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【6】聖女 服を買う

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「サイズは……スカートだけワンサイズ下げましょうか。あ、すいませーん!」

 モルガナさんが片手を上げると、お店のお姉さんがにこにこしながら素早く寄ってきた。

「あのマネキン書きてるの一式、試着したいんですけど」
「はーい! かしこまりましたぁ」

 え、ちょ……!

 モルガナさんと、笑顔のまま高速でマネキンを裸に剥いていく店員さんを見比べる。

「そ、そんなに何着もいらないですよ……!」
「何言ってるのルチルちゃん! これはいわば私の趣味よ! 言ったでしょ、お姉さんお金ならあるって!」
「いやいや! そもそも自分で買います!」
「ダメよ! あなたを代理人にして物欲を満たしているところがあるんだから!」
「そーそー。ルチルっち、気にせず買ってもらえばいいよぉ」

 モルガナさんの隣で、ジェイドが腕を組んで大きく頷いた。

「欲しいけど会長じゃあ年齢的に着られない・・・・・・・・・・・・・・なぁって服を、ルチルっちに着せて楽しんでるんだから」

 その瞬間、

 バシッ!!

 タイトスカートから伸びたモルガナさんの綺麗な足が、ジェイドの膝裏を的確に捉えた。

「ぐぁ!!」

 呻いて両手膝を地面に突くジェイド。

 どうして君はそう余計な一言が多いのかね……。

 モルガナさんの腕の中に居たゴーシェが、ちらりと横目でそれを見る。が、特段コメントすることもなくわたしに笑顔を向けて来た。

「ステキです! さすがルチルさん! 天が創りたもうた美! 地上に舞い降りた天使! 生ける芸術!」

 その横で「いてて……」と呻いて立ち上がったジェイドが言う。

「そうだな、よく似合ってると思うぜ。何て言うか……ゴブリンにも衣装って感じ!」

 誰がゴブリンか。

「――ゴーシェ、GO!」

 わたしがそう指示を出せば、ぬいぐるみが失言ヤローに飛びかかってその腕にかみついた。

「ぎゃー! ごめんって! あやまるって! オレが悪かったってぇ!」
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