【完結】追放された元聖女は、冒険者として自由に生活します!

夏灯みかん

文字の大きさ
132 / 217
5.元聖女は自分のことを知る決心をしました。

第131話(ステファン視点)(数日前)

しおりを挟む
 レイヴィスを捕らえてからしばらく、サミュエルさんは魔術師ギルド本部から大司教確保の指示を取り付けてくれた。
 
 その指示を受け、サミュエルさんたち王都魔術師ギルドの魔法使いたち数人に加えて、リル、ソーニャ、ナターシャさん、僕、ライガ、それからエイダンはキアーラの関所を訪れていた。

「エ……エイダン様!? お戻りになられたのですか……?」

 関所の兵士はエイダンを見て、目を丸くした。
 エイダンはその兵士に駆け寄ると、嬉しそうに肩を叩いた。
 
「グレッグではないか! お前、身体は完全に回復したのか?」

「お気遣いありがとうございます。問題ございません」

 「知り合いか?」と聞くと、エイダンは「僕の直轄の護衛兵をしていた者だ」と頷いた。

「お前がここにいて良かったよ。――父上に話がある。通してくれ」

「――エイダン様、そちらの方々は――」

 グレッグは僕たちを見回した。
 サミュエルさんはじめ、リル、ソーニャたちは魔術師ギルドの、交差する杖の形の紋章が入った揃いの黒いローブを整えて前に出た。エイダンは咳払いして、兵士に言った。

「魔物密売のレイヴィス商会と多額の取引をし、魔力の高い子どもを不正に神官とするべく光神教の神殿に引き取っていた罪状で、大司教の身柄を魔術師ギルドに引き渡すよう指示が出ている。父上に謁見《えっけん》を願う」

「大司教様が――? しかし……」

 グレッグは驚いた顔をだんだんと歪めて呟いた。

「少々お待ちください――、ただいま、神官様に確認をとって参ります」

「神官『様』?」

 エイダンはぴくりと眉を持ち上げて顔をしかめた。

「お通ししたい気持ちは、山々なのですが――――私たち兵士は今、神殿の、大司教様の指揮下にあります」

 声のトーンを落として、グレッグは地面をどんっと踏みつけた。

「あいつら、大司教が国王様から兵の指揮権を与えられると手のひらを返したように、我々をいいように使い出して――、食糧だのなんだの、なんでも徴収させて、直接渡せだとか無茶なことばかり言ってくるのです。――しかし、我々も向こうに竜がいるとなると――言うことを聞くしか……」

 そのとき、どすどすっという低い重い足音が地面を伝わって来た。
 顔を上げると、門の向こうから黄色い鱗の竜が門に向かって歩いて来るのが見えた。

雷竜サンダードラゴン?」

 僕は思わず目を細めた。雷竜は見るのが初めてだった。

 火竜より翼や身体が細いな……。

 竜の首には首輪がはまっていて、そこから太い手綱が伸びている。
 背中に装着した鞍のようなものに跨って、その手綱持っているのは、白い神官服の男だった。

「――――これは、国外追放になった元王太子殿ではないですか。魔法使い共を率いて、キアーラに何の御用でしょうか」

「――父上との謁見を願いに来た」

「国外追放された者を我が国に入れるわけには参りません。お引き取りを」

 エイダンは厳しい顔で黄色い竜の背に乗る神官を睨みつける。

「――――僕は大司教に勝手に置いて行かれただけだ。父上から直接、国外追放を言い渡されたわけではない。大体、お前たち神官に入国の許可を判断するする権限などないはずだが?」

「全ての許可は大司教様がされていらっしゃる。大司教様の意向に従い、大司教様に逆らった元王子をはじめ、光の女神様を否定する魔法使いをキアーラに入れることはできません」

 ぐっと拳を握ったエイダンの横で、僕はリルに視線を向けた。
 彼女はサミュエルさんの後ろに隠れるように立つと、杖を前に握った。
 ――――力づくは問題になるからあんまりやりたくなかったけど、まず中に入らないと話が始まらないから――、魔法で眠ってもらうか痺れさせるかとにかくこいつを大人しくさせて――。

 と思っていたら、何やら竜に乗った神官の後ろから、わーっと甲冑を着た兵士たちが押し寄せてきた。

「――立ち去らないというのなら――」

 竜の鎖をぐいっと引っ張った神官の身体が言葉の途中で下に引きずり落される。
 兵士たちが竜に登って、神官を引っ張り下ろしていた。竜は吠えながら首をぶんぶん振る。

「エイダン様っ、よくぞお戻りに!」

「中へどうぞ!」

 兵士たちは口々に叫んでいた。いつの間にかその場から去っていたグレッグが、詰め所から兵士を呼んできたようだ。

「このっ、何をっ、おい――、サンダーだっ」

 地面に取り押さえられて、白い服を土で汚した神官は、混乱したように暴れる竜に命令した。竜はガァ!と返事をするように吠えて口を開ける。

 僕は、腰に差した剣と短剣と、上着に仕込んだナイフ数本を抜くと、腕に力を集中して竜の口の中に向かって全部一気に投げつけた。竜の白く尖った牙と牙の間にその剣先が飲み込まれるのと、喉奥から閃光が飛び出すのは同時だった。

 バリバリバキバキ!

 雷を全て受け止めた刃物は、竜の口の中で四方八方に暴発した。

 口内に刃物が突き刺さった竜は、鼓膜を切り裂くような悲鳴を上げ、神官も兵士も吹っ飛ばしながら暴れまわる。

「ライガ! 口巻いて、取り押さえろ! 蛇竜スネイクドラゴンとかと一緒だから! たぶん!」

 僕は背中のリュックから鎖を出すとライガに投げた。
 ライガは鎖を受け取ると完全獣化しながら暴れる竜の前に飛び出た。
 鎖を竜の口に巻き付けて締め上げる。

 竜族は噛みつく力に比べて口を開く力が弱い。一撃で首を落とせないような大きい蛇竜を相手にするときなんかは、念のため丸まったところで口に鎖を巻いて、噛みつかれないようにしてから処理することが多い。

 ライガに口を締め上げられて、雷竜はばったばったと尻尾やら後ろ脚をばたばたさせた。ライガは振り回されながらも鎖をぎゅっと絞って耐えていた。

 雷を吐いてくるのは口からだから、口さえ開かせなきゃ問題ない。

「後ろ、アタシが押さえる!」

 ナターシャさんが飛び出して、竜の右後ろ脚を尖らせた爪を喰い込ませて押さえ込んだ。
 僕も意識を集中して、身体を強化させると、エイダンの腰から剣を抜いて、竜の左後ろ脚に突き刺して押さえた。

「リル! サミュエルさん! ソーニャ! 眠りスリープ!!」

 そう叫ぶと、魔法使いたちは同時に杖先を竜の身体に触れさせて、「眠れスリープ!」と呪文を唱えた。

 押さえこんでいた竜の脚の力がふっと抜け、大きな体はどさりと土の上に落ちた。
 ――荒ぶっていたとはいえ、魔法使い複数の眠りスリープがけはよく効いたらしい。
 大司教の引き渡しを求めにきたわけで、竜を殺しに来たわけじゃないから、大きな戦闘にならなくて良かった……。

 周りを見回すと、暴れた竜に吹き飛ばされた兵士に怪我人はいるようだけど、みんな軽傷みたいだった。良かった……。

「入国させて頂きます。——ひとまず、あなたも怪我人の処置を手伝ってくださいね。神官なら、目の前の怪我人を放っておかないでしょう」

 地面に転がる神官を起こして、軽く回復魔法をかけてやると、魔法使いたちと他の怪我人の処置に向かった。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

転生幼女は追放先で総愛され生活を満喫中。前世で私を虐げていた姉が異世界から召喚されたので、聖女見習いは不要のようです。

桜城恋詠
ファンタジー
 聖女見習いのロルティ(6)は、五月雨瑠衣としての前世の記憶を思い出す。  異世界から召喚された聖女が、自身を虐げてきた前世の姉だと気づいたからだ。  彼女は神官に聖女は2人もいらないと教会から追放。  迷いの森に捨てられるが――そこで重傷のアンゴラウサギと生き別れた実父に出会う。 「絶対、誰にも渡さない」 「君を深く愛している」 「あなたは私の、最愛の娘よ」  公爵家の娘になった幼子は腹違いの兄と血の繋がった父と母、2匹のもふもふにたくさんの愛を注がれて暮らす。  そんな中、養父や前世の姉から命を奪われそうになって……?  命乞いをしたって、もう遅い。  あなたたちは絶対に、許さないんだから! ☆ ☆ ☆ ★ベリーズカフェ(別タイトル)・小説家になろう(同タイトル)掲載した作品を加筆修正したものになります。 こちらはトゥルーエンドとなり、内容が異なります。 ※9/28 誤字修正

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

追放された魔女は、実は聖女でした。聖なる加護がなくなった国は、もうおしまいのようです【第一部完】

小平ニコ
ファンタジー
人里離れた森の奥で、ずっと魔法の研究をしていたラディアは、ある日突然、軍隊を率いてやって来た王太子デルロックに『邪悪な魔女』呼ばわりされ、国を追放される。 魔法の天才であるラディアは、その気になれば軍隊を蹴散らすこともできたが、争いを好まず、物や場所にまったく執着しない性格なので、素直に国を出て、『せっかくだから』と、旅をすることにした。 『邪悪な魔女』を追い払い、国民たちから喝采を浴びるデルロックだったが、彼は知らなかった。魔女だと思っていたラディアが、本人も気づかぬうちに、災いから国を守っていた聖女であることを……

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

宮廷から追放された聖女の回復魔法は最強でした。後から戻って来いと言われても今更遅いです

ダイナイ
ファンタジー
「お前が聖女だな、お前はいらないからクビだ」 宮廷に派遣されていた聖女メアリーは、お金の無駄だお前の代わりはいくらでもいるから、と宮廷を追放されてしまった。 聖国から王国に派遣されていた聖女は、この先どうしようか迷ってしまう。とりあえず、冒険者が集まる都市に行って仕事をしようと考えた。 しかし聖女は自分の回復魔法が異常であることを知らなかった。 冒険者都市に行った聖女は、自分の回復魔法が周囲に知られて大変なことになってしまう。

処理中です...