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第二部 第五章 これから
閑話 sideマリア 愛しのエリー②
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可愛い可愛い妹に初見で指を掴まれてからというもの、マリアはエリザベスにべったりだった。
日に日に自分が守らなければならないと使命感に燃え、それに応えるようにマリアがエリザベスに構うと妹はきゃっきゃと嬉しそうに笑うものだから、愛しさが増していく。
どこもかしこも可愛くて、寝返りをしようとして失敗して泣いている姿を見た時は、興奮して鼻血が出てしまうほどエリザベスを愛していた。
「マリアお嬢様。それは私がしますから」
「いやよ。エリーのせわはわたしがする。そのぷるんとしたおしりがみたいの」
「おしりですか?」
「そうよ。みてみて。かじりつきたいくらいかわいいおしり。かじってもいいかしら?」
「泣かれると思いますよ」
綺麗に拭かれたおしりはかぶれもなく、つるん、ぷるんとしていて、無防備に晒されている。
「ないても、かわいいよ」
「可愛いですけど、それはやめておきましょう」
なぜ反対するのか、こんなに可愛いのにと、わからずこてんと首を傾げると、メイドはふるふると首を振った。
それでもねだってみるけれど、おしりを囓るのは絶対ダメだと言われマリアはしぶしぶ諦める。
メイドに手伝ってもらいながらエリザベスのおむつを替えた。
足を上げた時のおしりの魅力に未練はあるが、メイドが目を光らせているので仕方がない。
「できたぁ」
マリアは布に包まれていくおしりを残念に思いながら、自分が妹の大事なおしりを上手に包めたことに歓喜した。
小さな手ではまだ難しく手伝ってもらいながらだったが、ミルクを飲んでオムツも替えすっきりしたエリザベスはうとうととしだした。
「ふふっ。はやくエリーとおしゃべりしたいなぁ」
手を洗い、再びエリザベスのベッドに近づく。
マリアはうっとりと妹を眺めながら、ぷにぷにの頬を起こさないように優しく突いた。
可愛い可愛いエリザベスが発する初めての言葉は『ねぇね』がいいと、妹の耳元で「ねぇね」「ねぇね」と呪文のように唱える。
マリアの世界はエリザベスありきで回っていた。
エリザベスを危険から守るためだと、まだ早いと言われたが魔力操作の勉強も説得して習えるようにしてもらった。
小さくて理解が難しく簡単ではなかったけれど、つらくて会えない時間もエリザベスを思うと頑張れた。
そうやってエリザベスのためがいくつも積み重なり、マリアはもともとあった能力と魅力を底上げした。
テレゼア公爵家では、麗しき天使たちの仲の良い姿は名物であった。
長女のマリアは、可愛さだけでなく才女として知れ渡るのもあっという間で、妹を大切にする姿を見た周囲に慈愛の姫と呼ばれるようになる。
お友達と遊ぶよりはエリザベスといたいと、空いた時間は常に妹がお昼寝していてもお構いなしにマリアは突撃する。
起きていたら遊び、寝ていたらその姿を幸せそうに眺める様子に、幼さも相まって両親や使用人は微笑ましく見守る。
エリザベスのオムツが外れるのをマリアが喜ぶどころか惜しむのを見て少し胸がざわついたが、可愛らしい二人の姿にほっこりしていた。
「エリィィー。そこ、だんさがあるから。だっこしてあげる」
「ねぇねー」
エリザベスがハイハイからよちよち歩きになっても、マリアは相変わらずべったりだった。
エリザベスが五歩進んだら抱き上げて、少しでも段差があると抱き上げてと過保護ぶりを発揮しだした。
しっかりと初めての言葉は『ねぇね』と呼ばせたマリアは、満足げに微笑む。
「マリアお嬢様は、エリザベスお嬢様のことが本当に好きなんですね」
「ちがうよ。すきじゃなくて、あいしてる」
「……それは熱烈ですね」
メイドはぽかんと口を開け、ふふっと優しげに笑う。
マリアは当然でしょと胸を張った。
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