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3.元聖女は冒険者として仕事をします。
第71話
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教会に戻ると、中で小さい子たちがわぁわぁと食卓を囲んでいた。
ナターシャさんにノアくんのことを告げると、彼女は大きくため息を吐いて耳を掻いた。
「そうか――、親方のところね。ありがとう、うちのことで迷惑かけたね。あの子――何か言ってた?」
「いえ。ちょっと落ち込んでましたけど、『明日から王都に行く』って楽しそうに言ってましたし――、大丈夫だと思いますよ」
「明日の朝、荷物持って行ってやらないとなぁ」
ナターシャさんがちらりと見た方向には大きく膨らんだリュックが置いてあった。ちょっとお出かけって感じの量でもない。
「荷物けっこうあるんですね」
「宮殿の大規模修理で各地から大工が呼ばれてるんだって。数月は帰ってこないと思う。――まぁ、うちを離れて少し頭冷やしてくるといいよ、あいつも」
深いため息をついたナターシャさんに、テオドールさんが声をかける。
「――王都に行くのも反対してましたよね、ナターシャは。心配なのはわかりますけど。ノアだってもう12ですし、そこまで心配しなくてもいいとは、私は思ってますよ」
「わかってるよ……!」
ナターシャさんは頭を抱えて、突っ伏してしまった。
こんなに悩んでいるナターシャさんを見るのは初めてで、私はオロオロしてしまった。
テオドールさんはナターシャさんの肩をたたいてから、私たちを見た。
「あ、そうだ! お魚ありがとうございます。たくさん、助かります。明日、みんなでいただきますね。お礼といってはなんですが、夕食一緒に食べていきますか?」
ステファンと私は顔を見合わせた。
——有難い、ですけど。
「いえ、ライガが待ってると思うので、僕たちは宿屋に帰ります」
ライガ待ってるかな?
ステファンが言うなら、待ってるかな。
それだと、悪いもんね。
「そうですか、ライガにも家の事情に巻き込んで申し訳ないって伝えといてください」
テオドールさんは机に突っ伏したままのナターシャさんにお茶を淹れながら、困り顔で笑った。
***
「ノアくんとナターシャさん、喧嘩大丈夫ですかね……」
「最終的には何とかなるんじゃないかな。あそこの家族は、お互い思いあってるし、言いたいことをずっと黙ってため込むよりも、言い合えるなら――そっちの方がずっと良いよ」
ステファンは考え込むように立ち止まって、それから言いにくそうに呟いた。
「正直言うとね、僕は、レイラ――、ちょっと君のことが怖かったんだ」
「怖――、えぇ……」
突然の発言に私は頭にがんっとショックを受けて立ち止まった。
「それは、やっぱり私が魔族っぽいとか、そういうことだよね……」
「――そう。ごめんね。だって小柄なのにライガと同じくらいパクパク肉食べるし――、君がチャイやクロのことを最初じーっと見てた時は、食べたいとか思ってる……? とか思っちゃったりしたんだ、本当は」
「ひどいですね……、さすがに、私がチャイやクロ食べたいなんて思うわけないじゃないですか……」
私は拳を握った。お肉は好きだけど……、さすがに可愛い動物を食べたいって思ったことはないです……。ステファンにそんな風に思われてたなんて、ショックすぎる。
「そうだよね。ごめんね。勝手にそういう風に考えて」
ステファンはよいしょと中腰になって、ノアくんに話しかけたときみたいに私と目線を合わせた。
「君がサムに背がまだ伸びるかとか、大人っぽくなるかとか相談してたって聞いて、ライガが君に本当のこと伝えた方がいいんじゃないかなって言ったのに、言わない方が良いって言ったし。君は魔族かもって言ったら、そのまま『私、魔族なんです』って色んなところで言って騒ぎになりそうだって思ったから」
「ひどい……。さすがに、言ったらまずいことぐらい自分で何となくわかりますよ!」
私はだんっと地面を蹴った。
でも……あれ? 私、そうだ小人じゃないってことは……、
「私、背――まだ伸びるってこと?」
「うん。どれくらいかかるかはよくわからないけど、きっと、レイラはもっと背が伸びて綺麗になるよ。今で、こんなに可愛いんだから」
私は顔を両手で押さえた。思わず顔が熱くなる。
綺麗になるとか、可愛いとか何でさらっと言うんでしょうね、ステファンは。
さっきまでひどいって思ってたのに、「まぁいいか」って気持ちになるじゃないですか。
「――僕の内心なんかこんな程度だよ。レイラが怒って当然だし、怒られて当然だと思うけど。でも」
ステファンは言葉を強めた。
「僕も、たぶんライガも――レイラがいろんなものに嬉しそうにしたり、喜んでる姿が好きなのは本当だよ。君が何だろうが、これからもそうやって楽しいって思えるように何でもするよ。だから、レイラも――1人で悩んで溜め込まないで、何かあったら僕らに言ってよ」
私はステファンの真剣な眼差しに瞬きを忘れて呟いた。
「――うん、ありがとう」
ステファンはまた立ち上がると、「よし」と言った。
「――ライガが腹空かせてそうだから、戻ろうか」
「もう食べてるんじゃないでしょうか」
ノアくんと話したりしていたら、遅くなっちゃったし。
宿屋につくと、狼姿のライガが食堂に座って、食堂の旦那さんと話しながらお茶をすすっていた。大きい狼がお茶を飲んでる……。
宿屋の人たちは、もうライガに慣れているからか、特に凝視することもないけど、改めて見るとちょっとおもしろい。
私たちを見るとライガは不貞腐れたように言った。
「いつまで魚釣ってんだよ、お前ら。遅すぎるだろ」
「ちょっと、テオドールさんの教会に寄ってた。たくさん釣れたから、お裾分けに行ってたんだ」
「大変でしたよね」
顔を見合わせた私たちにライガが首を傾げた。
「え? 何が?」
「まあ、後で話すよ。お前にも関係あるっちゃ、あるから」
ステファンは厨房にいる宿屋の旦那さんに声をかけた。
「すいません、この魚、調理してもらえますか?」
それから私に耳打ちした。
「ね。待ってただろ」
私たちは、旦那さんが料理してくれた今日釣ったお魚をみんなで美味しく食べた。
ナターシャさんにノアくんのことを告げると、彼女は大きくため息を吐いて耳を掻いた。
「そうか――、親方のところね。ありがとう、うちのことで迷惑かけたね。あの子――何か言ってた?」
「いえ。ちょっと落ち込んでましたけど、『明日から王都に行く』って楽しそうに言ってましたし――、大丈夫だと思いますよ」
「明日の朝、荷物持って行ってやらないとなぁ」
ナターシャさんがちらりと見た方向には大きく膨らんだリュックが置いてあった。ちょっとお出かけって感じの量でもない。
「荷物けっこうあるんですね」
「宮殿の大規模修理で各地から大工が呼ばれてるんだって。数月は帰ってこないと思う。――まぁ、うちを離れて少し頭冷やしてくるといいよ、あいつも」
深いため息をついたナターシャさんに、テオドールさんが声をかける。
「――王都に行くのも反対してましたよね、ナターシャは。心配なのはわかりますけど。ノアだってもう12ですし、そこまで心配しなくてもいいとは、私は思ってますよ」
「わかってるよ……!」
ナターシャさんは頭を抱えて、突っ伏してしまった。
こんなに悩んでいるナターシャさんを見るのは初めてで、私はオロオロしてしまった。
テオドールさんはナターシャさんの肩をたたいてから、私たちを見た。
「あ、そうだ! お魚ありがとうございます。たくさん、助かります。明日、みんなでいただきますね。お礼といってはなんですが、夕食一緒に食べていきますか?」
ステファンと私は顔を見合わせた。
——有難い、ですけど。
「いえ、ライガが待ってると思うので、僕たちは宿屋に帰ります」
ライガ待ってるかな?
ステファンが言うなら、待ってるかな。
それだと、悪いもんね。
「そうですか、ライガにも家の事情に巻き込んで申し訳ないって伝えといてください」
テオドールさんは机に突っ伏したままのナターシャさんにお茶を淹れながら、困り顔で笑った。
***
「ノアくんとナターシャさん、喧嘩大丈夫ですかね……」
「最終的には何とかなるんじゃないかな。あそこの家族は、お互い思いあってるし、言いたいことをずっと黙ってため込むよりも、言い合えるなら――そっちの方がずっと良いよ」
ステファンは考え込むように立ち止まって、それから言いにくそうに呟いた。
「正直言うとね、僕は、レイラ――、ちょっと君のことが怖かったんだ」
「怖――、えぇ……」
突然の発言に私は頭にがんっとショックを受けて立ち止まった。
「それは、やっぱり私が魔族っぽいとか、そういうことだよね……」
「――そう。ごめんね。だって小柄なのにライガと同じくらいパクパク肉食べるし――、君がチャイやクロのことを最初じーっと見てた時は、食べたいとか思ってる……? とか思っちゃったりしたんだ、本当は」
「ひどいですね……、さすがに、私がチャイやクロ食べたいなんて思うわけないじゃないですか……」
私は拳を握った。お肉は好きだけど……、さすがに可愛い動物を食べたいって思ったことはないです……。ステファンにそんな風に思われてたなんて、ショックすぎる。
「そうだよね。ごめんね。勝手にそういう風に考えて」
ステファンはよいしょと中腰になって、ノアくんに話しかけたときみたいに私と目線を合わせた。
「君がサムに背がまだ伸びるかとか、大人っぽくなるかとか相談してたって聞いて、ライガが君に本当のこと伝えた方がいいんじゃないかなって言ったのに、言わない方が良いって言ったし。君は魔族かもって言ったら、そのまま『私、魔族なんです』って色んなところで言って騒ぎになりそうだって思ったから」
「ひどい……。さすがに、言ったらまずいことぐらい自分で何となくわかりますよ!」
私はだんっと地面を蹴った。
でも……あれ? 私、そうだ小人じゃないってことは……、
「私、背――まだ伸びるってこと?」
「うん。どれくらいかかるかはよくわからないけど、きっと、レイラはもっと背が伸びて綺麗になるよ。今で、こんなに可愛いんだから」
私は顔を両手で押さえた。思わず顔が熱くなる。
綺麗になるとか、可愛いとか何でさらっと言うんでしょうね、ステファンは。
さっきまでひどいって思ってたのに、「まぁいいか」って気持ちになるじゃないですか。
「――僕の内心なんかこんな程度だよ。レイラが怒って当然だし、怒られて当然だと思うけど。でも」
ステファンは言葉を強めた。
「僕も、たぶんライガも――レイラがいろんなものに嬉しそうにしたり、喜んでる姿が好きなのは本当だよ。君が何だろうが、これからもそうやって楽しいって思えるように何でもするよ。だから、レイラも――1人で悩んで溜め込まないで、何かあったら僕らに言ってよ」
私はステファンの真剣な眼差しに瞬きを忘れて呟いた。
「――うん、ありがとう」
ステファンはまた立ち上がると、「よし」と言った。
「――ライガが腹空かせてそうだから、戻ろうか」
「もう食べてるんじゃないでしょうか」
ノアくんと話したりしていたら、遅くなっちゃったし。
宿屋につくと、狼姿のライガが食堂に座って、食堂の旦那さんと話しながらお茶をすすっていた。大きい狼がお茶を飲んでる……。
宿屋の人たちは、もうライガに慣れているからか、特に凝視することもないけど、改めて見るとちょっとおもしろい。
私たちを見るとライガは不貞腐れたように言った。
「いつまで魚釣ってんだよ、お前ら。遅すぎるだろ」
「ちょっと、テオドールさんの教会に寄ってた。たくさん釣れたから、お裾分けに行ってたんだ」
「大変でしたよね」
顔を見合わせた私たちにライガが首を傾げた。
「え? 何が?」
「まあ、後で話すよ。お前にも関係あるっちゃ、あるから」
ステファンは厨房にいる宿屋の旦那さんに声をかけた。
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それから私に耳打ちした。
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私たちは、旦那さんが料理してくれた今日釣ったお魚をみんなで美味しく食べた。
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