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5.元聖女は自分のことを知る決心をしました。
第119話(ステファン視点)
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僕は頷いた。エイダンはああ見えて、キアーラの元王太子だ。
国外追放の原因は大司教に反発したせいのようだから、大司教がレイヴィスとつながっていたことを公にしてエイダンが国に戻れれば、僕らがキアーラの中に介入する余地はあると思う。
なんだかんだ、エイダンは真面目に国の心配をしているし、今のまま大司教がのさばっているより、あいつが国に戻った方がキアーラもいいんじゃないだろうか。
『自分のことが知りたい』ってキアーラに戻ったレイラを大司教がすぐ手放すとは思えないし、そうすると彼女はしばらくはキアーラにいるだろうから――、その間にレイヴィスを押さえて、魔術師ギルドからキアーラに介入する指示をもらって、エイダンを立ててキアーラに入れば、レイラと話す機会を作れるような気がする。
レイラが知りたいという彼女の出自も大司教がレイヴィスから彼女を買ったとすれば、レイヴィスの方が知っている可能性が高い。
「とにかく、サミュエルさんの話を聞かないとですね」
少し落ち着いた僕は、ナターシャさんとライガに呼びかけた。
***
もう一つの部屋で、リルが水晶に手をかざしている。
『――ナターシャに……ステファンとライガも! この前ぶりじゃん!』
透明な石の向こうでサミュエルさんはぴらぴらと手を振った。ナターシャさんは眉間に皺を寄せたまま聞き返す。
「――連絡くれたってことは、レイヴィスの居場所がわかったってこと?」
『ああ』と水晶の向こうでサミュエルさんが頷く。
『ベルリクがようやく吐いた。今レイヴィスは、国境外の渓谷のあたり根城にしてるそうだよ。こんな近くにいたとはなぁ。――本当に、お手柄だよ、ナターシャ。まさかこんなところから、繋がりのあるやつが見つかるなんて思ってなかった』
「ライガが知り合いだったから、うっかり喋ったんだろ――、運が良かっただけだよ」
確かに、あの闘技会でベルリクがレイヴィスの名前を出さなかったら、そこまで深く尋問はしなかったかもしれない。
ライガは握った拳をもう片方の手のひらにぶつけながら意気込んだ。
「それで、レイヴィスのところにすぐ乗り込むのか?」
サミュエルさんは「その話だ」と笑って言葉を続ける。
『――ベルリクが冒険者ギルド捕まった情報が流れて――、連中は周辺に散って逃げてると思うから……それを探って、捕まえたい』
「おうよ。王都の冒険者ギルドに依頼出して対応させるのか? ――俺たちも参加させてほしいんだけど」
『――そのつもりで連絡したんだよ。特にライガは、本人の顔を知ってるわけだし。ぜひ参加してほしい』
にっと笑ったサミュエルさんにナターシャさんが話を切り出した。
「――サミュエル、連絡もらったついでに、こっちからも報告したいことがある。――ついさっきわかったことなんだけど、レイヴィスとキアーラの大司教が繋がってるかもしれない」
『何だって』とサミュエルさんが大きい声を上げた。
「レイラっていただろ。この前王都に連れて行った子。――あの子、キアーラの神殿から来たんだけど。その子とライガがレイヴィスのところで一緒だった記憶があるって」
『――あの、祈りの力が凄かった子か?』
そう言ってからサミュエルさんは考え込むような顔をした。
『――光神教の神官は――、何故だか、万神教やら他の教会と違って――魔力の高い者が多いんだ。『人間だけ守護する』って排他的な教えなのに信者が多いのは、魔力の強い神官が多くて、祈りの力が強いからと聞く。神官は教会で育てられた孤児が多い。何故、魔力の強い孤児がそんなに集まっているのかと、魔術師ギルドで話題になったことがある』
僕らは顔を見合わせた。
――魔力の強い子どもを、昔から教会で引き取っている?
……それは、あるかもしれないな。
レイラだけを大司教がレイヴィスから買ったとは考えにくい。
もっと――大勢。その中で特に魔力の大きいレイラを手元に置いた?
……いや、今色々考えても仕方ない。
首を振って、水晶玉に呼びかけた。
「とにかく、僕とライガともう一人、これから王都に向かいます。レイヴィスの捜索に参加させてください」
『わかった』とサミュエルさんは通信を切った。
「じゃあ、ちょっと荷物まとめてきます」
僕は走るように冒険者ギルドを出てライガと宿屋に戻ると、昨日荷ほどきせずに放っておいた荷物一式を担いで外に出た。
「――荷物、ほどかなくって良かったな」
「本当に」
ライガとそんな話をしながら、また冒険者ギルドへ戻った。
――そろそろ帰ってくるころかな、あいつが。
ギルドの中で待っていると、しばらくして、目当ての人物が戻って来た。
そいつは僕たちを見つけると得意げに報告してくる。
「ステファン、ライガ! 僕は今日、スライムをこんなに始末してきたよ。見てくれ」
「あなたと、私たちがね!」
背後に呆れ顔のソーニャと困り顔のジャンを引き連れて、エイダンがじゃらりとスライムの核が入った袋を僕の目の前に掲げた。
「すごいな」
僕はそう言いながら袋を彼の手から取ると、ソーニャに渡して、「何だ」という表情の元王子の肩を叩いた。
「エイダン、これから王都に行くぞ」
国外追放の原因は大司教に反発したせいのようだから、大司教がレイヴィスとつながっていたことを公にしてエイダンが国に戻れれば、僕らがキアーラの中に介入する余地はあると思う。
なんだかんだ、エイダンは真面目に国の心配をしているし、今のまま大司教がのさばっているより、あいつが国に戻った方がキアーラもいいんじゃないだろうか。
『自分のことが知りたい』ってキアーラに戻ったレイラを大司教がすぐ手放すとは思えないし、そうすると彼女はしばらくはキアーラにいるだろうから――、その間にレイヴィスを押さえて、魔術師ギルドからキアーラに介入する指示をもらって、エイダンを立ててキアーラに入れば、レイラと話す機会を作れるような気がする。
レイラが知りたいという彼女の出自も大司教がレイヴィスから彼女を買ったとすれば、レイヴィスの方が知っている可能性が高い。
「とにかく、サミュエルさんの話を聞かないとですね」
少し落ち着いた僕は、ナターシャさんとライガに呼びかけた。
***
もう一つの部屋で、リルが水晶に手をかざしている。
『――ナターシャに……ステファンとライガも! この前ぶりじゃん!』
透明な石の向こうでサミュエルさんはぴらぴらと手を振った。ナターシャさんは眉間に皺を寄せたまま聞き返す。
「――連絡くれたってことは、レイヴィスの居場所がわかったってこと?」
『ああ』と水晶の向こうでサミュエルさんが頷く。
『ベルリクがようやく吐いた。今レイヴィスは、国境外の渓谷のあたり根城にしてるそうだよ。こんな近くにいたとはなぁ。――本当に、お手柄だよ、ナターシャ。まさかこんなところから、繋がりのあるやつが見つかるなんて思ってなかった』
「ライガが知り合いだったから、うっかり喋ったんだろ――、運が良かっただけだよ」
確かに、あの闘技会でベルリクがレイヴィスの名前を出さなかったら、そこまで深く尋問はしなかったかもしれない。
ライガは握った拳をもう片方の手のひらにぶつけながら意気込んだ。
「それで、レイヴィスのところにすぐ乗り込むのか?」
サミュエルさんは「その話だ」と笑って言葉を続ける。
『――ベルリクが冒険者ギルド捕まった情報が流れて――、連中は周辺に散って逃げてると思うから……それを探って、捕まえたい』
「おうよ。王都の冒険者ギルドに依頼出して対応させるのか? ――俺たちも参加させてほしいんだけど」
『――そのつもりで連絡したんだよ。特にライガは、本人の顔を知ってるわけだし。ぜひ参加してほしい』
にっと笑ったサミュエルさんにナターシャさんが話を切り出した。
「――サミュエル、連絡もらったついでに、こっちからも報告したいことがある。――ついさっきわかったことなんだけど、レイヴィスとキアーラの大司教が繋がってるかもしれない」
『何だって』とサミュエルさんが大きい声を上げた。
「レイラっていただろ。この前王都に連れて行った子。――あの子、キアーラの神殿から来たんだけど。その子とライガがレイヴィスのところで一緒だった記憶があるって」
『――あの、祈りの力が凄かった子か?』
そう言ってからサミュエルさんは考え込むような顔をした。
『――光神教の神官は――、何故だか、万神教やら他の教会と違って――魔力の高い者が多いんだ。『人間だけ守護する』って排他的な教えなのに信者が多いのは、魔力の強い神官が多くて、祈りの力が強いからと聞く。神官は教会で育てられた孤児が多い。何故、魔力の強い孤児がそんなに集まっているのかと、魔術師ギルドで話題になったことがある』
僕らは顔を見合わせた。
――魔力の強い子どもを、昔から教会で引き取っている?
……それは、あるかもしれないな。
レイラだけを大司教がレイヴィスから買ったとは考えにくい。
もっと――大勢。その中で特に魔力の大きいレイラを手元に置いた?
……いや、今色々考えても仕方ない。
首を振って、水晶玉に呼びかけた。
「とにかく、僕とライガともう一人、これから王都に向かいます。レイヴィスの捜索に参加させてください」
『わかった』とサミュエルさんは通信を切った。
「じゃあ、ちょっと荷物まとめてきます」
僕は走るように冒険者ギルドを出てライガと宿屋に戻ると、昨日荷ほどきせずに放っておいた荷物一式を担いで外に出た。
「――荷物、ほどかなくって良かったな」
「本当に」
ライガとそんな話をしながら、また冒険者ギルドへ戻った。
――そろそろ帰ってくるころかな、あいつが。
ギルドの中で待っていると、しばらくして、目当ての人物が戻って来た。
そいつは僕たちを見つけると得意げに報告してくる。
「ステファン、ライガ! 僕は今日、スライムをこんなに始末してきたよ。見てくれ」
「あなたと、私たちがね!」
背後に呆れ顔のソーニャと困り顔のジャンを引き連れて、エイダンがじゃらりとスライムの核が入った袋を僕の目の前に掲げた。
「すごいな」
僕はそう言いながら袋を彼の手から取ると、ソーニャに渡して、「何だ」という表情の元王子の肩を叩いた。
「エイダン、これから王都に行くぞ」
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