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2.元聖女は冒険者としての生活を始めました。
第35話
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「テムズさんの件だよね……」
私がそう聞くと、ステファンは「そうそう」とうなずいてクロのたてがみを撫でた。
「それで、チャイとクロは明日僕らと一緒に連れて行くから、よろしくね」
「……私はお留守番かぁ……」
ついうっかり思ったことがそのままポロリと口から出てしまった。
ステファンは「そんな顔しないで」と困ったように笑った。
「どんな相手かもよくわからないし、何があるかわからないしね。所長直々に動く案件だから、他の人にも言わないでね」
「……そうですよね」
「まずは、今度、魔物退治から一緒に行こうよ」
「はい!」
私は新米だものね。
ちょっとした寂しさを感じつつ、私は頷いた。
***
翌朝、ステファンとライガは珍しく、朝早くからギルドへ行ってしまった。
朝ごはんだけは一緒に食べられたけど。
お昼は宿屋の食堂で一人でお肉のトマト煮込みを食べた。
「レイラちゃん? 今日は二人は?」
料理を持ってきてくれた店員さんが私の前の空っぽの椅子を見て聞いた。
「――仕事だそうです」
はぁとため息をつく。一人で食べるご飯は美味しくない。
「――そういう、怪しい取引って、夜とかだよね、普通」
私はふと思いついて、呟いた。
朝から行ってたのはいろいろ準備があるからみたいだし。
「街はずれの森って言ってたっけ、テムズさん」
この街から隣の村に向かう林道が街はずれにあったから、きっとそのことだと思う。
馬に乗る練習をしていた空き地をずっと行ったところだ。
――行ってみようかなぁ。
いけないことだとは思いつつも、いったん頭の片隅にその考えが浮かぶと、離れなくなった。
――また火竜みたいなのが出たら、私が祈れば大人しくなるし。
――こっそり後ろから、ついていったら?
もっとみんなに『役に立つ』って思われたい。
私は立ち上がると、部屋で動きやすい服に着替えて、街外れに向かった。
***
林道の近くで、茂みに潜むこと1時間。空が夕焼けになりかけたころ、私はこっちに向かって歩いてくる見慣れた人影を発見した。
クロ、それからテムズさん!
馬にそれらしい荷物を積んで、引っ張って歩いてこちらに向かってくる。
でも、周囲にはステファンやライガの姿はなかった。
……どこにいるのかな。
そう思った瞬間、私は服の襟首を掴まれて宙づりにされていた。
背中にふさふさした質感があった。
これは……。
「ライガ……」
振り返ると、ライガが私を睨んで何か言った。
「*********!」
「……え、なに?」
口はぱくぱくしてるんだけど、何を言ってるのかわからない。
私が持ち上げられたまま首を傾げていると、近くで甲高い子どもの騒ぎ声が響いた。
「痛いって、離せ、クソババア!!」
えっ、なに?
そっちを見ると、所長さん――ナターシャさんに私みたいに襟首を掴まれて持ち上げられた男の子がいた。
「******!」
ナターシャさんもその子に何か言っているけど、何が何だかわからない。
とんとんっと誰かが私の肩をたたく。――ステファンだ。
ステファンは、自分の口を指差すと、指を交差させて×印を作った。
『口が』『だめ』? あっ、しゃべれないってこと?
それから、また私の肩をたたいて、ナターシャさんに捕まる男の子を指差した。
いつの間にかナターシャさんのところには杖を握ったリルさんがいて、リルさんはその杖の先で男の子の頭にちょんと触れた。
「何言ってんのか聞こえないんだよっ、はな**********!」
途中で男の子の声がなくなる。
……これ、魔法だ……。
ステファンはささっと音もなくその子のところに近づくと、しゅるっとロープを出して手を縛って近くの木につないだ。
「***、******」
ステファンが私を見てから、男の子を指差し、頭をなでる仕草をしながら口を動かした。
れいらこのこみてて……レイラ、この子見てて!
私は「わかりました」とうなずいた。
「****」
後ろで狼が大きくため息をつくのがわかった。
ライガは私を下に下ろすと、「じゃあな」と口を動かし、手を振って森の中に消えて行った。
「……えー……」
周りを見回すと、全員いなくなっている。
残るのは、口をぱくぱくさせながら木に縛られて暴れている男の子のみ。
私がそう聞くと、ステファンは「そうそう」とうなずいてクロのたてがみを撫でた。
「それで、チャイとクロは明日僕らと一緒に連れて行くから、よろしくね」
「……私はお留守番かぁ……」
ついうっかり思ったことがそのままポロリと口から出てしまった。
ステファンは「そんな顔しないで」と困ったように笑った。
「どんな相手かもよくわからないし、何があるかわからないしね。所長直々に動く案件だから、他の人にも言わないでね」
「……そうですよね」
「まずは、今度、魔物退治から一緒に行こうよ」
「はい!」
私は新米だものね。
ちょっとした寂しさを感じつつ、私は頷いた。
***
翌朝、ステファンとライガは珍しく、朝早くからギルドへ行ってしまった。
朝ごはんだけは一緒に食べられたけど。
お昼は宿屋の食堂で一人でお肉のトマト煮込みを食べた。
「レイラちゃん? 今日は二人は?」
料理を持ってきてくれた店員さんが私の前の空っぽの椅子を見て聞いた。
「――仕事だそうです」
はぁとため息をつく。一人で食べるご飯は美味しくない。
「――そういう、怪しい取引って、夜とかだよね、普通」
私はふと思いついて、呟いた。
朝から行ってたのはいろいろ準備があるからみたいだし。
「街はずれの森って言ってたっけ、テムズさん」
この街から隣の村に向かう林道が街はずれにあったから、きっとそのことだと思う。
馬に乗る練習をしていた空き地をずっと行ったところだ。
――行ってみようかなぁ。
いけないことだとは思いつつも、いったん頭の片隅にその考えが浮かぶと、離れなくなった。
――また火竜みたいなのが出たら、私が祈れば大人しくなるし。
――こっそり後ろから、ついていったら?
もっとみんなに『役に立つ』って思われたい。
私は立ち上がると、部屋で動きやすい服に着替えて、街外れに向かった。
***
林道の近くで、茂みに潜むこと1時間。空が夕焼けになりかけたころ、私はこっちに向かって歩いてくる見慣れた人影を発見した。
クロ、それからテムズさん!
馬にそれらしい荷物を積んで、引っ張って歩いてこちらに向かってくる。
でも、周囲にはステファンやライガの姿はなかった。
……どこにいるのかな。
そう思った瞬間、私は服の襟首を掴まれて宙づりにされていた。
背中にふさふさした質感があった。
これは……。
「ライガ……」
振り返ると、ライガが私を睨んで何か言った。
「*********!」
「……え、なに?」
口はぱくぱくしてるんだけど、何を言ってるのかわからない。
私が持ち上げられたまま首を傾げていると、近くで甲高い子どもの騒ぎ声が響いた。
「痛いって、離せ、クソババア!!」
えっ、なに?
そっちを見ると、所長さん――ナターシャさんに私みたいに襟首を掴まれて持ち上げられた男の子がいた。
「******!」
ナターシャさんもその子に何か言っているけど、何が何だかわからない。
とんとんっと誰かが私の肩をたたく。――ステファンだ。
ステファンは、自分の口を指差すと、指を交差させて×印を作った。
『口が』『だめ』? あっ、しゃべれないってこと?
それから、また私の肩をたたいて、ナターシャさんに捕まる男の子を指差した。
いつの間にかナターシャさんのところには杖を握ったリルさんがいて、リルさんはその杖の先で男の子の頭にちょんと触れた。
「何言ってんのか聞こえないんだよっ、はな**********!」
途中で男の子の声がなくなる。
……これ、魔法だ……。
ステファンはささっと音もなくその子のところに近づくと、しゅるっとロープを出して手を縛って近くの木につないだ。
「***、******」
ステファンが私を見てから、男の子を指差し、頭をなでる仕草をしながら口を動かした。
れいらこのこみてて……レイラ、この子見てて!
私は「わかりました」とうなずいた。
「****」
後ろで狼が大きくため息をつくのがわかった。
ライガは私を下に下ろすと、「じゃあな」と口を動かし、手を振って森の中に消えて行った。
「……えー……」
周りを見回すと、全員いなくなっている。
残るのは、口をぱくぱくさせながら木に縛られて暴れている男の子のみ。
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