官能小説 バス通りの花屋 夫婦の愛とは

小笠原雅

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俊太 寝取られて見えて来る物

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5、俊太

 ここは人が居るけど静かな空間。
 都心のインターネットカフェの個室でパソコンを見つめている。みんなヘッドホンを付けて漫画を読んだり、夢中になって人を殺すゲームをしているのだが、気配を押し殺す静けさがある。

 カップ麺の強制的な匂いが広がる。啜る音を聞くと腹が減りましたと胃袋が鳴く。

 山崎俊太は46歳システムエンジニアだ。妻の由美はバス通りの花屋で店長をしている。

 妻の由美が浮気をしているのを気がついたのは一月前。下着が派手になり化粧もきつく綺麗になった。スマホのロック設定は俊太がしてあげたので簡単に解除できる。
 スマホの中の写真には、いっぱい証拠が残っている。相手特定する為に興信所に頼んで見た。

 さっきまでその事務所で写真見せて貰ったり相手の素性教えて貰ったり弁護士の紹介もして貰った。

 今はその動画のデータを見直している。どうしてか怒りが湧いて来ない。

 幸せそうな由美がいる。由美が幸せそうなのを見るのは好きだ。

 だけど由美の目の中で、この世界で、男はそいつしかいない。自然に抱きついたり、腕に触れたり歩く足の幅が一緒だったり。

 そこには自分がいるはずなのに!俺はこんな場所で由美を観ている。

 激しく嫉妬の気持ちが湧き上がり目眩がするけど、怒りが出て来ない。俺は男としてどうなのかって自分を責める気持ちが強い。

 由美のスマホを初めて観た時の衝撃は凄かった。裸でイスに座りながら両方の足もイスに乗せて膝を大きく広げている。しっかりと膝を手で掴んで広げてる。乳房は両側に垂れて広がり、突起は硬くなってる。
 お腹の肉がダブついて皺になって醜い。股の亀裂が剥き出しになり、合わさる肉を全て押し出す様になっている。牡丹の華の様に女の印が綺麗だ。由美が興奮しているのがわかる。
 牡丹の華は可愛く口を開けて中から白い液体を流していた。

色白の肌が綺麗だった。

 顔は少し横に向けてはにかんだ表情が窺える、ハッキリと男の体液だとわかる白い筋が頬を伝っている。

 どう見ても由美だ。太ももの付け根にあるほくろがそれを確信させる。悔しいがホクロが愛液で濡れている。
 俊太はその写真を見て勃起した。堪らない興奮で最近になく勃起したシンボルを少し擦るだけで情けなく射精した。

 何度でも復活する自分の欲望にビックリした。

 今ならわかる。由美のスマホを握って、由美に命令して写真を撮っている男が誰か、どれだけ由美が熱病に犯されているか。


「もう全て証拠は揃いました。」
 タバコくさい事務所の中で、薄暗い蛍光灯の灯ボヤける。弁護士は人間の汚い所をその背広で拭った様に見えるヨレた上着を、両手で引っ張る様にしながら言った。
 
 続けて聞いて来たことは。

「後は由美を追い出すかどうか。慰謝料をいくら貰うか。アルバイトの親を呼びつけて慰謝料をいくら貰うか?」と言う事らしい。

 何か切なくなってしまう。

このままでは駄目だ。何より自分が壊れてしまう。

 今の夫婦の間は俊太が遅く帰ると言う理由でベッドは別にしたが。ちゃんと飯の用意はされていて、風呂も沸いている。

 とっても遅くなる時は連絡してくれるし泊まりの時も信用しているので許して来た。

 由美のいない毎日を考える。

 ドアを開けたら真っ白な冷たい世界しか見えて来ない。どこか箸で掴もうと思った物がどんどん滑って遠くに行く感じがする。制裁を与えるって事は由美を諦めると言う事だ。

「山崎さん」
 考え込んだ俊太を呼び返して来た。弁護士が言うには内容証明書付きの訴状が相手に送られて、それから弁護士事務所で話し合いが行われるらしい。

「そうですか」
 放心状態のまま事務所後ろ後にした。


 今日は早く仕事を終わらせた。弁護士のうち合わせの為に半休を取ったのだ。
 簡単なうち合わせなのにずいぶんと時間を使って気がつけばもう夕方になっていた。

 由美にLINEを入れて早く帰れそうだと伝えた。返信は来ない。

 でも早く帰れても、由美の顔を見れるのか?わからない。

 都心からの急行列車は止まるとすぐに多くの会社員を掃き出す様にドアを開ける。

 中にいた者はその勢いで階段を降りて我が家に向かうのだ。帰って酒でも飲もうと駅前のスーパーに入る。

 いつもの時間と違って主婦も多い。俊太の帰る遅い時間、疲れた男達が肩を落として見切り品の惣菜を眺めている風景はここにはない。

 見覚えのある女性が立っている。青いボタンダウンのシャツ、スキニーのパンツ髪を後ろに束ねた女性と目があった。

 彼女の口から名前を呼ばれた。
 反応してその女性を見てつぶやいた。
「美月さん?」


6、妻と女と

 美月は盛り花の注文を完成させてレジの方に向かった。
 今は客はいない。取り置き棚に飾る様に置いて新しい伝票に目を通している。

 後ろからレジ担当の末永さんに話しかけられた。
「美月さん今良いですか?」
 振り向いて彼女の方を見た。
「私この店を辞めようと思ってるんです」
「え、何を言ってるの?」
「店長と新井くんなんかおかしいですよね、美月さんもわかっているんでしょう?」

 はっとした。

「清潔、清楚が花屋の売りでしょ。不倫が嫌いな主婦層にバレたらこの店終わりですよね」
 続けて美月を睨んで言った。
「新井くんの態度が日に日に変わってるんです。店長の後ろでわがままな対応をするようになって困ってます」

 美月は呆れて言った。
「そっか隠れたつもりでコソコソやってるのは知ってるよ。これが本店に知れたらこの店閉鎖だなぁと思うよ、私だけなら良いけど末永さんまで気付いるならまずいよね」

 あの2人は倉庫でやってるだけなので客には分かりづらいから、タイミング見てとは思った。
 それに、美月には被害が及ばないから深く考えて無かった、この手の話に入り込みたくは無い。
「だけど困ったもんだなぁ」
 末永さんの顔を見て本気なんだと感じた。

 相手は店長だし言うべきか?

 バレないように楽しくやってくれよ、私はいいんだけどなぁと思っても、世間ではそうはいかない、なんかやるせない気持ちだ。

「ご苦労様でした」いつもの声がする。
 店長がレジの交代に来たので終わらしてもらうことにした。シフトじゃないのに新井君が来ている。
「後はやっと来ますよ」と新井くんが声をかけてきた。
「それじゃお願いします」もう末永さんは店長の顔を見るなり先に終わって店には居なくなった。
「店舗の片付けはやっときます」
 山崎さんが優しく言うので帰る旨を伝えてエプロンを外した。

 わざわざ新井くんが帰ってくるなんてまた今日もおっぱじめるんだろうか。と思いながら美月は店を出ることにした。
 たぶん店長にクレームを言ったところで何も解決しない。あの2人が今切れることなんてないだろう。

 新井くんに新しい彼女が出来たみたいで、山崎さんはそれが気になってたまらないらしい。未練たっぷりのご様子で何かと新井くんにベタベタくっついている。

「あーどうしたもんか」と思いながら駅前のスーパーに美月は買い物しに向かった。この時間は買い物客が多い美月と同じパート帰りの主婦は多いからかも。
 一通り見て回った後にスーパーの中で見覚えのある横顔がある。
 あれは山崎さんの旦那さんの俊太さんみたいだ。お惣菜を選んでいる姿は、全く雲オーラがなく冴えない感じだ。
 美月の知っている彼はよく笑う人で、美月を家に招待して一緒に食事を振る舞ってくれたり、店のみんなでバーベキューに行ったりもした。
 その時は笑わせてくれた明るい印象がある。さっきからお惣菜を手に取ってじーっと見つめるだけで、籠の中に入れようしない。
何か考え事があるのだろう。
 ちらっと彼がこちらを見て目が合ってしまった。つい「山崎さんですよね」と声をかけてしまう。
 彼も私の顔覚えてくれた様で、
「そうですよ」元気なく答えが帰って来た。

 俊太が美月の顔を見ても思い出すのに時間がかかった。重い空気が流れた後
「美月さんでしたよね」
 元気のない声で答えた。

 少し間が開いてから、俊太は急に美月の腕を掴んで
「話しを聞いて貰えませんか」
 美月は真面目な顔で
「主婦はこの時間とっても忙しいんです」
 美月は振り払う様に身を捩って逃げようとした。焦った俊太は追い縋るように、
「忙しいのはわかってます。でもどうしても相談に乗って欲しい」

「旦那と娘が待っている主婦に、この夕方、夜の7時に時間を作れと、あなた本気で思ってるんですか?」
 睨み付けるように美月は俊太を見た。しょぼくれた山崎はうつむいている。
「そうですよね当然です」
「でも、1つだけ聞いていいですか?うちの家内のことを美月さんご存知ですよね?」
 俊太はさっきまでとは目の輝きが違う。

 そうかもう俊太さんを知っているんだ。実際この夫婦がどうなっていくのかとっても知りたいと思った。さっきはきつめに言ってみたが実は今日は帰る時間はそう急がない。ちょっとぐらいの話を聞くぐらいなら大丈夫だ。
「俊太さんの聞きたい話の内容わかってます。この近くの喫茶店だったら人の目もありますし、駅前から外れた公園で話をしましょう。」と美月は言った。
 俊太は「そうしましょう」と相槌を打ち、「その時飲みましょう」とビールを2本つかんで「あなたも飲むでしょう?」と言って子ども見たいに微笑みかけてきた。
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