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第一部 第四章 ひっそりとうっかりは紙一重

ややこしいのは遠慮します②

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 うーん。この表情はどう受け取っていいのか。
 混乱していると、ルイが微苦笑を浮かべながら私を見ており、その横でサミュエルは、「ぴょんぴょんはさすがにふざけすぎだろう」と真面目に思案してくれていた。

「可愛いと思いますが」
「まあ、確かにエリーが言うと可愛いけどふざけてると思われそうだよね。それだったら、気になるけど 『よいせぇ』のほうが応援しようと思える感じかな」

 真顔でそんなことをのたまうシモンに、ルイがやけに楽しそうに続ける。

「確かにそうですね。彼女にあった可愛らしい掛け声も捨てがたいですが」
「まあ、聞いてみたくはあるよね。あれでもすごく真面目にやってるし、昔に比べたら大分落ち着いたから僕としてはもうどっちでもいいかな」

 自分のことなのに勝手に進められる話に、私は王子たちの間で視線をうろうろさせた。
 お題が嫌すぎる。

「ま、何かいい案が思いつくまであれでいいんじゃないか? 驚いたがエリザベス嬢らしいというか」
「そうだね。いきなり無言とかも無理だろうし、エリーはそのままでいいと思うよ」
「確かに。ゆっくり考えたらいいんじゃないかな」

 サミュエルがまとめ、続いてルイ、シモンと勝手にまとめてくれる。
 というか、やはりシモンがどこまで本気なのかわからない。その横で、顎に手を当てて黙っているユーグも何を思ってなのか。

 さきほど警戒するような視線や動作も、ルイの反応を見るからにシモンの遊びの範囲なのだと知れた。なら、ぴょんぴょん提案も冗談なのだろう。
 冗談なら冗談だとわかりやすくしてほしいが、完璧王子は真面目一辺倒ではないことがわかる会話にほっとする。うん。相手も同じ歳。
 気を取り直して、改めてお礼を述べた。

「シモン殿下もお茶目なところがあるのですね。いろいろご思案までいただきありがとうございます。本当に助かりましたので、お二方には感謝です」

 そう告げると、ルイとサミュエルが揃って意味ありげにくすりと笑う。

「お茶目だって」
「お茶目か」

 それに対して、シモン王子の口の端がひくりと上がったのを見て、申し訳ないけれど私は心からほっとした。
 姉の話のときにすんとした表情もしていたし、感情をなるべく表に出さないだけなのだとわかる反応に、気構えはするが普通に話せるなと王子の認識を改める。

「本当にありがとうございました!」

 しっかり礼を告げて満足した私はそこでドリアーヌへと視線を走らせた。
 さすがに表情は暗いが、彼女の友人が話しかけたりしてそれなりのモチベーションは保っているようだ。

 これからまだ反省やそれ相応の償いはすべきであるが、反省し行動を改めるならば必要以上に追い詰めるべきではない。
 幼すぎる意地悪な行為事態は正すべきだけど、彼女を悪とする空気になるのも嫌だったので一安心である。

 クラス全体が多少のぎこちなさはまだ残っているが、きっと王子たちが上手くクラスをまとめてくれたのだろうと思う。

 被害者となったサラのほうはときおりくすっと笑いながらクラスメイトと話しており、私と視線が合うとにぃっこりと笑ってくれた。
 立ち直っているようだし、彼女が心穏やかならそれでいい。

 クラスメイトとの距離が縮んだ事や、詰んだかもと王子と関わることは大変だと思っていた今生もそんなに悪くないかもしれないと笑みを浮かべていると、シモンが何を思ってか平然とした表情でとんでもないことを告げた。

「エリザベス嬢。もう一度、先ほどの技を見せてもらえませんか?」
「むやみやたらに乱射いたしません」
「乱射……。では、今度人が少ないところで同じ水属性ということで魔力を合わせてどのような効果が得られるか見てみたい」
「シモン殿下と合わせるほどの魔力は持ち合わせておりませんので、ご期待に添えられないかと思います」

 ──何を言い出す、第一王子。こっちはもうきらきらはお腹いっぱいです!

 私は目眩を覚えて、遠い目をした。


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