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1.元聖女は冒険者になりました。
第12話
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「あなたも食べてください」
ステファンは縛られたままのおじさんを連れてくると、縄をほどいてあげてお椀を差し出した。
周囲をきょろきょろ見回すおじさんに、ライガがぐるぐる唸って牙を見せる。
「……頂く」
おじさんはスプーンですくうとそれを食べた。
それから「はぁ」とため息をついて、私たちに頭を下げた。
「悪かった。まさか火竜が卵を追いかけてくるなんて私も思わなかったんだ」
「――マルコフ王国で売るつもりだったんですね? 売り先は誰ですか?」
ステファンは柔らかい物腰で聞いた。
おじさんは黙り込む。
「――それを言ってもらえれば、処分は軽くなりますよ。通商手形の制限はしょうがないでしょうが――しばらくギルドのお手伝いしてもらえればそれで済むかもしれません」
「……すまないが、それは言えない」
おじさんは黙り込んだ。
しーんとした空気が流れる。
今聞いたらいけない感じなのはわかる、わかるけど、気になる……。
私は恐る恐る聞いた。
「竜の卵ってそんなに売ったらダメなんですか」
「ダメに決まってんだろ」
ライガががうっと吠えた。それからおじさんを見ながら脅すように言う。
「火竜の卵の違法売買なんかしたら、魔術師ギルドに引き渡されて魔法の実験台になっても文句言えないぜ」
何で?
私は首を傾げる。
「レイラ、竜は卵から育てるとね、人の言うことをよく聞くようになって乗れるんだよ」
ステファンの言葉に、私はわくわくして「わぁ」と声を出した。
乗れるの? 竜に? それってとっても素敵じゃないですか!
「でも、あの火炎だから――あんなのに乗って武装したら危険だろう? だから卵を欲しがる人間は多いんだけど、魔術師ギルドで許可なしにできないように規制してるんだ。魔術師ギルドから違反者がいたら捕まえてくれって依頼が冒険者ギルドに来ててね。僕たちは冒険者だから、違反者を見つけたら引き渡さないといけない」
「でも」と付け加えて、ステファンはおじさんを見た。
「取引相手を教えてくれたら、あなたを魔術師ギルドに引き渡さないように力になれると思いますが、どうですか?」
「――――」
おじさんは黙り込んでしまった。
私は恐る恐る聞く。
「……魔術師ギルドに引き渡されたら、本当に魔法の実験台に?」
「ああ、戻ってきたやつ見たことないからな」
ライガは面白そうにおじさんに向かって言う。
「魔術師は変なやつらばっかだからな。何されてんだろうなぁ」
しーん
空気が凍った。
ステファンはおじさんの肩を叩いて、優し気な口調で言った。
「明日の夕方までにはマルコフ王国の冒険者ギルドに着けるでしょう。よく考えておいてくださいね」
***
「こんなに、お腹いっぱいになったのは初めてです……」
お腹を抱えながら、私はつぶやいた。
「このくらいでこんなに感動していたら、街に着いたら大変だね」
ステファンがデザートにと果物の皮を剥きながら笑った。
「街……、街にはもっと美味しいものが?」
二人は顔を見合わせる。
「マルコフ王国の王都には美味しい料理屋がいくつかあるよ。なあ、ライガ」
「ああ、久しぶりにあそこの焼肉が食いてぇなぁ」
「お前は肉ばっかりだな……」
私はふふっと笑った。と同時に涙腺が急に潤むのを感じた。
「うぅぅ」
くつろいで地面に横になっていたライガが慌てて起き上がると、おろおろしだす。
「今度は、今度はなんだ、どうした!?」
「人と……人と食べると食事ってこんな楽しいんですね……」
今まで誰かとこんな火を囲んで食事なんてしたことなかった。
聖女の私の個室には、夜が明ける前と沈んだ後にシスターが食事を置いて行ってくれる。
それを窓から見える外の壁を見ながら1人で食べてた。
毎日毎日……。
「出てきて良かったね」
今度はステファンがぽんぽんと肩を叩いてくれた。
その夜は二人がテントを張ってくれて、ライガに「お前が使え」とそこに押し込まれたので、言葉に甘えてそのまま横になった。
夢も見ずにぐっすり眠れた。
ステファンは縛られたままのおじさんを連れてくると、縄をほどいてあげてお椀を差し出した。
周囲をきょろきょろ見回すおじさんに、ライガがぐるぐる唸って牙を見せる。
「……頂く」
おじさんはスプーンですくうとそれを食べた。
それから「はぁ」とため息をついて、私たちに頭を下げた。
「悪かった。まさか火竜が卵を追いかけてくるなんて私も思わなかったんだ」
「――マルコフ王国で売るつもりだったんですね? 売り先は誰ですか?」
ステファンは柔らかい物腰で聞いた。
おじさんは黙り込む。
「――それを言ってもらえれば、処分は軽くなりますよ。通商手形の制限はしょうがないでしょうが――しばらくギルドのお手伝いしてもらえればそれで済むかもしれません」
「……すまないが、それは言えない」
おじさんは黙り込んだ。
しーんとした空気が流れる。
今聞いたらいけない感じなのはわかる、わかるけど、気になる……。
私は恐る恐る聞いた。
「竜の卵ってそんなに売ったらダメなんですか」
「ダメに決まってんだろ」
ライガががうっと吠えた。それからおじさんを見ながら脅すように言う。
「火竜の卵の違法売買なんかしたら、魔術師ギルドに引き渡されて魔法の実験台になっても文句言えないぜ」
何で?
私は首を傾げる。
「レイラ、竜は卵から育てるとね、人の言うことをよく聞くようになって乗れるんだよ」
ステファンの言葉に、私はわくわくして「わぁ」と声を出した。
乗れるの? 竜に? それってとっても素敵じゃないですか!
「でも、あの火炎だから――あんなのに乗って武装したら危険だろう? だから卵を欲しがる人間は多いんだけど、魔術師ギルドで許可なしにできないように規制してるんだ。魔術師ギルドから違反者がいたら捕まえてくれって依頼が冒険者ギルドに来ててね。僕たちは冒険者だから、違反者を見つけたら引き渡さないといけない」
「でも」と付け加えて、ステファンはおじさんを見た。
「取引相手を教えてくれたら、あなたを魔術師ギルドに引き渡さないように力になれると思いますが、どうですか?」
「――――」
おじさんは黙り込んでしまった。
私は恐る恐る聞く。
「……魔術師ギルドに引き渡されたら、本当に魔法の実験台に?」
「ああ、戻ってきたやつ見たことないからな」
ライガは面白そうにおじさんに向かって言う。
「魔術師は変なやつらばっかだからな。何されてんだろうなぁ」
しーん
空気が凍った。
ステファンはおじさんの肩を叩いて、優し気な口調で言った。
「明日の夕方までにはマルコフ王国の冒険者ギルドに着けるでしょう。よく考えておいてくださいね」
***
「こんなに、お腹いっぱいになったのは初めてです……」
お腹を抱えながら、私はつぶやいた。
「このくらいでこんなに感動していたら、街に着いたら大変だね」
ステファンがデザートにと果物の皮を剥きながら笑った。
「街……、街にはもっと美味しいものが?」
二人は顔を見合わせる。
「マルコフ王国の王都には美味しい料理屋がいくつかあるよ。なあ、ライガ」
「ああ、久しぶりにあそこの焼肉が食いてぇなぁ」
「お前は肉ばっかりだな……」
私はふふっと笑った。と同時に涙腺が急に潤むのを感じた。
「うぅぅ」
くつろいで地面に横になっていたライガが慌てて起き上がると、おろおろしだす。
「今度は、今度はなんだ、どうした!?」
「人と……人と食べると食事ってこんな楽しいんですね……」
今まで誰かとこんな火を囲んで食事なんてしたことなかった。
聖女の私の個室には、夜が明ける前と沈んだ後にシスターが食事を置いて行ってくれる。
それを窓から見える外の壁を見ながら1人で食べてた。
毎日毎日……。
「出てきて良かったね」
今度はステファンがぽんぽんと肩を叩いてくれた。
その夜は二人がテントを張ってくれて、ライガに「お前が使え」とそこに押し込まれたので、言葉に甘えてそのまま横になった。
夢も見ずにぐっすり眠れた。
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