裏庭が裏ダンジョンでした@完結

まっど↑きみはる

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魔人ナツヤ

魔人ナツヤ 6

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 王都は静まり返っていた。城門は閉められ、人々も屋内に避難するよう命令される。

「魔人らしき者を確認しました!!」

 千里眼持ちの兵が言う。軍隊にも、サツキ達にも緊張が走った。

 翼竜に乗ったナツヤが肉眼でも確認できる距離までやって来る。

「放て!!」

 城壁から魔法が飛び出す。火、氷、雷が翼竜を襲った。

 しかし、それらは軽々と弾かれ、どんどんナツヤはこちらに向かってくる。

 その魔法を放つ後ろで、上級兵の二人が杖を握っていた。

「いくぞ!!」

 一斉に魔力を込めると、光線が一直線にナツヤに向かって飛び、翼竜を撃ち落とす。

「こ、これが魔人が残した武具の力……」

 一般の兵隊長が思わず言葉を漏らす。ナツヤは地面に激突しそうになるが、その途中で巨大なスライムを召喚し、その中に入り込む。

 無傷で地面に降り立ったナツヤは、次々に魔物を召喚する。

「私達が行きます!!」

 サツキ達が城門を飛び出て魔物の群れに突っ込む。鋭いナイフ『カタトンボ』を持つカミクガが雷を散らしながら魔物を切り裂く。

「兵の皆さん、続いて下さい!!」

 ウオオォォ!!! と声を上げながら、サツキを先頭にして軍隊が動く。

 白兵戦が始まった。ナツヤの召喚する魔物は一般の武器でも倒せるらしく、ギチットの兵達は勇敢に戦っていた。

 だが、倒しても倒しても次々に押し寄せる魔物に、段々と士気が落ちていく。

 そこへ、裏の道具を持った特殊部隊がやって来た。

 一人の兵が弓に矢をつがえて放つと、それは空中で百本に増えた。魔物達を串刺しにする。

 また、別の兵が天高く杖を上げると、雷が空から落ちてきた。

 次は火の玉が数百発。氷の巨大な剣が、竜巻が、魔物達を蹴散らしていった。

 サツキは思う。今は心強いが、この力が同じ人間に向かって使われたらと。

 前線で戦うサツキはナツヤの目前まで来た。声の拡声魔法を使い最後の勧告をする。

「もうこれ以上抵抗しないで下さい!!」

「お前、勇者か?」

 ナツヤは短い言葉で尋ねた。

「そうです。勇者サツキです」

「そうか、ならば言おう。俺こそが真の勇者、ナツヤだ」

 サツキは歯を食いしばり、言う。

「人を傷つけて、何が勇者だ!!」

「それならば俺も言おう。弱い者を助けなくて何が勇者だ!!」

 うっと言葉に詰まりそうになったが、サツキは剣を構えて言い返す。

「あなたの生い立ちは、少しですが聞いています。同情はしますし、国のそういった問題を解決出来なかった事を私は恥じます」

「ならば、一緒に国を変えましょう」

 ナツヤは笑顔でそう話す。

「あなたがしている事はただの無差別な破壊だ!!」

「こんな国、守る価値がありますか?」

 サツキは魔剣『カミカゼ』を取り出して力を込める。

「少し、痛いですよ?」

「分かり合えなければ、残るのは殺し合いですね」

 ナツヤは再び翼竜を召喚して上空へ羽ばたき、火の玉をサツキに向かって吐かせた。

 それに対し、剣を数回ふるい火の玉を消滅させ、サツキは魔剣で上昇気流を作り、空へと舞い上がる。

 二刀流のサツキは腕を開き、思い切り魔力を込めた。剣には竜巻がまとわり付き、竜の体を抉る。

 たまらず咆哮を上げた後、竜は消滅した。落下するサツキは地面に向けて風を放ち、フワリと着地する。

 そんな芸当が出来ないナツヤは地面に叩きつけられそうになるも、またスライムに包まれ無傷だった。

「やりますね」

 土埃の中からナツヤが現れた。そして、手を天高く上げる。

 次の瞬間だった。カマキリやアリ、ハチなど虫を模した巨大な魔物達がサツキを取り囲む。

「っく……」

 一体一体戦えば、余裕で勝てるだろうが、いくらなんでも数が多すぎる。

 そんな時だった。虫の魔物が弾け飛んだ。その方向を見ると。

「遅くなりました」

 元勇者トチノハと仲間達が立っていた。

「トチノハさ……、トチノハ!! 何をしに来たのですか!?」

 一応、敵同士ということになっているので周りの目を気にしてサツキは言う。

「まぁまぁ、今は魔人に集中しましょう」

 トチノハの仲間であるエルフの『キヌ』がサツキに言った後で、トチノハはナツヤに向かって語りかける。

「ナツヤさん……。で良かったかな? 実は私も虐げられていた亜人と共に国を変えようとしていたんですよ」

 協力関係にあるとは言え、いつトチノハが裏切ってもおかしくはない状況だ。

 そんな中、そのような事を言い出したのでサツキはまさかと思った。

「確かに今の国王は牛の糞以下です。ですが、あなたのやり方は、あまりにも一般の国民を犠牲にしすぎる」

「黙れ、知ったような口を効くな!!!」

 ナツヤは虫の魔物を仕向けるが、トチノハの爆破魔法で木端微塵に吹き飛んでいく。

「あなたは勇者として止めなくてはいけない」

 トチノハはナツヤに矢を放つと、魔物が前へ出て体で受け止めた。

「サツキさん。狙うなら恐らく本体です。彼は魔物を使う力はあっても、本人はそこまで強くない」

 トチノハの言葉にサツキは軽く頷く。

「面白そうな事になってますねー」

 魔物達を切り裂く稲光。カミクガと聖女クサギもサツキの元までやって来た。

「とにかく魔人に攻撃を入れるぞ!!」

 クサギが全員に支援魔法を掛ける。皆、体が軽くなるのを感じた。

 キヌが矢で魔物を射止め、モモの父親であるオークの『ネック』は大剣で魔物を斬り捨てていく。

 カミクガが道を切り開き、その後ろをサツキとトチノハが走る。

 ナツヤを守ろうと前に出てきた魔物を爆破魔法で消し飛ばし、その空いた隙間からサツキが飛び出た。

 サツキの剣は一直線にナツヤの首を捉え。



 喉仏を貫いて、串刺しにした。
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