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3.元聖女は冒険者として仕事をします。
第74話(そのころキアーラ王国南端の村にて)
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キアーラ王国南端の村へ支援兵と共に到着したエイダンは村はずれで酪農を営む農家から『夜間、牛3頭と、物音がして牛舎の様子を見に行った主人がいなくなった』という報告を受け、兵士とともに裏の森を探索していた。小さな足跡と折れた枝の後を追って藪を進むと、微かな牛の鳴き声が聞こえた。
「エイダン様……」
兵士が小声で手招きしたので身をかがめ近づくと、彼が指差す先で牛が3頭、深く掘られた穴の中で寝そべり悲痛な声を上げていた。一頭がよろよろと立ち上がろうとして、よろめき別の牛の上に倒れこむ。逃げられないようにするためか足を折られているようだった――そして、穴の横に無造作に、もはや動かなくなった農民の、骨になった胴体が横たわっている。無残にも服は剥がれ、首から上はなくなっていた。
エイダンは顔をしかめた。
「牛ではなく――人の方を好んで食べるのか?」
牛たちのいる穴の奥には、木の枝を組んで作ったような塊に覆われた斜面があった。
そして、その前を守るように成人男性の膝丈ほどの大きさの、緑色の爬虫類のような肌の人型の二足歩行の生物が立って周囲を警戒していた。
「小鬼――と呼ばれる魔物です。あの覆いの奥に巣を作っているかと……」
「勝手に僕の国に入ってきて、巣を作りやがってっ」
エイダンは叫ぶと剣を抜いてその小鬼向かって駆け出した。「エイダン様!」と慌てて彼を引き留めようとする兵士の手は空気を掴んだ。自分の方へ向かってくる彼に気付いた見張りの小鬼は耳を切り裂くような金切り声を上げた。
「五月蠅い!」
エイダンがそう叫んで剣を振りかぶったとき、がんっと兜越しに頭に衝撃が走った。よろめいてそちらを見ると、斜面の上にいるもう一体の小鬼が拳大の石を投げつけてくるのが見えた。バランスを崩し、尻餅をつくと同時に足に激痛が走る。
「っ、がぁぁぁ」
見張りの小鬼が左足に噛みついていた。足に爪を立てた手でしがみつき、牙を突き立てている。鋭い牙が皮の長靴を突き破って皮膚に刺さった。
「この醜悪な魔物めッ」
エイダンは剣を足に噛みつく小鬼に振り落とし、その首を跳ねた。そのまま勢い余って木の枝の覆いも薙ぎ払う。その後ろには……ただの斜面しかなかった。
(これは……、偽物?)
「エイダン様っ」
草藪からエイダンを救おうと駆け出してくる兵士を、エイダンは大声で制止した。
「来るな!」
上からいくつも投石が飛んでくるのを転がって避け、視線を走らせる。斜面の上には何体かの小鬼と、その後ろに一回り大きな個体がいた。その個体は……、まるでお面のように割った人間の頭蓋骨を被っていた。さらに、他の小鬼は何も身に着けていないのに対し、それは農民の着ていただろう衣服の切れ端を腰に巻いていた。頭蓋骨を身に着けたそれは、何か叫んで手を動かした。それに合わせて周りの小鬼が石を投げる。
(骨を被ったあいつが、指示をしている? 知恵があるのか?)
エイダンは舌打ちすると、一回り大きいその小鬼向かって剣を投げた。投げた剣は真っ直ぐ飛び、指示役の小鬼の胴体に突き刺さる。
「ギィィィィィっ」
奇妙な叫び声を上げて、それは斜面を転がり落ちた。指示役を失った他の小鬼たちは、右往左往しながら四方八方に逃げた。
「斜面右上、5,6匹散ったぞ! 追え!!」
転げ落ちてきたそれの胴体に突き刺さった剣を抜いて、トドメに首をはねながら叫ぶと、兵士たちは武器を手に逃げ惑う小鬼を追った。
「エイダン様……お怪我の処置を今すぐ……」
後ろから恐る恐る顔を出した神官がエイダンの足の傷に回復魔法をかける。エイダンは立ち上がると、先ほど首を飛ばした大きな小鬼を睨んだ。
「こいつだけ、他と違う……。何故だ? 人の頭を食った? 魔物は変化する?」
初めて見るその凶暴な生物にエイダンは困惑した。
「エイダン様……」
兵士が小声で手招きしたので身をかがめ近づくと、彼が指差す先で牛が3頭、深く掘られた穴の中で寝そべり悲痛な声を上げていた。一頭がよろよろと立ち上がろうとして、よろめき別の牛の上に倒れこむ。逃げられないようにするためか足を折られているようだった――そして、穴の横に無造作に、もはや動かなくなった農民の、骨になった胴体が横たわっている。無残にも服は剥がれ、首から上はなくなっていた。
エイダンは顔をしかめた。
「牛ではなく――人の方を好んで食べるのか?」
牛たちのいる穴の奥には、木の枝を組んで作ったような塊に覆われた斜面があった。
そして、その前を守るように成人男性の膝丈ほどの大きさの、緑色の爬虫類のような肌の人型の二足歩行の生物が立って周囲を警戒していた。
「小鬼――と呼ばれる魔物です。あの覆いの奥に巣を作っているかと……」
「勝手に僕の国に入ってきて、巣を作りやがってっ」
エイダンは叫ぶと剣を抜いてその小鬼向かって駆け出した。「エイダン様!」と慌てて彼を引き留めようとする兵士の手は空気を掴んだ。自分の方へ向かってくる彼に気付いた見張りの小鬼は耳を切り裂くような金切り声を上げた。
「五月蠅い!」
エイダンがそう叫んで剣を振りかぶったとき、がんっと兜越しに頭に衝撃が走った。よろめいてそちらを見ると、斜面の上にいるもう一体の小鬼が拳大の石を投げつけてくるのが見えた。バランスを崩し、尻餅をつくと同時に足に激痛が走る。
「っ、がぁぁぁ」
見張りの小鬼が左足に噛みついていた。足に爪を立てた手でしがみつき、牙を突き立てている。鋭い牙が皮の長靴を突き破って皮膚に刺さった。
「この醜悪な魔物めッ」
エイダンは剣を足に噛みつく小鬼に振り落とし、その首を跳ねた。そのまま勢い余って木の枝の覆いも薙ぎ払う。その後ろには……ただの斜面しかなかった。
(これは……、偽物?)
「エイダン様っ」
草藪からエイダンを救おうと駆け出してくる兵士を、エイダンは大声で制止した。
「来るな!」
上からいくつも投石が飛んでくるのを転がって避け、視線を走らせる。斜面の上には何体かの小鬼と、その後ろに一回り大きな個体がいた。その個体は……、まるでお面のように割った人間の頭蓋骨を被っていた。さらに、他の小鬼は何も身に着けていないのに対し、それは農民の着ていただろう衣服の切れ端を腰に巻いていた。頭蓋骨を身に着けたそれは、何か叫んで手を動かした。それに合わせて周りの小鬼が石を投げる。
(骨を被ったあいつが、指示をしている? 知恵があるのか?)
エイダンは舌打ちすると、一回り大きいその小鬼向かって剣を投げた。投げた剣は真っ直ぐ飛び、指示役の小鬼の胴体に突き刺さる。
「ギィィィィィっ」
奇妙な叫び声を上げて、それは斜面を転がり落ちた。指示役を失った他の小鬼たちは、右往左往しながら四方八方に逃げた。
「斜面右上、5,6匹散ったぞ! 追え!!」
転げ落ちてきたそれの胴体に突き刺さった剣を抜いて、トドメに首をはねながら叫ぶと、兵士たちは武器を手に逃げ惑う小鬼を追った。
「エイダン様……お怪我の処置を今すぐ……」
後ろから恐る恐る顔を出した神官がエイダンの足の傷に回復魔法をかける。エイダンは立ち上がると、先ほど首を飛ばした大きな小鬼を睨んだ。
「こいつだけ、他と違う……。何故だ? 人の頭を食った? 魔物は変化する?」
初めて見るその凶暴な生物にエイダンは困惑した。
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