誓った。
 俺たちは奴隷として売られた船で手柄をたて、地位を上げて、奴隷の身分から抜け出し、力を蓄えると、生まれ育った船を取り戻した。
 そこに叔母はいなかった。奴隷として売られてしまった後だったのだ。
 俺は叔母を探しながら、航成たちと共に、俺たちの船を沈めた麻薬を他の船に売りつける船を沈めていった。
 そして、Ωのフェロモンを利用して作られるおぞましい麻薬を作る船を見つけた俺たちは、麻薬の製造をやめさせるために、その船を襲撃した。そこで俺は、叔母の忘れ形見を見つけた。
 叔母と同じ白銀の髪、蒼海を思わせる瞳。しかし、それは悲しいほどに、よどんでしまっていた。
 航成は彼を疑っていたが、俺はそうは思いたくなかった。俺は彼を信じていた。彼をそばにおいておこうと思って花嫁にしようと決めた。
 彼は船の中のΩたちのあり方を見聞きしているとき、見ているのが切なくなるほどに辛そうな、嬉しそうな顔をしていた。今まで彼がΩとして酷い扱いを受けてきたことは想像にかたくなく、彼の話を聞いて、俺は助けることができなかった叔母の分まで絶対に彼を幸せにしようと心に誓ったのだ。

「だから、また、捕まえてやるからな、また会おう! 蒼!」
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