【本編完結】自由気ままな伯爵令嬢は、腹黒王子にやたらと攻められています

橋本彩里(Ayari)

文字の大きさ
85 / 166
試みと自覚

試作②

 
 総合的に見ると、バナナやリンゴなどの果物の甘みを感じられるものが人気のようだ。
 特に子供女性は甘いものが好きみたいで、男性も野菜が前面に出ているものよりは甘すぎなければ果物の風味が強いほうが食べやすいということもわかった。
 実際、辺境伯で戦ってくれる兵士も疲れているので、甘みを感じるものはいいだろう。

 方向性は決まり、今は果物をベースにあれこれ試作中である。
 配合については、赤カブとなった副隊長が絵文字と簡単な棒線であるが数を描いていってくれる。優秀すぎかっ!

 あと、副隊長が描く絵がすっごい可愛い。手で直接描くから少し太めの線なのだけど、それがまたいい味を出しているのだ。
 アスパラガスがボディで文字を表したときにも思ったが、野菜たちは賢い。

 あれもちゃんと字がわかっているわけではなく、使用人が書いているのを気にしたアスパラガスに、なんとなく教えてみたことが始まりのようだ。
 しっかり文字を描けるまで付き合ったそうだが、ひとつひとつの文字はわからなくとも全体としての意味は理解しているらしく、やっぱり賢いと思う。
 日頃の段取りなども理解しているし、こちらとしては大助かりである。

「隊長~。この配合は?」

 思いつくまま混ぜたものを隊長に見せると、ふりふりと頭を振られる。

「栄養が足りないってことね」

 そう尋ねると、こくこくと頷く隊長。

「あと何を足したらいいかなぁ。甘みは十分だしナッツ系で栄養素と食感増やしてみたらいいかも?」

 思いついたことをそのまま尋ねてみると、隊長がぐっとばかりに手を上げる。

「そう? いいアイディアってことね。なら、そうしてみようかな。ナッツといってもいろいろ種類あるからそこもまた悩むわね」

 楽しい悩みにあれこれナッツの種類を頭に浮かべていると、その数分後、ナッツを持ってきてくれるお野菜たち。
 ここは私たちの出番とばかりに、ラディッシュやイチゴたちが一つひとつナッツを持って置いていってくれる。

「みんな、持ってきてくれてありがとう」

 集まりだしたナッツを目の前に、お礼を言いながらそのひとつをひょいっとつまみ、その硬さを確かめる。
 実際に目で見て触ってみると、想像以上に硬かったり意外と柔らかかったりするし、火を通すことで食感も違うので、こればっかりはやってみないと始まらない。

「たくさんあるから、今日はいくつかのパターンを作りたいところだよね」

 そう言うと、隊長の指示で焼型を持ってきてくれる。
 至れり尽くせりとはこのことだ。

「これはお菓子寄りで、もうちょっと食感軽めにするものとしっとり系にするものと、ナッツ系でちょっとがっつり系とで三系統を作ってみようかな。こっちはオッケーもらったから腹持ちが良いように工夫するとして」

 独り言のように隊長に説明していきながら、あれこれ思うままに分けて混ぜて焼型に入れていく。
 隊長に却下されたものは、私が望むような栄養価までいっていないようだけど、今までの感じからするときっと美味しいはずである。

 せっかくなので、ここから少しずつ配合を変えていろいろ試してみようと思う。
 現在、十種類はいいと思えるものができたし、お菓子っぽいのもあってもいいだろう。
 それに、ただのお菓子よりは断然栄養があるので、それを売りに王都に出すのもいいかもしれない。

 南部の貴族に認められた上での、北部支給というのも今後にきっと悪いことにはならないはずだ。
 栄養、どちらかというと王都のもは美容向けの成分多めの菓子として、女性を味方につけておくのもいい。

 さまざまな方向からのアプローチはしておくべきだ。
 俄然またやる気が出てきたと、ふんふんとお野菜ズと協力しながら作っていると、バタバタバタと屋敷の気配が慌ただしくなった。

「何かあったのかな?」

 少し疑問に思いながらも、伯爵領は日常的に賑やかなので手を止めることはしない。
 ふふん、ふふん、と鼻歌まじりに分け終えたところで違和感を覚える賑やかさが近づいてきたと思ったら、いるはずのない人が姿を現した。

「ずいぶん、楽しそうだな。ティア」

 ふふふんっと呑気な鼻歌がふんん? と中途半端なところで止まる。
 艶を含む聞き覚えのある声に名を呼ばれ、私は目を見開いた。

「あ、アンディ殿下!?」

 野菜たちの出入りのために開け放たれたドアのところには、エロ王子、違った、婚約者でもある王太子殿下が悠然とやけに涼やかな笑顔を浮かべて立っていた。


感想 453

あなたにおすすめの小説

もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

結婚式の翌朝、夫に「皇太子の愛人だろう」と捨てられました――ですが私は、亡き国王の娘です

柴田はつみ
恋愛
母の遺した薬草店を守りながら、慎ましく暮らしていたアンリ。 そんな彼女に求婚してきたのは、国内でも名高い騎士にして公爵家当主、アルファだった。 真っすぐな想いを向けられ、彼を信じて結婚したアンリ。 けれど幸せなはずの結婚式の翌朝、夫は冷たく言い放つ。 「君を愛していると本気で思っていたのかい? 」 彼はアンリが第一皇太子と深い仲にあり、自分との結婚は身を隠すための偽装だと誤解していたのだ。 アンリは実は、亡き国王の婚外子。 皇太子にとっては、隠して守らなければならない妹だったのである。