裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

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災厄の壺

災厄の壺 7

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 そんなやり取りの中、ムツヤは後ろから人の気配を感じ取っていた。キエーウの増援かと思いパッと向くと

「ヨーリィ!?」

 ヨーリィがちょこんと居た。長い黒髪が月明かりを受けてキラキラと輝いている。

「あぁ、例の枯れ葉少女だね、残念だけど死んでもらうよ」

 毒の風がヨーリィを襲う。

「ヨーリィィィ!!!」

 ムツヤはヨーリィを押し倒して避けようとするが間に合わない。毒の風を受けてヨーリィの髪と服が激しくはためく。

 しかし、倒れるでもなくヨーリィはその場に立ち続けていた。

「ヨーリィ、大丈夫なのか!?」

「私はもう死んでいますから」

「やれやれ、これはまずい事になったね」

 まるで他人事のように銀髪の少年は言うと、ムツヤは微かに勝機を感じる。

「ヨーリィごめん、俺じゃ近寄れないんだ!!」

「はい、任せてお兄ちゃん」

 右手に短剣を、左手に木の杭を持ち、少年に向かって走った。

 まずは木の杭を投げるが、風で吹き飛ばされてしまう。その風が止んだ後にヨーリィが飛びかかる。

「無駄だよ」

 少年の後ろから突風が吹いて、体の軽いヨーリィは吹き飛ばされた。

 その間にも木の杭を投げ続けたが、届かずに終わる。

 着地したヨーリィの体は所々が枯れ葉に変わっていた。

 風魔法とは本来、風の中に毒や砂粒、小石を混ぜてそれで攻撃するものなのだ。

 少年は実に風魔法の基本に忠実な戦いをしている。風の中に混じった小石がヨーリィの体を傷つけていた。

 ムツヤは覚悟を決めた。あの少年は手加減して勝てる相手じゃない。遠距離で攻撃力の強い魔法の詠唱を始める。

「させないよ」

 そんなムツヤを見逃すわけもなく、毒の風が襲いかかった。

「くそっ」

 詠唱をしながらムツヤはそれを躱す、動きながら高度な魔法の詠唱は上位の魔法使いでも中々出来る者は居ない。

「やっぱり、お嬢ちゃんより君の方が先みたいだね」

 少年はデタラメに攻撃をしているわけでは無かった、ムツヤを取り囲むように毒を散布していたのだ。

 気付いたムツヤは上空高く飛んで逃げようとしたが、もうドーム状に毒が蔓延してしまっていた。

「おしまいだね」

 少年は毒のドームをギュッと小さくして言う。中に人間が居たら絶対に助からないだろう。

――

――――

――――――

「次はお嬢ちゃんの番だ」

 ヨーリィに毒が効かないことを知った少年は腕輪を光らせた。すると毒は消えて無くなる。

 これで風の魔法に専念できると思った矢先に気付いたことがあった。

 ムツヤの死体が無い。少年はハッとし周りを見渡しながらまた毒を撒き散らす。

 前、左、右、居ない。後ろ、上空にも居ない。嫌な予感がする。

 そして、下を見る。そこから湧いて出た土くれの化け物に少年はバクリと食われた。
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