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第50話 目標はありますか?
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僕たちは、余韻に浸っていた……。
たった今、美栞は初体験を済ませたばかりだ。
ただ、綾乃みたいに泣きじゃくったりせずに、美栞が、ごく自然に僕に甘えてきたのは意外だった。
「ミカン先輩、あまり痛がりませんでしたね」
「参考書によると、初めての時は凄く痛いと書いてあったので覚悟していたのですが、拍子抜けしました」
同じ処女喪失でも、人によって違うのだなと知った。
「参考書には、男の人は好きでもない女とでもヤレるらしいですが、本当なのですね」
美栞の発言の意図が僕には分からなかった。
「僕は、ミカン先輩のことが好きです」
「無理しなくても良いです。 アナタ、さっき恋してないと言ったじゃないですか」
たしかに言った。返答に困ってしまう。
「ワタシは、先ほどは嘘を言いましたが、森岡に恋してます。多分、うどんよりも好きです」
またしても、意味不明な例えで美栞は重要なことを言う。それに、やっぱり、うどんが好きなんじゃないか、と突っ込みたくなる。
「え……と、ミカン先輩は、僕に恋してるのですか?」
「ワタシは素直に感情を伝えることができないみたいです」
「森岡の事は、ずいぶん前から好きでしたよ。だから綺麗になりたいと思ったし」
美栞は言いかけて、言葉を詰まらせた。
「ミカン先輩?」
「不覚にも、自分の夢を諦めようかとさえ、思いました」
「夢? ですか?」
「はい。ワタシ、来月からイギリスに留学します」
「ええ!?」思わず大きな声を上げて、美栞を見る。
「もし、アナタがワタシの事を好きで、本当に恋人になれるなら、留学はやめようとさえ思いました」
そんな大切なことを、僕のために止めるって、そんなに僕の事が好きになったのか? そんな感情はおくびにも出さずに。
「ミカン先輩が、そんな風に僕の事を思っていてくれたなんて、気づきませんでした」
「ワタシは、素直じゃないのです。素直に自分の気持ちを伝えていたら……」
確かに、美栞はうどんが好きなくせに頑なに否定していた。どこか偏屈な性格だとは思っていたが、僕を好きだと表現していたら、もしかしたら愛莉とのことはなかったかも知れない。
しかし、今の僕は……。
「森岡には、目標とか夢とか、ありますか?」
突如、話題を変えられ、戸惑う。僕は、どうなのだろう?
「僕は……」
「ワタシの目標は、日本人の女性で初めてのノーベル賞受賞者になる事です」
「あ……、あ……」
美栞は本気なのだろう、しかし、あまりにも大きな目標に、僕は唖然とする。
「変ですか? ワタシの目標は」
「いえ、あまりにも大きな目標なので、ビックリしただけです」
「アナタのおかげで、日本に思い残すことは無くなりました」
美栞は、そう言うとギュッと抱きついてきた。大きな胸が圧しつけられる。
「森岡が好き……」
「ミカン先輩」
「恋愛は苦しいものだと知りました。そして、セックスは満たされるものだという事も」
「ミカン先輩、イギリスにうどんを送ります。だから、月並みだけど……
頑張ってください」
美栞は、顔をあげ驚いた表情を見せる。
「アナタ、ふざけてますね? この状況で、うどんですか?」
「いえ、真面目ですよーー」
「まあ、良いです。 たまには電話してください。ワタシも頑張れます。
それから……」
「はい?」
「森岡が、自分が何をすべきか見つけたときは、教えてください」
「はい、きっと、報告します」
「森岡も、好きな人がいたら、素直になりなさい」
僕が好きな人……、愛莉には恋人に慣れないと言われた。そして、小梢とも付き合えない。いつか僕にも、普通の恋愛ができる日が来るのだろうか?
「でも、ミカン先輩が言っても説得力ないかと」
「そうですね。ワタシも今度好きな人ができたら、素直になります」
「ミカン先輩なら、引く手あまただと思います」
この爆乳は、男なら放っておけないだろう。それに童顔で可愛い美栞にアプローチをかけてくる男性は、いくらでもいると思った。
「ワタシがノーベル賞を受賞したら、森岡は自慢して良いですよ」
「ええ、マスコミにミカン先輩の初めての男は僕だって、インタビューに答えますよ 笑」
「アナタ、やはり、ふざけてますね」
「真面目ですよ。 ミカン先輩がノーベル賞を受賞して会見を開いているシーンを思い浮かべてました」
「森岡……」
美栞は、自ら唇を合わせてくる。
(さようなら……、ミカン先輩)
惜別のキスなのに、小梢の時と違い、悲しみはなかった。
たった今、美栞は初体験を済ませたばかりだ。
ただ、綾乃みたいに泣きじゃくったりせずに、美栞が、ごく自然に僕に甘えてきたのは意外だった。
「ミカン先輩、あまり痛がりませんでしたね」
「参考書によると、初めての時は凄く痛いと書いてあったので覚悟していたのですが、拍子抜けしました」
同じ処女喪失でも、人によって違うのだなと知った。
「参考書には、男の人は好きでもない女とでもヤレるらしいですが、本当なのですね」
美栞の発言の意図が僕には分からなかった。
「僕は、ミカン先輩のことが好きです」
「無理しなくても良いです。 アナタ、さっき恋してないと言ったじゃないですか」
たしかに言った。返答に困ってしまう。
「ワタシは、先ほどは嘘を言いましたが、森岡に恋してます。多分、うどんよりも好きです」
またしても、意味不明な例えで美栞は重要なことを言う。それに、やっぱり、うどんが好きなんじゃないか、と突っ込みたくなる。
「え……と、ミカン先輩は、僕に恋してるのですか?」
「ワタシは素直に感情を伝えることができないみたいです」
「森岡の事は、ずいぶん前から好きでしたよ。だから綺麗になりたいと思ったし」
美栞は言いかけて、言葉を詰まらせた。
「ミカン先輩?」
「不覚にも、自分の夢を諦めようかとさえ、思いました」
「夢? ですか?」
「はい。ワタシ、来月からイギリスに留学します」
「ええ!?」思わず大きな声を上げて、美栞を見る。
「もし、アナタがワタシの事を好きで、本当に恋人になれるなら、留学はやめようとさえ思いました」
そんな大切なことを、僕のために止めるって、そんなに僕の事が好きになったのか? そんな感情はおくびにも出さずに。
「ミカン先輩が、そんな風に僕の事を思っていてくれたなんて、気づきませんでした」
「ワタシは、素直じゃないのです。素直に自分の気持ちを伝えていたら……」
確かに、美栞はうどんが好きなくせに頑なに否定していた。どこか偏屈な性格だとは思っていたが、僕を好きだと表現していたら、もしかしたら愛莉とのことはなかったかも知れない。
しかし、今の僕は……。
「森岡には、目標とか夢とか、ありますか?」
突如、話題を変えられ、戸惑う。僕は、どうなのだろう?
「僕は……」
「ワタシの目標は、日本人の女性で初めてのノーベル賞受賞者になる事です」
「あ……、あ……」
美栞は本気なのだろう、しかし、あまりにも大きな目標に、僕は唖然とする。
「変ですか? ワタシの目標は」
「いえ、あまりにも大きな目標なので、ビックリしただけです」
「アナタのおかげで、日本に思い残すことは無くなりました」
美栞は、そう言うとギュッと抱きついてきた。大きな胸が圧しつけられる。
「森岡が好き……」
「ミカン先輩」
「恋愛は苦しいものだと知りました。そして、セックスは満たされるものだという事も」
「ミカン先輩、イギリスにうどんを送ります。だから、月並みだけど……
頑張ってください」
美栞は、顔をあげ驚いた表情を見せる。
「アナタ、ふざけてますね? この状況で、うどんですか?」
「いえ、真面目ですよーー」
「まあ、良いです。 たまには電話してください。ワタシも頑張れます。
それから……」
「はい?」
「森岡が、自分が何をすべきか見つけたときは、教えてください」
「はい、きっと、報告します」
「森岡も、好きな人がいたら、素直になりなさい」
僕が好きな人……、愛莉には恋人に慣れないと言われた。そして、小梢とも付き合えない。いつか僕にも、普通の恋愛ができる日が来るのだろうか?
「でも、ミカン先輩が言っても説得力ないかと」
「そうですね。ワタシも今度好きな人ができたら、素直になります」
「ミカン先輩なら、引く手あまただと思います」
この爆乳は、男なら放っておけないだろう。それに童顔で可愛い美栞にアプローチをかけてくる男性は、いくらでもいると思った。
「ワタシがノーベル賞を受賞したら、森岡は自慢して良いですよ」
「ええ、マスコミにミカン先輩の初めての男は僕だって、インタビューに答えますよ 笑」
「アナタ、やはり、ふざけてますね」
「真面目ですよ。 ミカン先輩がノーベル賞を受賞して会見を開いているシーンを思い浮かべてました」
「森岡……」
美栞は、自ら唇を合わせてくる。
(さようなら……、ミカン先輩)
惜別のキスなのに、小梢の時と違い、悲しみはなかった。
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