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試みと自覚
試作②
しおりを挟む総合的に見ると、バナナやリンゴなどの果物の甘みを感じられるものが人気のようだ。
特に子供女性は甘いものが好きみたいで、男性も野菜が前面に出ているものよりは甘すぎなければ果物の風味が強いほうが食べやすいということもわかった。
実際、辺境伯で戦ってくれる兵士も疲れているので、甘みを感じるものはいいだろう。
方向性は決まり、今は果物をベースにあれこれ試作中である。
配合については、赤カブとなった副隊長が絵文字と簡単な棒線であるが数を描いていってくれる。優秀すぎかっ!
あと、副隊長が描く絵がすっごい可愛い。手で直接描くから少し太めの線なのだけど、それがまたいい味を出しているのだ。
アスパラガスがボディで文字を表したときにも思ったが、野菜たちは賢い。
あれもちゃんと字がわかっているわけではなく、使用人が書いているのを気にしたアスパラガスに、なんとなく教えてみたことが始まりのようだ。
しっかり文字を描けるまで付き合ったそうだが、ひとつひとつの文字はわからなくとも全体としての意味は理解しているらしく、やっぱり賢いと思う。
日頃の段取りなども理解しているし、こちらとしては大助かりである。
「隊長~。この配合は?」
思いつくまま混ぜたものを隊長に見せると、ふりふりと頭を振られる。
「栄養が足りないってことね」
そう尋ねると、こくこくと頷く隊長。
「あと何を足したらいいかなぁ。甘みは十分だしナッツ系で栄養素と食感増やしてみたらいいかも?」
思いついたことをそのまま尋ねてみると、隊長がぐっとばかりに手を上げる。
「そう? いいアイディアってことね。なら、そうしてみようかな。ナッツといってもいろいろ種類あるからそこもまた悩むわね」
楽しい悩みにあれこれナッツの種類を頭に浮かべていると、その数分後、ナッツを持ってきてくれるお野菜たち。
ここは私たちの出番とばかりに、ラディッシュやイチゴたちが一つひとつナッツを持って置いていってくれる。
「みんな、持ってきてくれてありがとう」
集まりだしたナッツを目の前に、お礼を言いながらそのひとつをひょいっとつまみ、その硬さを確かめる。
実際に目で見て触ってみると、想像以上に硬かったり意外と柔らかかったりするし、火を通すことで食感も違うので、こればっかりはやってみないと始まらない。
「たくさんあるから、今日はいくつかのパターンを作りたいところだよね」
そう言うと、隊長の指示で焼型を持ってきてくれる。
至れり尽くせりとはこのことだ。
「これはお菓子寄りで、もうちょっと食感軽めにするものとしっとり系にするものと、ナッツ系でちょっとがっつり系とで三系統を作ってみようかな。こっちはオッケーもらったから腹持ちが良いように工夫するとして」
独り言のように隊長に説明していきながら、あれこれ思うままに分けて混ぜて焼型に入れていく。
隊長に却下されたものは、私が望むような栄養価までいっていないようだけど、今までの感じからするときっと美味しいはずである。
せっかくなので、ここから少しずつ配合を変えていろいろ試してみようと思う。
現在、十種類はいいと思えるものができたし、お菓子っぽいのもあってもいいだろう。
それに、ただのお菓子よりは断然栄養があるので、それを売りに王都に出すのもいいかもしれない。
南部の貴族に認められた上での、北部支給というのも今後にきっと悪いことにはならないはずだ。
栄養、どちらかというと王都のもは美容向けの成分多めの菓子として、女性を味方につけておくのもいい。
さまざまな方向からのアプローチはしておくべきだ。
俄然またやる気が出てきたと、ふんふんとお野菜ズと協力しながら作っていると、バタバタバタと屋敷の気配が慌ただしくなった。
「何かあったのかな?」
少し疑問に思いながらも、伯爵領は日常的に賑やかなので手を止めることはしない。
ふふん、ふふん、と鼻歌まじりに分け終えたところで違和感を覚える賑やかさが近づいてきたと思ったら、いるはずのない人が姿を現した。
「ずいぶん、楽しそうだな。ティア」
ふふふんっと呑気な鼻歌がふんん? と中途半端なところで止まる。
艶を含む聞き覚えのある声に名を呼ばれ、私は目を見開いた。
「あ、アンディ殿下!?」
野菜たちの出入りのために開け放たれたドアのところには、エロ王子、違った、婚約者でもある王太子殿下が悠然とやけに涼やかな笑顔を浮かべて立っていた。
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