詰みたくないので奮闘します~ひっそりしたいのに周囲が放っておいてくれません~

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
184 / 185
第二部 第五章 これから

閑話 公爵家の魔法の鍋⑤

しおりを挟む
 

「ということなんです」

 マリアや周囲に宥められながらことの顛末を話して聞かせると、マリアははぁっと小さく溜め息をついた。

「エリーったら、どうしていつも問題事を引っ提げてくるのかしら?」
「……私もどうしてなのか」

 ちょっと気になって行動しているだけなのだが、たまに、…………正直いうとかなりの頻度で今日みたいに大事になることが多かった。
 今日だって物探しをしていただけなのだけど、こうして物事が大きくなっている。
 ちょっと時間帯とか調理場を荒らしてしまったこととかは後ろめたいが、鍋が勝手に騒ぎ出したことは鍋の勝手であって私のせいではない。解せない。

 困ったように眉尻を下げると、怒ってるのよとマリアはぷんぷんと頬を膨らませた。
 それを見て、己の行動を振り返る。

 ああー、やっぱり私が発端、なのよね。反省。全部鍋のせいにしてしまえたらよかったが、怒られて当然だと気づく。
 抜け出して心配させてマリアを含めみんなを起こしてしまった。
 夜中ということで、余計に迷惑度がいつもより増している。そこはきちんと反省はしないといけない。

「姉様。ごめ」
「どうして誘ってくれなかったの?」
「えっ?」
「私も一緒にエリーと冒険したかった」

 むぅっと拗ねたように頬を膨らますマリアに、私は呆気にとられてぽかんと口を開けた。
 怒るところがやはり違う。安定のシスコン発言に、少しだけ身体の力が抜ける。

 だけど、今もなお鍋の主張の音が響いており、不安は消えない。
 鍋の迷惑極まりない行動の原因が私なのだとしたら、間違いなく自分が原因なのだが、一度は戻らないといけない。
 みんなに迷惑をかけて悪いと思いながらも、まだ解決していない状態が気になって、会話も集中しずらく反省にも身が入らない。

 心配してくれる人を目の前に反省しきれていない自分に罪悪感を覚えていたが、姉が気にしていたところがそっちだとは。
 もちろん、心配もしてくれた上でだということはわかっているが、やはりマリアはマリアだ。

「えっと、一緒に姉様も戻ってくれます?」
「ほかの者がもう行っていると思うけど、鳴り止まないということはそれはエリー待ち?」
「……多分」

 私待ち? 出待ちじゃないんだからやめてほしい。
 それに行ったとして鳴り止んでくれるのかわからないし、さらに問題が起こったらどうしようかと不安だ。

 なにせ主張がすごい鍋なのだ。
 余計にうるさくなりでもしたらお手上げだ。かといって、いまだに鳴り止まない現状では私が行かないことには始まらない。

「大丈夫よ。エリーを見初めるなんてその鍋は見込みがあるかもしれないし、私がしっかりチェックしてあげるわ」
「……よろしくおねがいします」

 言い回しが気になるが、一人ではないならなんとかなるかなと、もうどうでもいいかと深く考えるのは諦めた。
 私が見つかったと聞いて駆けつけてきたペイズリーやじぃや護衛とともに、マリアにぎゅっと手を繋がれながら来た道を戻る。

 調理場に到着すると、問題の鍋の周りに数人の大人が囲っていた。私が近づくと、カンカンカン、カッカッカッカッと細かな音を立てる。
 明らかな主張に、私はへにょりと顔を歪めた。

「エリザベスお嬢様に触れてほしいのでは?」
「えっ? 触らないといけないの?」

 考えるように顎に手を当てていたじぃに話しかけられ、不安な声を出す。

「先ほどの話では、エリザベスお嬢様の魔力に反応したようですので、料理長にも確認しましたがそこは開かずの扉だったようです。なので、お嬢様に使っていただけないとまたストライキを起こすのではないでしょうか。ほかの者には触るなとばかりに嫌な気配を発していますので」
「あっ、そうなんだ」

 なんで、揃いも揃って大人たちが見てるだけなんだろうとちらっと思ってた。ごめんなさい。

「じゃあ、やってみる」
「エリー、気をつけてね」
「うん」

 マリアに励まされ、気をつけるってどう気をつけるんだろうと思いながら頷き、気合を入れて鍋の前に立った。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~

tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!! 壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは??? 一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

【完結】愛しき冷血宰相へ別れの挨拶を

川上桃園
恋愛
「どうかもう私のことはお忘れください。閣下の幸せを、遠くから見守っております」  とある国で、宰相閣下が結婚するという新聞記事が出た。  これを見た地方官吏のコーデリアは突如、王都へ旅立った。亡き兄の友人であり、年上の想い人でもある「彼」に別れを告げるために。  だが目当ての宰相邸では使用人に追い返されて途方に暮れる。そこに出くわしたのは、彼と結婚するという噂の美しき令嬢の姿だった――。 新聞と涙 それでも恋をする  あなたの照らす道は祝福《コーデリア》 君のため道に灯りを点けておく 話したいことがある 会いたい《クローヴィス》  これは、冷血宰相と呼ばれた彼の結婚を巡る、恋のから騒ぎ。最後はハッピーエンドで終わるめでたしめでたしのお話です。 第22回書き出し祭り参加作品 2025.1.26 女性向けホトラン1位ありがとうございます 2025.2.14 後日談を投稿しました

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

処理中です...