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正反対な2人
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吉田瑛菜は、幼い頃から結婚願望だけは強かった。幼稚園の時の夢は「お嫁さんになりたい」だったし、花嫁修業も一通りした。憧れだったウェディングプランナーにもなり、充実した日々を送っていた。唯一、結婚相手だけが見つからないだけで…。
「どうしてダメンズばっか引き寄せるのよぉ」
28歳の誕生日。瑛菜は5人目の彼氏と大ゲンカの末別れた。居酒屋で親友の亜樹に愚痴れば、呆れたような声が返ってきた。
「男の好み変えなって言ってるでしょ?いっつもワンパターンなんだから」
「だってぇ」
人の好みとはそうそう変わらない。瑛菜だって、変えられるものなら変えたい。
「ねぇ。いっそのこと、お見合いしてみない?紹介するよ」
「お見合い?なんかやだなぁ」
「早く結婚したいんでしょ?」
酔った勢いもあり、瑛菜はお見合いすることになった。
「はじめまして」
相原和仁。大手建築会社のエースで、かなりの高学歴。五か国語を操り、スポーツはプロ級。おまけにかなりのイケメン。瑛菜の心は踊った。が、これまでの経験を踏まえて慎重にいくことにした。
「あの、いくつか質問してもいいですか?」
「はい。なんでも聞いてください」
ここから、瑛菜の怒涛の質問攻めがスタートした。
「朝はパン派?ご飯派?」
「ご飯派です」
瑛菜は内心チッと舌打ちをした。瑛菜は朝はもっぱらパンなのだ。だが、まだまだ項目はある。
「海派?山派?」
「山が好きです。年に一度は登山にも挑戦しています」
「そ、そうですか」
瑛菜は山が大の苦手だった。虫はいるし暑いし、何よりも疲れる。
「つぶあん派?こしあん派?」
「こしあんです」
「えーっ、粒の歯触りがたまらないのにぃ」
思わず大声を上げれば、和仁がプッと吹き出した。緊張感が一気に緩む。
「僕達、正反対ですね」
「…そうですね」
瑛菜はガッカリした。共通点が多ければ多いほどうまくいくと思っていた。これまでダメンズばかりだったのは、この共通点が少なかったからだと決めつけていた。だが、和仁の考えは違ったようだ。
「僕達、きっといい夫婦になれますよ」
「え?こんなに正反対なのに?」
「正反対だからうまくいくと思うんです。僕が知らない世界は瑛菜さんに教えてもらいます。そして、瑛菜さんが知らない世界は僕が教えます」
ニッコリ笑った和仁に、瑛菜は「変な人」と心の中だけで呟いた。その変な人に惹かれている自分も、相当変だと自覚しながら…。
そして瑛菜は和仁との結婚を決めた。条件は、嫌になったら即離婚ということで。
「…まさか30年もあなたといると思わなかったわ」
瑛菜が言えば、和仁がニコニコと笑う。テーブルには、日本茶とコーヒーが同じマグカップに注がれている。そして、お茶菓子にはカラフルなマカロン。何もかも正反対な2人は、互いの共通点を見つけ出すことを楽しみにしていた。
「だから言ったろ?正反対の方が面白いって」
壁には大きなウェディングフォトが飾られている。ウェディングドレスの瑛菜と、紋付き袴の和仁。なんともミスマッチな写真だが、瑛菜の大のお気にいりの1枚だ。
「私はあなたから和歌の奥深さを教えてもらったわ」
俳句よりもテーマが自由な和歌は、瑛菜の性格によく合っていた。今では和歌専門誌で連載を持つまでになっている。
「僕は君からモダンジャズの楽しみ方を教えてもらった」
決められたコードにとらわれず、自由にメロディを表現するモダンジャズ。和仁はすっかりその魅力にのめり込んでいる。年に一度はニューヨークへ足を運び、本場の音色に耳を傾けている。
「私達、これからもきっと何もかも正反対なんでしょうね」
「そうだね。そしてまた新しい楽しみを見つけていくんだ」
これまでダメンズばかりと付き合ってきた瑛菜だが、自分にも落ち度があったことを今更ながら気がついた。
共通点ばかり気にして、自分の趣味や思考を押し付けようとしていた。
もっと相手のことを理解しようと思えればよかった。
「どうかした?」
和仁の声に瑛菜が笑う。
「なんでもないわ。和仁、私もお茶を飲んでみようかな」
「じゃ、僕はコーヒー」
瑛菜はその後も和仁との生活を楽しんだ。年齢を重ねても、2人は楽しみを探し続けたのだ。
「どうしてダメンズばっか引き寄せるのよぉ」
28歳の誕生日。瑛菜は5人目の彼氏と大ゲンカの末別れた。居酒屋で親友の亜樹に愚痴れば、呆れたような声が返ってきた。
「男の好み変えなって言ってるでしょ?いっつもワンパターンなんだから」
「だってぇ」
人の好みとはそうそう変わらない。瑛菜だって、変えられるものなら変えたい。
「ねぇ。いっそのこと、お見合いしてみない?紹介するよ」
「お見合い?なんかやだなぁ」
「早く結婚したいんでしょ?」
酔った勢いもあり、瑛菜はお見合いすることになった。
「はじめまして」
相原和仁。大手建築会社のエースで、かなりの高学歴。五か国語を操り、スポーツはプロ級。おまけにかなりのイケメン。瑛菜の心は踊った。が、これまでの経験を踏まえて慎重にいくことにした。
「あの、いくつか質問してもいいですか?」
「はい。なんでも聞いてください」
ここから、瑛菜の怒涛の質問攻めがスタートした。
「朝はパン派?ご飯派?」
「ご飯派です」
瑛菜は内心チッと舌打ちをした。瑛菜は朝はもっぱらパンなのだ。だが、まだまだ項目はある。
「海派?山派?」
「山が好きです。年に一度は登山にも挑戦しています」
「そ、そうですか」
瑛菜は山が大の苦手だった。虫はいるし暑いし、何よりも疲れる。
「つぶあん派?こしあん派?」
「こしあんです」
「えーっ、粒の歯触りがたまらないのにぃ」
思わず大声を上げれば、和仁がプッと吹き出した。緊張感が一気に緩む。
「僕達、正反対ですね」
「…そうですね」
瑛菜はガッカリした。共通点が多ければ多いほどうまくいくと思っていた。これまでダメンズばかりだったのは、この共通点が少なかったからだと決めつけていた。だが、和仁の考えは違ったようだ。
「僕達、きっといい夫婦になれますよ」
「え?こんなに正反対なのに?」
「正反対だからうまくいくと思うんです。僕が知らない世界は瑛菜さんに教えてもらいます。そして、瑛菜さんが知らない世界は僕が教えます」
ニッコリ笑った和仁に、瑛菜は「変な人」と心の中だけで呟いた。その変な人に惹かれている自分も、相当変だと自覚しながら…。
そして瑛菜は和仁との結婚を決めた。条件は、嫌になったら即離婚ということで。
「…まさか30年もあなたといると思わなかったわ」
瑛菜が言えば、和仁がニコニコと笑う。テーブルには、日本茶とコーヒーが同じマグカップに注がれている。そして、お茶菓子にはカラフルなマカロン。何もかも正反対な2人は、互いの共通点を見つけ出すことを楽しみにしていた。
「だから言ったろ?正反対の方が面白いって」
壁には大きなウェディングフォトが飾られている。ウェディングドレスの瑛菜と、紋付き袴の和仁。なんともミスマッチな写真だが、瑛菜の大のお気にいりの1枚だ。
「私はあなたから和歌の奥深さを教えてもらったわ」
俳句よりもテーマが自由な和歌は、瑛菜の性格によく合っていた。今では和歌専門誌で連載を持つまでになっている。
「僕は君からモダンジャズの楽しみ方を教えてもらった」
決められたコードにとらわれず、自由にメロディを表現するモダンジャズ。和仁はすっかりその魅力にのめり込んでいる。年に一度はニューヨークへ足を運び、本場の音色に耳を傾けている。
「私達、これからもきっと何もかも正反対なんでしょうね」
「そうだね。そしてまた新しい楽しみを見つけていくんだ」
これまでダメンズばかりと付き合ってきた瑛菜だが、自分にも落ち度があったことを今更ながら気がついた。
共通点ばかり気にして、自分の趣味や思考を押し付けようとしていた。
もっと相手のことを理解しようと思えればよかった。
「どうかした?」
和仁の声に瑛菜が笑う。
「なんでもないわ。和仁、私もお茶を飲んでみようかな」
「じゃ、僕はコーヒー」
瑛菜はその後も和仁との生活を楽しんだ。年齢を重ねても、2人は楽しみを探し続けたのだ。
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