裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

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魔人ナツヤ

魔人ナツヤ 5

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 アシノは連絡石を使い、冒険者ギルドへ緊急の信号を送った。魔人が王都の方面へ飛び去ったと。

 これで各地の冒険者ギルドや治安維持部隊を経由して王都に連絡が行くだろう。




 数時間もしない内に魔人襲撃の連絡が着いた王都は、蜂の巣を突いたような騒ぎになっていた。

 近衛兵長カミトが王の耳にその知らせを入れると、はぁーっと深いため息を付いて言う。

「また魔人か……。アシノとイタヤが居ながら魔人を逃すとは、情けない」




 その日の内に対策本部が出来た。サツキとカミトも居る。

 そこでは様々な可能性について話し合いが始まった。

「以前の魔人のように魔物を操るとなると、勇者様方が持つ試練の塔で得た武器のみが効く魔物が現れるのではないでしょうか」

 国会議員の一人が言うと、軍の上層部が頷く。

「その可能性は多いにあります」

 それを聞いて、防衛大臣は話し始める。

「こうなってしまっては、例の部隊を出撃させるを得ないのではないでしょうか?」

 全員に緊張が走った。その例の部隊とは……。

「魔人の残した武具を使う部隊。今だ公にはしていない彼らをですか」

 王都の研究者達は魔人の残した武具を研究していた。

 そして、おおよその使い道が分かった物を試験的に実力者に使わせていたのだ。

「なっ、いつの間にそんな部隊を!?」

 サツキが動揺して言った。

「隠していた訳ではないのですが……。実用出来るようになった時、お話しようと思っておりました」

 防衛大臣がサツキに頭を下げる。納得がいかない様子のサツキは続けて言う。

「今だ謎が多い魔人の残した武具を使用するのは、危険ではありませんか?」

 最もな意見が飛んだが、防衛大臣は言葉を返す。

「ですが、普通の軍隊では犠牲者も多く出るでしょう。それに試し打ちには、不謹慎かもしれませんが、ちょうど良い機会です」

 全員が黙った。確かに、魔人相手ならば、こちらもそれなりの力を使いたい。

「街に居る勇者はサツキ様一人。アシノ様とイタヤ様の到着は急いでも二日後になります」

 ダメ押しとばかりに防衛大臣は苦しい状況を語る。

「分かりました。私はその部隊を出すことに賛同をします」

 一人の議員がそう言う。その後の投票で、対策本部に居る八割が部隊の出撃に賛成した。



「ってな事がありまして……。私も気付けずに申し訳ありませんでした!!」

 馬車の中でサツキの謝罪が響く。

「いや、仕方ないだろう。隠されてたんじゃ」

 そうは言ったがアシノは焦っていた。今は魔人という敵が居るが、居なくなった場合。戦争の火種になるのではないかと。

「とにかく今は魔人を倒すことだけを考えなくちゃな」

 アシノはそう自分自身にも言い聞かせた。
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