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2.元聖女は冒険者としての生活を始めました。
第41話(ステファン視点)
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「私は、嘘はついてないですよ! 誰にも、『捕まった』なんて言ってないですし!」
結局取引相手が来なかったので、合流し、僕たちに囲まれたテムズさんは、がたがた震えながら弁解した。
「わかってる。まぁ、でもしばらくはギルドの手伝いでもしてもらうからな」
所長は彼の肩をぽんぽんと叩いて、最後に睨んだ。
――さてと、レイラとノアはどうしてるかな――。ノアの修行先の親方さんに迎えに来てもらえるよう声はかけておいたけど、無事に回収してもらえただろうか。
ノアは所長の一人息子だけど、今回彼女が違法取引の現場を取り押さえに行くのをどこで聞いたのかついてきてしまった。これが初めてじゃなく、前にも何度か似たようなことがあったので、もしやと思って、事前に対策をしておいてよかった。レイラまで来るとは思わなかったけど。
僕たちは林道の方へ戻った。二人の気配はない。
「親方さんが連れて行ってくれたみたいですね」
僕が安心してそう呟くと、所長が大きくため息を吐いた。
「いつも悪いね。あの子のことまで気が回らなくて、助かったよ」
「あら、何か書いてある」
リルが杖の先を光らせて、二人を置いてきたあたりを照らした。
『家帰る ノア レイラ』
僕がノアを縛った木には、そう彫られていた。
「――よし、私たちも帰るか」
それを見て、ほっとしたように呟いた所長はくるりと街の方へ向きを変えて歩き出す。
……ノアと仲良くなったかな。並んだ名前を見て、微笑ましい気持ちになった。
「しかし、ノアは懲りないけど……、レイラもいたのはびっくりしたな」
街用に人間の姿に戻ったライガがシャツを着ながらぼやく。
「自分だけ留守番が寂しかったのかな、あいつ……」
僕はライガの発言に少し驚いた。
こいつがこういう風に他人を気にすることは、今まであまりなかったから。
「でも今回は、特に彼女の力は必要なかったしね。危険な目にあっても大変だから」
レイラの祈りの聖魔法は魔物退治には最適だろうけど、今回みたいな取引現場の取り押さえにはあまり必要ない。それに、彼女をあまり性質の悪い連中の目に触れさせたくない。
ライガは髪を縛りながら「まぁね」と返した。
***
「お帰り! お疲れ様、どうでした?」
帰り道の途中、所長の家でもあるこの街の教会に立ち寄った。
扉を開けると、所長の旦那さんのテオドールさんがぱたぱたと駆けてくる。
「はずれだ。収穫はなかった」
所長は「参った」と手を広げると深いため息をついた。
「それよりバカ息子は?」
テオドールさんは壁際のソファーを顔で示した。ノアがうつ伏せになって寝ている。
「レイラも一緒ですよ」
テオドールさんは続けてそう僕らに言っって、テーブルを指さした。
――レイラが椅子に座ったまま、机に突っ伏して寝ている。
「宿屋に帰ってなかったんですか」
「あなたたちにノアを見ておいてくれと言われたから、帰ってくるまで見ているんだと言っていましたよ」
「……お世話になりました」
僕は頭を下げた。テオドールさんは「こちらこそ、ノアがお世話になって」と笑うと、空のお皿を僕らに見せた。
「それより、皆さん食事まだですよね。食べて行きますか?」
……特定の信仰は持っていないけど、テオドールさんには祈りたくなった。
「食う、食う食う!」
狼の姿になって身を乗り出したライガを後ろに下げて、頭を下げる。
「ありがとうございます」
***
テムズさんを含め僕らは机を囲んでシチューをぱくぱく口に運んだ。
そんな僕らの横で、所長は立ったまま、テオドールさんと話しこんでいた。
「子どもたちは? みんな寝た? 問題ない?」
「特に何もありません。みんないい子でしたよ」
この夫婦は、売られかけたりした獣人の子どもを保護して、引き取り手がない子を何人も育てている。――僕はこの人たちを見てると、本当に頭が下がる思いがする。
結局取引相手が来なかったので、合流し、僕たちに囲まれたテムズさんは、がたがた震えながら弁解した。
「わかってる。まぁ、でもしばらくはギルドの手伝いでもしてもらうからな」
所長は彼の肩をぽんぽんと叩いて、最後に睨んだ。
――さてと、レイラとノアはどうしてるかな――。ノアの修行先の親方さんに迎えに来てもらえるよう声はかけておいたけど、無事に回収してもらえただろうか。
ノアは所長の一人息子だけど、今回彼女が違法取引の現場を取り押さえに行くのをどこで聞いたのかついてきてしまった。これが初めてじゃなく、前にも何度か似たようなことがあったので、もしやと思って、事前に対策をしておいてよかった。レイラまで来るとは思わなかったけど。
僕たちは林道の方へ戻った。二人の気配はない。
「親方さんが連れて行ってくれたみたいですね」
僕が安心してそう呟くと、所長が大きくため息を吐いた。
「いつも悪いね。あの子のことまで気が回らなくて、助かったよ」
「あら、何か書いてある」
リルが杖の先を光らせて、二人を置いてきたあたりを照らした。
『家帰る ノア レイラ』
僕がノアを縛った木には、そう彫られていた。
「――よし、私たちも帰るか」
それを見て、ほっとしたように呟いた所長はくるりと街の方へ向きを変えて歩き出す。
……ノアと仲良くなったかな。並んだ名前を見て、微笑ましい気持ちになった。
「しかし、ノアは懲りないけど……、レイラもいたのはびっくりしたな」
街用に人間の姿に戻ったライガがシャツを着ながらぼやく。
「自分だけ留守番が寂しかったのかな、あいつ……」
僕はライガの発言に少し驚いた。
こいつがこういう風に他人を気にすることは、今まであまりなかったから。
「でも今回は、特に彼女の力は必要なかったしね。危険な目にあっても大変だから」
レイラの祈りの聖魔法は魔物退治には最適だろうけど、今回みたいな取引現場の取り押さえにはあまり必要ない。それに、彼女をあまり性質の悪い連中の目に触れさせたくない。
ライガは髪を縛りながら「まぁね」と返した。
***
「お帰り! お疲れ様、どうでした?」
帰り道の途中、所長の家でもあるこの街の教会に立ち寄った。
扉を開けると、所長の旦那さんのテオドールさんがぱたぱたと駆けてくる。
「はずれだ。収穫はなかった」
所長は「参った」と手を広げると深いため息をついた。
「それよりバカ息子は?」
テオドールさんは壁際のソファーを顔で示した。ノアがうつ伏せになって寝ている。
「レイラも一緒ですよ」
テオドールさんは続けてそう僕らに言っって、テーブルを指さした。
――レイラが椅子に座ったまま、机に突っ伏して寝ている。
「宿屋に帰ってなかったんですか」
「あなたたちにノアを見ておいてくれと言われたから、帰ってくるまで見ているんだと言っていましたよ」
「……お世話になりました」
僕は頭を下げた。テオドールさんは「こちらこそ、ノアがお世話になって」と笑うと、空のお皿を僕らに見せた。
「それより、皆さん食事まだですよね。食べて行きますか?」
……特定の信仰は持っていないけど、テオドールさんには祈りたくなった。
「食う、食う食う!」
狼の姿になって身を乗り出したライガを後ろに下げて、頭を下げる。
「ありがとうございます」
***
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そんな僕らの横で、所長は立ったまま、テオドールさんと話しこんでいた。
「子どもたちは? みんな寝た? 問題ない?」
「特に何もありません。みんないい子でしたよ」
この夫婦は、売られかけたりした獣人の子どもを保護して、引き取り手がない子を何人も育てている。――僕はこの人たちを見てると、本当に頭が下がる思いがする。
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