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第三章
第四十四話「本当の婚約者」
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結月は自室で静かに考え込んでいた。
(どうすれば暴走しなくなるんだろう……)
涼風家の蔵へ行った後も結月は妖魔退治に奔走していたが、集中できないでいた。
暴走することへの恐怖。そこからうまく力を発揮できずにいた。
(こんな時、朔様なら……)
また、朔のことが頭に浮かんでいた。
同じ『イグの行使者』として力を使いこなす朔は、結月にとって目標でもあり憧れでもあった。
(今行ったら迷惑かな……?)
夜も深めの時間になっていた。
朔はまだ起きてはいるだろうが、こんな時間に訪問は迷惑だろう。
だが、どうしても今夜の結月は朔に会わずにいられなかった──
──────────────────────────────
(結局朔様の自室前に来てしまった……)
婚約者なのに知らないのは不自然だからという理由で朔の自室の場所は伝えられていた。
(やっぱり帰ろう……)
結月は自室に向けて足を進めた。
「いつまでそこにいるつもりだ」
「──っ!!」
朔の声が部屋の中から聞こえた。
結月の気配が朔にはわかっていた。
結月は中をうかがうようにそっとふすまを開ける。
そこには縁側に一人座って月を眺める朔がいた。
「朔様、夜遅くに申し訳ございません」
「かまわん」
遠慮しがちにふすまの前で立っていると、朔が縁側に来いと促す。
結月はその言葉に従い、朔の横に座った。
「力の暴走のことだろう」
「……はい。自分でもどうしていいかわからず、朔様なら……『イグの行使者』の力を正しく使う朔様にご助言をいただきたく……」
結月は堰を切ったように話し出した。
もはや自分では抑えられない感情を自分自身でも驚くほど朔にぶつけていた。
朔はその話を黙って聞いていた。
「自分自身が怖くて……暴走してしまう恐ろしさとそれを抑え込みたい気持ちで……」
結月は次々と話す。
「私は私の力がわかりません!私はいつか自分の力を制御できずに、皆さんを傷つけてしまうのではないかと。私は【刀】になると決めました。その【刀】が役に立たないなんて、意味がありません!私は……私は……」
その時、朔が結月を勢いよく抱き寄せた。
自分の胸に結月の顔を押し当て、結月の気持ちを包み込むように抱きしめた。
その瞬間、結月の頬を涙が伝う──
どれだけの時間が二人の間に流れただろう。
朔がおもむろに口を開いた。
「お前は弱くない。それに一人でもないだろう」
結月は初めての朔の様子に戸惑いながらも、黙って身をゆだねていた。
「お前はお前でいろ。暴走したら俺が止めてやる」
結月を気遣い、朔は一度暴走を止めたこともそれで自身が傷ついたことも伏せていた。
少し結月を自分から離すと結月の目を見る。
結月の涙を親指で軽くなぞるように拭うと、朔はもう一度口を開いた。
「治癒の力を発揮することができれば、お前はおそらく力の暴走を止められる」
「治癒の……力……?」
それは結月が涼風家の蔵で見た書物に書いてあった力である。
「治癒は抑制の効果がおそらくある。強すぎる攻撃性と対になるはずだ」
結月は黙って聞いていた。
つまり二つで一つの力だというのが朔の考えであった。
「私、治癒の力を発現できるようにします」
「ああ、お前ならできる」
わずかだが朔が結月に初めて笑顔を見せた。
その笑顔に結月の胸は高鳴っていた。
二人の様子はまるで本当の婚約者のようだった──
(どうすれば暴走しなくなるんだろう……)
涼風家の蔵へ行った後も結月は妖魔退治に奔走していたが、集中できないでいた。
暴走することへの恐怖。そこからうまく力を発揮できずにいた。
(こんな時、朔様なら……)
また、朔のことが頭に浮かんでいた。
同じ『イグの行使者』として力を使いこなす朔は、結月にとって目標でもあり憧れでもあった。
(今行ったら迷惑かな……?)
夜も深めの時間になっていた。
朔はまだ起きてはいるだろうが、こんな時間に訪問は迷惑だろう。
だが、どうしても今夜の結月は朔に会わずにいられなかった──
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(結局朔様の自室前に来てしまった……)
婚約者なのに知らないのは不自然だからという理由で朔の自室の場所は伝えられていた。
(やっぱり帰ろう……)
結月は自室に向けて足を進めた。
「いつまでそこにいるつもりだ」
「──っ!!」
朔の声が部屋の中から聞こえた。
結月の気配が朔にはわかっていた。
結月は中をうかがうようにそっとふすまを開ける。
そこには縁側に一人座って月を眺める朔がいた。
「朔様、夜遅くに申し訳ございません」
「かまわん」
遠慮しがちにふすまの前で立っていると、朔が縁側に来いと促す。
結月はその言葉に従い、朔の横に座った。
「力の暴走のことだろう」
「……はい。自分でもどうしていいかわからず、朔様なら……『イグの行使者』の力を正しく使う朔様にご助言をいただきたく……」
結月は堰を切ったように話し出した。
もはや自分では抑えられない感情を自分自身でも驚くほど朔にぶつけていた。
朔はその話を黙って聞いていた。
「自分自身が怖くて……暴走してしまう恐ろしさとそれを抑え込みたい気持ちで……」
結月は次々と話す。
「私は私の力がわかりません!私はいつか自分の力を制御できずに、皆さんを傷つけてしまうのではないかと。私は【刀】になると決めました。その【刀】が役に立たないなんて、意味がありません!私は……私は……」
その時、朔が結月を勢いよく抱き寄せた。
自分の胸に結月の顔を押し当て、結月の気持ちを包み込むように抱きしめた。
その瞬間、結月の頬を涙が伝う──
どれだけの時間が二人の間に流れただろう。
朔がおもむろに口を開いた。
「お前は弱くない。それに一人でもないだろう」
結月は初めての朔の様子に戸惑いながらも、黙って身をゆだねていた。
「お前はお前でいろ。暴走したら俺が止めてやる」
結月を気遣い、朔は一度暴走を止めたこともそれで自身が傷ついたことも伏せていた。
少し結月を自分から離すと結月の目を見る。
結月の涙を親指で軽くなぞるように拭うと、朔はもう一度口を開いた。
「治癒の力を発揮することができれば、お前はおそらく力の暴走を止められる」
「治癒の……力……?」
それは結月が涼風家の蔵で見た書物に書いてあった力である。
「治癒は抑制の効果がおそらくある。強すぎる攻撃性と対になるはずだ」
結月は黙って聞いていた。
つまり二つで一つの力だというのが朔の考えであった。
「私、治癒の力を発現できるようにします」
「ああ、お前ならできる」
わずかだが朔が結月に初めて笑顔を見せた。
その笑顔に結月の胸は高鳴っていた。
二人の様子はまるで本当の婚約者のようだった──
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