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第三章
第五十六話「帰還」
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治療の準備を終え、妖魔の気配が消えたのを確認すると、そっと胸をなでおろした。
(全員無事のようですね……)
凛が安心したように一息ついたのを見ると、実桜と蓮人も顔を見合わせて微笑み、頷いた。
やがて、琥珀の姿を遠くに確認した凛。
琥珀は凛のもとへ降り立つと、ゆっくりと結月を降ろした。
「ありがとう、琥珀」
結月は琥珀をなでながら、運んでもらった礼を告げる。
「ありがとうございます、琥珀。結月さんのことは責任をもって傷の手当をいたしますので、朔様のところに戻ってよいですよ」
「く~ん」
凛の言葉に安心したように、琥珀は再び主人のもとへと飛んでいった。
「さあ、またこれはひどい怪我ですね」
「すみません、私の力が至らないばかりに……」
「いいえ。無事ならそれで良いのですよ。永遠(とわ)と美羽さんには手当の準備を頼んでおりますので、ゆっくり休んでください」
「はい、ありがとうございます」
結月は右肩を抑えながら、ゆっくりと廊下に向かって歩き出した。
蓮人が心配そうにその様子を眺める。
「蓮人、永遠(とわ)と美羽さんのところまで一緒に行ってもらえますか?」
「──っ! かしこまりました」
蓮人は自分の思考を読まれたことに、驚きを隠しきれなかった。
「結月さんだけが戻ったということは、朔様と瀬那も無事なはずです。実桜、念のため医療班に連絡をお願いします」
「かしこまりました」
実桜は軽く頭を下げると、凛のもとを離れて連絡に向かった。
(さて、朔様と瀬那の帰りを待ちますか)
──────────────────────────────
朔と瀬那のもとに、結月を送り届けた琥珀が帰ってきた。
主人のもとに身を寄せると、そのまま座って指示を待つ。
「瀬那、帰るぞ」
「はいっ!」
朔と話したことで自信を取り戻した瀬那が、返事を返す。
二人が乗りやすいように琥珀は伏せると、朔、瀬那と順に背中に乗る。
琥珀は立ち上がり、軽々と地面を飛びあがって、そのまま宮廷へと戻っていった。
やがて宮廷の回廊部分に、凛の姿が見えてきた。
凛は全員の無事の帰還に、顔をほころばせた──
(全員無事のようですね……)
凛が安心したように一息ついたのを見ると、実桜と蓮人も顔を見合わせて微笑み、頷いた。
やがて、琥珀の姿を遠くに確認した凛。
琥珀は凛のもとへ降り立つと、ゆっくりと結月を降ろした。
「ありがとう、琥珀」
結月は琥珀をなでながら、運んでもらった礼を告げる。
「ありがとうございます、琥珀。結月さんのことは責任をもって傷の手当をいたしますので、朔様のところに戻ってよいですよ」
「く~ん」
凛の言葉に安心したように、琥珀は再び主人のもとへと飛んでいった。
「さあ、またこれはひどい怪我ですね」
「すみません、私の力が至らないばかりに……」
「いいえ。無事ならそれで良いのですよ。永遠(とわ)と美羽さんには手当の準備を頼んでおりますので、ゆっくり休んでください」
「はい、ありがとうございます」
結月は右肩を抑えながら、ゆっくりと廊下に向かって歩き出した。
蓮人が心配そうにその様子を眺める。
「蓮人、永遠(とわ)と美羽さんのところまで一緒に行ってもらえますか?」
「──っ! かしこまりました」
蓮人は自分の思考を読まれたことに、驚きを隠しきれなかった。
「結月さんだけが戻ったということは、朔様と瀬那も無事なはずです。実桜、念のため医療班に連絡をお願いします」
「かしこまりました」
実桜は軽く頭を下げると、凛のもとを離れて連絡に向かった。
(さて、朔様と瀬那の帰りを待ちますか)
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朔と瀬那のもとに、結月を送り届けた琥珀が帰ってきた。
主人のもとに身を寄せると、そのまま座って指示を待つ。
「瀬那、帰るぞ」
「はいっ!」
朔と話したことで自信を取り戻した瀬那が、返事を返す。
二人が乗りやすいように琥珀は伏せると、朔、瀬那と順に背中に乗る。
琥珀は立ち上がり、軽々と地面を飛びあがって、そのまま宮廷へと戻っていった。
やがて宮廷の回廊部分に、凛の姿が見えてきた。
凛は全員の無事の帰還に、顔をほころばせた──
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